M1 MacBook Pro レビュー:Mac新時代の幕開け
同じ筐体で劇的に向上したパフォーマンスと電池持ちが示唆するMacの未来は期待できる
M1 MacBook Proを購入してから、16インチ型MacBook Pro(2019)のUltimateモデルを使わなくなった。23万円で買えるモデルが40万円のモデルよりもパフォーマンスが高い、コンパクトで軽量、発熱しない、ファンが回らない、電池持ちが優れているからだ。外出する機会が圧倒的に少ない1年だったが、それでも買い替えて良かったと思っている。
Apple初のAppleシリコンMacは、中身こそ劇的に進化したが、デザインは2016年から変化なし。ディスプレイ周りのベゼルは2020年とは思えない太さ、カメラは時代遅れの720p、Touch Barは相変わらず無能だ。物理escキーの復活、構造上の欠陥だったバタフライ式キーボードの廃止とシザー式キーボードの復活、逆T字型矢印キーは、M1 MacBook Proの半年前に発表されたモデルで採用されている。
外観が変わっていないのにも関わらず「買ってよかった」と思えるのは、パフォーマンスと電池持ちが圧倒的に進化しているからだ。本記事では、メインマシーンとしてM1 MacBook Proを使って分かった強みと弱みを解説する。
M1 MacBook Proの強み
M1 MacBook Proのファーストインプレッションで紹介した各種ベンチマークを以下にまとめた。
MacBook Pro (13-inch, M1, 2020) | MacBook Pro (16-inch, 2019) | |
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スペック | Apple M1チップ (8コアCPU、8コアGPU、16コアNeural Engine) 16GBユニファイドメモリ 2TB SSDストレージ |
第9世代の2.4GHz 8コアIntel Core i9 32GB 2,666MHz DDR4メモリ Intel UHD Graphics 630 1536 MB AMD Radeon Pro 5500M(8GB GDDR6メモリ搭載) 2TB SSDストレージ |
Geekbench 5 | シングルコア:1708 マルチコア:7415 |
シングルコア:1101 マルチコア:6911 |
OpenCL | 18880 | 30245 |
Metal | 21522 | 27990 |
SSD | WRITE:2803.4MB/s READ:2805.9MB/s |
WRITE:2496.9MB/s READ:2662.3MB/s |
Cinebench R23 | シングルコア:1370pts マルチコア:6404pts |
シングルコア:1038pts マルチコア:7880pts |
Geekbench 5で計測されたCPU性能はシングルコアで55%、マルチコアで7%上回っている。一般的にベンチマークスコアと実正解のパフォーマンスはリンクしないことも多いが、M1 MacBook Proは基本的な動作がキビキビしている。高速化したSSDの効果も加わり、アプリの立ち上げやファイルの移動が体感できるほど高速化している。
高速化を最も体感できるのは、スリープからの復帰。ディスプレイを開くと同時にApple Watchの自動認証が作動し、まるでログイン画面がなかったような体験ができる。慣れるとIntel Macには戻れないだろう。
MacBook Proで行っている主な作業は、ブログの執筆と写真のRAW現像。主に使用しているアプリはGoogle Chrome、MarsEdit、Camera RAW(Photoshop CC 2021)、Affinity Designer。Fantastical、Todoist、Tweetbot、Biscuit、LINE、PhotoBulk、JPEGmini Pro、Spotify、CotEditorをバックグラウンドを起動した状態で使用していることが多い。
本来であれば従来のIntel Mac向けのアプリはM1 Macでは動作しないが、仮想レイヤー「Rosetta 2」により、ユーザーは何も意識せずにアプリをこれまで通り使用可能。Intel Macと比べてパフォーマンスが優れている場合も多々あるが、ネイティブ対応でさらなるパフォーマンス向上が期待できる。
僕が頻繁に使用するCamera RAWは非対応アプリだが、編集作業は16インチモデルと変わらないほどサクサク。Chromeは早々にネイティブアプリをリリースしており、パフォーマンスが大幅に向上。数十タブを開いていても動作がもたつかない。
自宅ではM1 MacBook Proから外部ディスプレイに出力し、デスクトップマシーンのように使用している。16インチモデルでは、熱対策と静音性のためにeGPUを導入していたが、M1 MacBook Pro発熱ゼロ、ファン音なし。Intel Macでは、内蔵キーボードを使いながら外部ディスプレイへの出力は指先を火傷する恐れがあったが、M1 MacBook Proではその心配は不要だ。
ファン音が聞こえてきた唯一の作業は、Camera RAWで2000万画素の現像済みRAWデータ約30枚分をJPGとして書き出しした時のみ。書き出し終了後、すぐに鳴り止んだ。ファンに頼らなくてもいいほど、M1 MacBook Proの冷却性能は優れている。
