M5 MacBook Pro レビュー:Airを引き離した
AI性能3.5倍、24時間駆動、M4 Proの境界を薄める進化が「MacBook Proらしさ」を取り戻した
Appleが発表したM5チップを搭載する新しい14インチMacBook Proを、一足先に試す機会をもらった。外観こそ以前のモデルと変わらないが、中身は確実に、そして飛躍的に進化している。チップ、メモリ、ストレージという「目に見えないパフォーマンスに最も影響する部分」がガツンと向上しているのだ。
問題は、この性能アップを「どのような人」が必要とし、そしてその必要とする人にあなたは含まれるのか、だ。僕は現在、14インチM3 Max MacBook Proをメインマシーンとして使っている。限られた時間の中での体験で感じたことを、率直に紹介したい。
M5 MacBook Proの進化を読み解く:AI性能3.5倍、旧モデルから飛躍
M5 MacBook Proの基本スペックは、M5チップ(10コアCPU/10コアGPU)、最大32GBのユニファイドメモリ、最大4TBのSSD、14.2インチLiquid Retina XDRディスプレイを搭載。3つのThunderbolt 4ポート、HDMI、SDXCカードスロット、MagSafe 3を備え、Mac史上最長となる最大24時間のバッテリー駆動時間を実現している。価格は248,800円(税込)から。2025年10月22日(水)より販売が開始される。
M4モデルからの進化ポイント
M5チップは、AI性能の大幅な向上と全体的な処理速度の高速化を特徴としている。特にGPUアーキテクチャの変更が、性能向上に大きく貢献しているのだ。CPUのマルチスレッド性能は最大20%高速化し、グラフィックス性能はプロ向けアプリやゲームで最大1.6倍高速になった。レイトレーシング性能は第3世代レイトレーシングエンジン搭載により、レイトレーシングを使用するアプリで最大45%向上している。
M5チップの最大の進化は、AIワークロードの劇的な高速化だ。これは、GPUの各コアに強力なNeural Acceleratorが統合されたことによるもの。デバイス上での大規模言語モデル(LLM)の実行やクリエイティブプロジェクトでのコンテンツ強化などのAIワークロードが加速され、AIワークロードのパフォーマンスはM4チップと比較して最大3.5倍高速になっている。
M5搭載14インチMacBook Proは、M4モデルの最大2TBのSSD容量から、最大4TBのストレージまで構成可能になった。ユニファイドメモリの帯域幅も120GB/sから153GB/sへと約30%増加している。最大ユニファイドメモリ容量は、M4モデルの最大32GBに対し、M5も最大32GBに対応する。
Appleによると、内蔵ストレージは「最新のストレージテクノロジーを採用」しており、「前世代よりも高速なSSDパフォーマンスを発揮」するという。実際に計測してみたところ、読み書き速度ともに6,500MB/s前後を推移していた。
Neural EngineとAcceleratorの分業がカギ
M5チップによるAI処理速度の劇的な向上——M4と比較して最大3.5倍——は、単にNeural Engineが新しくなっただけではない。これは複数の要因が総合的に作用した結果だ。
具体的には、GPU、高性能コア、高効率コア、そしてNeural Engineが総合的にパフォーマンスを向上させている。特に注目すべきは、GPUの各コアにNeural Acceleratorが搭載されたこと、メモリ帯域幅が増えたこと、そしてCPU自体の性能向上も大きく寄与している点だ。
Neural EngineとNeural Acceleratorは、それぞれ異なる役割を担っている。Neural Engineは、AI処理全体を担当する専門的な部分だ。一方、Neural AcceleratorはGPUの各コアに搭載され、主に画像やビジュアル(動画など)の生成といったメディア処理や、GPUが担当する重いAI処理を支援するために機能する。
従来Neural Engineが単独で行っていた処理の一部がAcceleratorに分業化され、結果としてNeural Engine自体の負荷が分散される仕組みだ。また、Neural Engine自体も電力効率が改善されるなどの改良が施されている。これらの改良が組み合わさることで、M5チップは前世代を大きく上回るAI性能を実現しているのだ。
性能と24時間駆動を両立させた設計思想
Mシリーズのチップは、パフォーマンスと同時に電力効率に強くこだわって設計されている。M5 MacBook Proのバッテリー駆動時間(最大24時間)は、実はM4 MacBook Proと同じだ。
