ジョニー・アイブ、車のタッチスクリーンを全否定──「使うなんて夢にも思わない」フェラーリLuceで物理ボタンに回帰
iPhoneを作った本人が「車業界は間違った教訓を学んだ」と断言。5年かけて開発したインテリアは、アルミとガラスだけで構成された究極の物理インターフェース
ジョニー・アイブがフェラーリの新型EV「Luce」のインテリアをデザインしたんだけど、そのインタビューがめちゃくちゃ面白い。
「車でタッチを使うなんて、僕は夢にも思わない。運転中に見る必要があるから」──アイブ本人がこう言い切ったらしい。iPhoneを作った張本人が、車業界がiPhoneから学んだ教訓は「間違っていた」と断言してる。タッチスクリーンはあらゆる用途に対応する汎用インターフェースとして開発されたもので、車のように特定の操作を繰り返す環境では、物理ボタンやノブのほうが圧倒的に優れているという主張だ。「タッチはファッションとして捉えられた。最新のテクノロジーだから取り入れよう、と。来年はもっと大きくしよう、と。でもそれは主要なインターフェースとして間違ったテクノロジーなんだ」。
……おっと。となるとCarPlayは……?
で、このフェラーリLuceがすごいのは、アイブとマーク・ニューソンのLoveFromが5年かけて作り込んだってところ。最初の6カ月間はリサーチだけ。しかもフェラーリに4冊の分厚い本を提出して、デザインの哲学から歴史、人間の注意力と物理的なインタラクションの関係まで、すべて文書化したという徹底ぶり。その後のデザイン期間は比較的短くて、残りの2年半は「作る」ことに費やされた。つまり、考え抜いてから形にする──これ完全にAppleの開発プロセスだ。
iPhoneの「中の人」と「外の人」が再タッグ
ちなみに、フェラーリのCEOベネデット・ヴィーニャは物理学者で、以前iPhoneに搭載された3軸加速度計の開発チームにいた人物。つまりiPhoneの「中身」を作った人と、「外見」をデザインしたアイブが、今度は車のインテリアで協力してるってわけ。アイブ自身も「美しいプロダクトを一緒に作った」と語ってる。なんというか、運命的な再会だよね。
インテリアの素材は基本的にアルミニウムとガラスだけ。これもまたApple製品を彷彿とさせる。ステアリングホイールは100%リサイクルアルミニウム合金製で、19個のCNC加工パーツから構成されてる。中央のハブだけで、削り出しに4時間以上かかるという職人技。ボタンはすべてガラスとアルミニウムで、プラスチックは一切使ってない。しかも各ボタンは触感が異なるように設計されていて、見なくても指で識別できるようになってる。
「醜さ」は「使えないこと」そのもの
アイブの言葉で特に印象的だったのがこれ。「使えないものは、醜い。使えないことには、深い、深い醜さがある」。美しさと機能性は、彼にとって同じもの。80マイルで走行中に目を離さなきゃいけないゴージャスなタッチスクリーンは美しくない──それは醜いんだ、と。手のひらを置く基準点があって、見なくても指が全てのコントロールを見つけられる、そういう設計こそが美しい。
計器パネルには世界初の技術が詰まってる。サムスンのOLEDディスプレイに3つの大きな穴を開けたのは世界初で、その下にもう1枚ディスプレイを重ねて、物理的な奥行きによる視差効果を生み出してる。さらにその隙間を、実際の物理的な針が回転する。「視差を避けたいなら、コンピューターゲームでもやってればいい」というアイブの皮肉も最高だ。
キーもヤバい。E-inkディスプレイを搭載したガラスの板で、ポケットに入れてるときはフェラーリイエロー。センターコンソールにドッキングすると黄色から黒にフェードして、同時にシフターが黄色く光る。「さあ、ここを触って」って車が教えてくれるような演出。電気自動車には始動時の儀式がないから、新しい儀式を作ったんだ、とアイブは説明してる。