Pixel 8 Proは「カメラ」として使えるのか
望遠レンズ、広角レンズ、超広角レンズ、マクロレンズを備えた超コンパクトカメラとしての実力はいかに
Pixel 8 Proのカメラは、スペックだけ見れば最強だ。
5,000万画素の広角と超広角カメラ、4,800万画素の望遠カメラを搭載する。望遠レンズには最大30倍ズームを美しく仕上げる「超解像ズーム」や手ぶれ補正などもあり、超広角レンズはマクロ機能が利用できる。軽量・コンパクトに定評のあるSonyのミラーレスカメラだとしても、数キロに及ぶであろう機材をスマートフォン1台に収めているのだ。
Pixel 8 Proのカメラ関連仕様は以下のとおり。
項目 | 詳細仕様 |
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背面カメラ(広角) |
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背面カメラ(望遠) |
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背面カメラ(超広角) |
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カメラセンサー |
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前面カメラ |
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動画 |
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Pixel 8 Proに搭載されているカメラの実力を試すべく、街に繰り出してみた。「良い写真」とは極めて主観的であり、個人の好みによって大きく左右される。本記事ではGoogle Japanより先行して提供してもらった端末を使い、ストリートスナップを撮ったものを作例として載せておく。参考にしてもらいたい。
カメラの実力はいかに。風景、動物、食事など、幅広く撮ってみた
Pixelシリーズのカメラ性能は定評があり、今年はさらに高性能なカメラをさらに使いこなせる「プロ設定」機能を新搭載。シャッタースピードやISO感度をマニュアルで調整できるようになり、以前に比べて撮影の自由度が増した。
まずは比較的明るい時間帯で撮影した作例から見てもらいたい。雨が降っていたためカメラの撮影条件としてはやや不利とも言えるが、雨粒や壁などのテクスチャーが楽しめるはずだ。
マンションの横にあった小さい公園の遊具。雨上がりかつ夕方で誰にも遊んでもらえておらず、ただマンションの方向を見守る姿が印象的だった。
鉄と雨。すでに雨は止んでおり期待していたほどの”雨感”は見せられなかったが、Pixel 8 Proのマクロ機能を使ったり5倍望遠ズームを使うことで、日常を少し違った角度から楽しめる。
この写真は屋内で水やりをされた直後の植物を、脚を蚊に刺されてわめく次女をなだめながら適当に撮った1枚。雑に撮ってもそれなりの写真に仕上がるのが、最近のスマートフォンカメラ。Pixel 8 Proも例外ではない。
同じ環境で放射線状に広がる様子に惹かれて撮ってみた。植物の中に吸い込まれそう。
久しぶりの1人外食は、21時台に数年ぶりに食べる油そば。会社員時代は週に3回通うほどの大好きだった油そばを目の前にしても、Pixel 8 Proのためなら箸を付ける前に写真を1枚撮るだけの自制心がある。それが36歳ゴリラ。冗談はさておき、器の手前側から奥にあるコップやコショウなどに向けて滑らかにぼけている。「メインカメラ」と呼ばれるだけの実力はあるだろう。
普段は飼い犬以外、撮る機会のない動物も撮ってみた。動物は素早くかつ予想外の動きをするため、Pixel 8 Proのプロ設定をフル活用できると期待していた。結果としてそれなりに撮れたと思うが、シャッターを切ったと思ったタイミングと実際に切れていたタイミングのラグが予想以上に大きく、「撮れた!……あれ?」を何度も繰り返すこととなった。
プロ設定でミラーレスカメラのような使い心地を勝手に期待してしまっていたせいか、使いづらさのほうが目立った。シャッタースピードとISO感度は変更できるがf値が変更できず、設定を変更する際も都度メニュー画面を出す必要があり、手間が多い。操作で手間取っている間にシャッターチャンスを逃すことが多かった。
また設定項目は密集しており、変えたい時に変えたい項目が変えられない、誤タップして別の項目を変えてしまうなどのトラブルもあった。当然ながら使い込めば操作にも慣れるだろうが、それよりもPixel 8 Pro本体任せで撮ったほうが結果的に満足できる写真を残せる可能性が高そうだ。
「プロ設定は意識しすぎない」というマインドセットを手に入れてからは、Pixel 8 Proの実力を存分に楽しめた。高画素ゆえに撮影後の現像作業はしやすく、クロップしやすい。
僕は普段メインで使用するカメラは2,400万画素のEOS R3だ。画素数には十分に満足しており、スマートフォンカメラで4,800万画素も5,000万画素もいらないのでは?」と思っていたが、逆にスマートフォンカメラこそ高画素のほうが良い。ミラーレスカメラと比べて「適当に撮る」という使われ方をする可能性が高いからだ。
5,000万画素が多すぎるという人は、プロ設定として1,200万画素として撮影する設定も用意されている。RAWが不要であれば、JPEGのみで撮影することもできる。
以下は夜の渋谷周辺をスナップしたものだ。数カ月ぶりに訪れたが、知らないビルが経っていたり、あったはずのビルが取り壊されていたり、火事だったビルが復旧作業をしていたり、知らない景色が広がっていた。
せっかくなので、手持ちで物撮りもしてみた。スマートフォンで撮った写真であると見分けられる人は早々いないだろう。
Pixel 8 Proのカメラレビュー:欲しい自由、返上する自由
僕は、スマートフォンのカメラは「深く考えなくてもシャッターボタンを押すだけでめちゃくちゃ良い写真が撮れる」ことが魅力だと思っている。カメラが好きな人は撮るプロセスを含めて楽しむが、大多数の一般人は「良い写真が撮れればそれで良い」と考えている。そのため最近は物理的な制約をコンピュテーショナルフォトグラフィでカバーする機能が導入されている。
Pixel 8 Proも同様のルートで進化したが、今年はカメラが好きな人が楽しみたい「撮るプロセス」の自由度を与えてくれた。選択肢があることは良いことだが、個人的にはミラーレスカメラと同様の感覚で設定が反映されないような印象が強く、操作の使いづらさのほうが上回った。
GoogleはPixel 8シリーズを「AIスマホ」と呼んでいる。AIはカメラの撮影機能よりも事後編集機能で活用されている。Pixel 8 Proはミラーレスカメラのようなポテンシャルは持っているが、撮るプロセスは引き続き端末に任せておいたほうが「カメラ」としての実力を発揮しやすいと感じた。
自由は嬉しい。欲しいとき、必要なときもあるだろう。しかし時には相手を信頼して任せるのも大事なことだ。
最近のカメラって、どこまでAIによる補完を許せるかが難しくなってきてる。
そうそう、そう思います!プロ設定も、RAWを有効化しない方法もあるので、一般人向けの「プロ設定」とも言えるかもしれませんね!
> 撮るプロセスは引き続き端末に任せておいたほうが「カメラ」としての実力を発揮しやすいと感じた
ガチカメラ買うほどじゃないけど思い出は出来れば綺麗に残したいっていう大半の一般の人の使いやすさを追求してる感じなんですかね