しかしこれは、性能が向上していないことを意味するのではない。M5チップは電力効率がさらに上がっているため、パフォーマンスが向上しているにもかかわらず、最大24時間というバッテリー駆動時間を維持することが可能になっているのだ。パフォーマンスが向上した分の電力消費を、電力効率の向上によって相殺し、駆動時間をキープしている。
この設計思想により、M5 MacBook Proは電源に接続している時とバッテリー駆動時で変わらないパフォーマンスを提供する。多くのPCラップトップが電源接続時とバッテリー駆動時で性能が変わるのに対し、MacBook Proは常に同じパフォーマンスを発揮できるのだ。
実機で検証した本当の実力
653枚のRAW現像でM3 Maxと真剣勝負
僕は現在、M3 Max MacBook Proを毎日欠かさず使っている。それなりにヘビーな作業をしているのだ。そこで、普段行っている最もヘビーな作業である写真の現像および書き出しを試してみた。使用したアプリケーションはAdobe Photoshop 2025のCamera RAW。先日娘達が参加した体育祭で撮影した653枚のRAWファイルをそれぞれローカルのフォルダに置き、それぞれローカルで現像作業および書き出し作業を行った。
現像作業自体に大きな差は感じない。どちらもキビキビと動作する。しかしファイルを開くまでの時間はM5モデルのほうが断然早い。マジか。おいおい、マジかよ。
被写体選択は互角、AIノイズ除去はM3 Maxに軍配
同一写真の被写体選択に掛かる時間は同じだった。選択された被写体にも違いは見られなかった。一方で、全653枚の被写体選択を行ったところ、M3 Maxが6分12秒、M5が6分20秒と極めて僅差。予想以上にM5が健闘している。
AIを使ったノイズ除去もテストしてみた。653枚すべてに適用しようとしたところ、282分かかると表示されたため断念。10枚に限定し検証したところ、M3 Maxが1分42秒、M5が3分1秒で完了した。Neural Acceleratorに最適化されれば差は縮まる可能性もあるが、記事執筆時点ではまだまだM3 Maxのほうが優位だ。
書き出し速度、長時間作業でMax優位が鮮明に
次に書き出しを検証した。僕が使用しているM3 Maxチップはビンニングされたモデル。つまり14コアCPU・30コアGPUのモデルとなっているが、それでもM5と比べて3倍ものGPUコア数があるため圧勝することは想定内だった。問題は、どこまでM5モデルが食らいつけるかだ。
まずは100ファイルで検証。100枚以上をまとめて書き出すことはざらにあり、最も現実的な検証だ。M3 Maxが38秒で書き出しが完了し、M5が1分11秒で追いかける形で32秒差を付けられた。
次に開いたファイル653枚をすべて書き出すという暴挙に出てみた。その結果、M3 Maxは16分21秒、M5は20分36秒で完了。ファイル数が多かった分、大きな差が開いた。書き出し開始直後はそれほど大きな差はなかったものの、書き出し時間が長引くほどM5は不利になる。おそらくファン1基による冷却能力不足によるサーマルスロットリングが行われているのではないかと予想している。
また書き出し中を見ていると、M5とM3 Maxで同時に処理できているファイル数に差があった。M5は4件を同時に処理していたが、M3 Maxは7ファイルの処理が同時進行で行われていた。チップ性能含め、総合的なパフォーマンスによって、この同時処理可能ファイル数に差が生まれ、書き出し時間に影響しているのだろう。
なおこれまで検証してきたAI処理含めて常にファンはどちらのモデルでも回転していたが、より早くファンが動作開始したのは常にM3 Max。またファンの回転音も、2基あるM3 Maxのほうが大きく聞こえた。M5の処理性能には驚きつつ、まだまだM3 Maxを安心して使える。正直、内心少しホッとした自分がいた。
DaVinci Resolveで4世代を一気に比較
M5チップの性能を検証する別の方法として、負荷の高い作業の代表例、動画編集で過去のモデルと比較してみた。M5 iPad Proに続き、MacBook Proでも同じく、「ガジェタッチ」で僕が定期的に出演しているコーナー「OpenMic g.O.R.i Edition」の素材を使い、DaVinci Resolveで検証を行ってみた。比較対象として、13インチM1 MacBook Pro、14インチM2 Pro MacBook Pro、14インチM3 Max MacBook Proを用意した。
約10分間の素材をH.265で書き出し。ストレージの関係上、全てのデバイスはSanDisk SSD(4TB USB 3.2 Gen 2×2)にある素材を使い、書き出し先も同じSSDにした。
