Apple Watch、3Dプリントで作られるようになりました
100%再生チタニウムで製造、原材料を50%削減し年間400トン以上のチタニウムを節約
Appleは11月18日、Apple Watch Ultra 3とチタニウムのApple Watch Series 11のケースを3Dプリント技術で製造していることを明らかにした。100%再生チタニウムを使用し、従来の製造方法と比べて原材料の使用量を約50%削減することに成功している。
この取り組みは、2030年までに製造サプライチェーンを含むApple全体でカーボンニュートラルを達成する「Apple 2030」の一環だ。3Dプリントによる積層加工は、従来の鍛造部品を削り出す除去加工と異なり、必要な形状に近い状態まで層を重ねて製造する。
原材料を半分に削減、年間400トン以上のチタニウムを節約
Appleの環境およびサプライチェーンイノベーション担当バイスプレジデントであるサラ・チャンドラー氏は「1つのApple Watchに使用するのと同じ量の素材から2つのApple Watchを作り出している」と説明する。この新プロセスにより、2025年だけで合計400トン以上のチタニウム原料が節約される見込みだ。
3Dプリント技術の採用により、Series 11の光沢のある鏡面仕上げとUltra 3の耐久性を維持しながら、環境負荷を大幅に低減した。すでにApple Watchの製造に使用する電力はすべて、風力や太陽光などの再生可能エネルギーから調達されている。
航空宇宙レベルのチタニウム粉末を独自開発
製造プロセスでは、航空宇宙産業レベルのチタニウムを直径50ミクロンの粉末に微粒化する。チタニウムは熱にさらされると爆発性を帯びるため、酸素含有量の微調整が必要だった。各3Dプリンタには6つのレーザーを搭載したガルバノメーターが備わり、900回以上も層を積み重ねて1つのケースを完成させる。
Appleのプロダクトデザイン担当バイスプレジデントであるケイト・バージェロン氏は「継続的な試作、プロセスの最適化、膨大な量のデータ収集により、このテクノロジーが私たちの求める高い品質基準を満たすことを証明しなければならなかった」と述べている。各層の厚みは60ミクロンに調整され、設計目標を達成しながら効率的な製造を実現した。
3Dプリントが可能にした設計の自由度
3Dプリント技術により、従来の鍛造プロセスではアクセスできなかった場所にテクスチャをプリントできるようになった。GPS + Cellularモデルでは、アンテナハウジングの防水加工プロセスが改善され、金属の内側に特定のテクスチャを3Dプリントすることでプラスチックと金属の接合強度が向上している。
このデザインの自由度は、新しいiPhone Airに搭載されたUSB-Cポートにも活用された。同じ再生チタニウム粉末を使用して3Dプリントで製造することで、驚くほど薄いながらも頑丈なデザインを実現している。
10年にわたる研究開発の成果
Appleは10年間にわたり3Dプリント技術のテストを続けてきた。AppleのApple WatchおよびVision製造設計担当シニアディレクターであるジェイ・マンジュナタイア博士は「このテクノロジーが成熟するのを長い間注視し、試作品が私たちの設計をより反映したものになるのを見てきた」と説明する。以前の世代の製品で小規模なテストを実施したあと、チームはチタニウムを扱う上での特有の課題を解決できると確信した。
チャンドラー氏は「Appleが重要な指標として常に掲げているのは、人々と地球にとってより良い製品をデザインすることだ」と述べ、デザインと製造とAppleの環境目標において妥協することなく革新を起こす姿勢を強調している。