結果は以下のとおり:
M5 MacBook Proはチップ性能含めて総合力は向上しているが、DaVinci Resolveを使った書き出し時間に限れば純粋にGPUコア数順に書き出し時間が早かった。GPUのコア数は、M5が10コア、M3 Maxが30コア、M2 Proが19コア、M1が8コアだ。
同じM5チップ、MacBook ProとiPad Proを戦わせてみた
せっかくなので同じアプリケーションが利用できる同日発売のM5 iPad ProとM5 MacBook Proで比べてみよう。
実はこれらのデバイス、スペックは全く同じ。むしろMacBook Proのほうがストレージが少ないという状況だ。M5 iPad Proは6分8秒で完了したが、M5 MacBook Proは6分29秒。複数回の検証でもわずかにMacBook Proが負けてしまっていたが、ほぼ互角の戦いだと言えるだろう。
M1ユーザーは今すぐアップグレードを
しかし久しぶりにM1 MacBook Proを使ってみて、あまりもの処理の遅さに目を疑った。M5 MacBook Proに買い換えれば、ディスプレイ品質、ポート数、排熱性能……すべてが劇的に改良される。そしてTouch Barというあるだけ無駄な存在に久しぶりに遭遇して僕は絶叫したさ!
M5 MacBook Proへのアップグレードは、特にM1/M2チップを搭載した13インチモデルからの移行者にとって、外観、ディスプレイ技術、ポート、そしてパフォーマンスにおいて劇的な変化を意味する。
ディスプレイは13.3インチのRetinaから、14.2インチのLiquid Retina XDR(SDR 1,000ニト、HDR 1,600ニト)へと進化。Thunderboltポートが3つに増加し、専用メディアポート(HDMI、SDXC)が追加された。カメラは720p FaceTime HDから12MPセンターフレームカメラに高解像度化し、センターフレーム、デスクビューに対応。オーディオは6スピーカー/空間オーディオシステムに進化した。バッテリー駆動時間はM1/M2モデルと比較して最大4時間長く、Mac史上最長のバッテリー駆動時間を実現している。
M5チップは、AI性能に特化した設計の進化とユニファイドメモリ帯域幅の増加により、M1世代と比較して特に大きな飛躍を遂げているのだ。AIパフォーマンス(ピークGPU演算性能)は最大6倍高速、グラフィックス性能は最大2.5倍高速になった。Blenderでのレイトレーシングレンダリングは最大6.8倍高速、CPUパフォーマンスは最大2倍高速だ。
……要は、めちゃくちゃ速くなる。あまりもの高速化に笑っちゃうかもしれない。
M1 MacBook Proを大切に使っている人は、是非この機会にM5モデルにアップグレードすることを全力でお勧めする。もはや別体験どころの騒ぎではないほど、アプリの起動からFinderでのファイルブラウジングまで、すべての作業が快適になるに違いない。
Dropbox同期中でもファンが回らない衝撃、外部ディスプレイは注意点あり
かつてDropboxの同期中に作業を行うのは実質的に不可能という印象が強かった。というのも、同期に物凄いリソースが取られてしまい、全く仕事にならないものだと思い込んでいたのだ。しかし今回はDropboxの同期を走らせながらセットアップなどをしていたが、快適そのもの。非常に動作が安定しており、ファンも回らず、同期していることを確認しなかったら同期していることに気付かないほどすべての操作が快適だった。
このパフォーマンスが出るならM5モデルで十分という人も多いと思うが、一点だけ注意するべきポイントがある。それは外部ディスプレイ出力だ。
僕は現在、34インチと40インチの5K2K解像度のウルトラワイドディスプレイを2枚出力しながら内蔵ディスプレイを3枚目のディスプレイとして使っている。M5 MacBook Proでも同様の構成は利用できるが、選択できる解像度に制限がある。34インチのほうは選択肢が1つ不足しており、40インチのほうは「3200 x 1350」という解像度が選択できない。
この制限は昔からあり、何が原因なのか未だに分かっていないが、ProチップやMaxチップを使っている人でM5 MacBook Proに乗り換える予定がある人は、好みの解像度が対応しているかの確認をしておくことをお勧めする。
買うべき人、待つべき人
iPhone 17シリーズにおいて、iPhone 17が「大多数の人が満足できるモデル」であるように、MacBook Proシリーズの中ではM5 MacBook Proを買っておけば間違いない。しかし、MacBookシリーズには、「MacBook Air」という存在があり、手放しにM5 MacBook Proを薦めることが難しい。というのも、順当にいけばM5チップを搭載したMacBook Airが将来的に発表されるはずだ。
価格、そして物理的な軽さなどを踏まえると、「大多数の人が満足できるモデル」はMacBook Airにならざるを得ない。M5チップの性能向上を必要とするのであれば待つことも十分にアリだ。
MacBook Proを選ぶべき理由
では、M5 MacBook Proはどのような人が選ぶべきか。
MacBook AirではなくMacBook Proを選ぶべき理由としては、ポートの数や種類、そして圧倒的とも言えるディスプレイの美しさだ。MacBook Airのディスプレイを使って不満に感じることはないが、もしディスプレイ品質にこだわるのであれば選ぶべきモデルはMacBook Proだろう。
その上でMacBook ProのM5モデル、M4 Pro、M4 Maxモデルとなれば、真っ先に検討するべきモデルはM5モデルだ。選び方としては「自分の作業フローに置いて、高負荷な作業の割合と重要度」で考えると良いだろう。
というのも、最新モデルによって基本的な作業は相当快適だ。メモリが改良され、SSDも高速化し、CPU・GPU性能が向上した。Pro/Max/Ultraチップを選べばそれ相応のパフォーマンスブーストを得られるが、その追加パフォーマンスがどの程度の頻度で必要になるのかについては一考の余地がある。
M4モデルでも十分に高いパフォーマンスは得られるが、M5モデルになったことで、従来はM4モデルだとちょっとパワー不足でM4 Proを考えないといけないな、という人でもM5モデルの性能があれば十分、という人も出てくるはずだ。M5モデルの登場によって、M4 Proモデルとの境界線が若干薄まり、MacBook Airを引き離し「MacBook Proらしくなった」とも表現できるだろう。
最大のライバルはMacBook Air
正直なところ、M5 MacBook Proの最大のライバルは、同じM5チップを搭載することになるであろうMacBook Airだ。同じチップを搭載するなら、軽くて安いMacBook Airで良いのではないか、という疑問が浮かぶのは当然だろう。
しかし過去のモデルでも分かっていることとして、同じチップを搭載していても、負荷の高い作業ではやはりMacBook Proに軍配が上がるという事実だ。ファンによる冷却システム、2基ではなく1基とはいえProモデルに最適化された排熱設計、そしてより大きな筐体による放熱性能。これらがあるからこそ、長時間の負荷作業でもパフォーマンスを維持できる。
さらに言えば、Liquid Retina XDRディスプレイの圧倒的な美しさは、一度体験すると戻れない魅力がある。SDRコンテンツでも最大1,000ニトの輝度、HDRでは1,600ニトのピーク輝度、そして1,000,000:1のコントラスト比。MacBook Airのディスプレイも決して悪くないが、プロの作業やコンテンツ消費において、この差は決定的だ。
ポートの豊富さも見逃せない。3つのThunderbolt 4ポート、HDMI、SDXCカードスロットを備えることで、外部機器との接続に困ることはない。MacBook Airの2つのThunderbolt/USB 4ポートと比較すれば、その差は明白だろう。クリエイティブな作業をする人にとって、この拡張性の違いは日常的なストレスの有無に直結する。
つまり、M5 MacBook Proを選ぶべき人は、性能の持続性、ディスプレイ品質、そして拡張性を重視する人だ。同じM5チップだからといって、MacBook AirとMacBook Proが同じ体験を提供するわけではない。この違いを理解し、自分の作業スタイルに合ったモデルを選ぶことが重要だ。
最も感動したのはNano-texture
そして余談だが、今回はM5チップの性能向上がメインだが、実は今回初めてNano-textureガラスを採用したMacBook Proを初めて触った。信じられないほど快適だ。
この映り込みの違い、分かってもらえるだろうか。この差が、窓際や屋外での作業に大きな違いをもたらすのだ。
マット仕上がりのディスプレイに強い憧れを持ってMacの世界に飛び込んだ僕としては、あの時の感動が蘇った。主題とは逸れてしまうため最後まで読んでもらった優しい人には、僕が何よりも感動したポイントはNano-textureガラスであることを知ってもらいたい。
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M3 Maxの解像度選択画面の写真ですが、同じ写真が2枚アップされています