電池持ちは驚異的だ。公称値はウェブブラウジングで最大17時間、Apple TVの動画ストリーミングで最大20時間。僕の使い方であれば、14時間以上の連続駆動時間は難なくクリアできた。動画や画像編集を中心としたエネルギー消費の多いアプリを使用した際も、7時間以上の使用で32%残っていた。
今日朝からひたすら電源に繋がずM1 MacBook Proを使い続けたけど、全く電池が減らんw 日中はFinal Cut Proの書き出しやアプリの起動テスト、夜はChromeでYouTube見たり、PhotoshopでCamera RAW扱ってるけど、まだ32%残っている。驚異的。
出先で使っていても、電池切れの心配がなくなったなあ。 pic.twitter.com/GHWhPKjCu7
— g.O.R.i(ゴリミー管理人) (@planetofgori) November 23, 2020
MacBookシリーズの電池持ちは、公称値のおおよそ半分程度持てば良いほうだ。例えば16インチモデルは11時間だが、いつも通りの作業でも長くて5時間。電池を使い切るのは容易だった。M1 MacBook Proは電池持ちがあまりにも良いため、先に自分自身が電池切れしてしまう。
これほど電池持ちが良ければ、移動中や外出時にコンセントを探す必要性がない。iPhone 12シリーズで高速化されたテザリングを組み合わせることで、場所に囚われずに作業可能になった。
M1 MacBook Proの弱点
M1 MacBook Proは過去数年間で最も勧めやすいMacだが、気になる弱点が4つある。
1つ目は、eGPUの非対応。M1 MacBook ProはMacBook Proシリーズの下位モデルを刷新したモデルのため、グラフィック性能は16インチモデルよりは弱い。
Final Cut ProなどのApple純正アプリケーションは、M1チップで驚異的なパフォーマンスを発揮できるが、Adobe PremiereなどAppleシリコンにネイティブ対応されていなく、グラフィック性能が大きく影響するアプリケーションは、eGPUが使えるIntel Macを手放さずに2021年以降のモデルを待ったほうが良いだろう。
2つ目は、外部ディスプレイの出力制限。M1チップを搭載したMacは、Thunderbolt 3ポートから出力できる外部ディスプレイの枚数は最大6K解像度を1枚まで。僕は5K2Kディスプレイと4Kディスプレイを使用しているため、DisplayLink対応アダプタを使用することで2枚以上の外部ディスプレイを出力するハックを活用して作業環境を実現している。
出力は可能だが、問題も多い。画面収録の技術を活用している関係で有料動画コンテンツの再生ができない。HiDPI解像度も選択肢が限られており、True ToneやNight Shiftは使えず、Apple Watchによるロック解除は度々失敗する。外部ディスプレイを2枚以上出力することが必須だという人は、M1 MacBook Proの購入は見送ったほうが良いだろう。
3つ目は、プロ向けアプリのネイティブ対応。M1チップのパフォーマンスを活かすためには、アプリのネイティブ対応が必要。Adobeを中心としたプロ向けアプリはRosetta 2でも快適に動作するが、真のパフォーマンスを得るには移行まで待つ必要がある。
4つ目は、使用できるiPhone/iPadアプリの少なさ。M1 MacではMacアプリ以外にiPhoneやiPad用のアプリを使用できるはずだが、人気アプリのほとんどが提供していないのが現状だ。2021年以降に解禁するデベロッパーが増えるだろう。
M1 MacBook Pro レビュー:Appleの”本気”はまだまだこれから
僕は16インチモデルからの買い替えだが、パフォーマンスに全く不満がない。小型化・軽量化したお陰で荷物が軽くなり、電池持ちがよくなったお陰で充電器も必要最低限にしている。キートップも発熱せず、ファンも回転しない。
M1チップを搭載したMacは、MacBook Pro、MacBook Air、Mac miniが同時に発売された。7コアGPUを内蔵したMacBook Air以外、M1チップの仕様は全機種で全く同じ。MacBook AirはMacBook Proと違い、ファンレス構造、物理ファンクションキーの搭載、ウェッジデザインだ。多くのYouTuberがMacBook Airを選ぶ中、僕は電池持ちを理由にMacBook Proを選んだ。
今までMac選びは複雑だった。CPU、RAM、GPUで悩むようなMacの選び方はIntelモデルまで。AppleシリコンMacは、iPhoneの機種選びと同じぐらいシンプルになる。
Appleは、M1 MacBook Proで新しいデザインを見せることもできた。価格もさらに数万円下げられた。しかしあえてデザインや価格を変えなかったのは、M1チップの驚異的なパフォーマンスに注目を集めたかったから。Intelモデルと同じデザイン、同じ価格で、圧倒的なパフォーマンスを見せつけられてしまったら、今後登場するであろうAppleシリコンMacには期待せずにはいられない。
M1 MacBook Proは、元から外部ポートが2ポートしか搭載されていない下位モデルを置き換えた。2021年以降、4ポートモデルのAppleシリコンモデルは確実に登場するだろう。
一部ではAppleがiPhoneやiPadに注力し、Macには興味がないとも言われていた。M1チップを見れば、完全に見当外れだと分かる。Appleは、水面下でiPhoneやiPadのチップ開発で培ってきた技術をMacへ移植する方法を模索していたのだ。
4年近く続いたMacの暗黒時代は、Appleシリコンという新たな光を手に入れた。Mac新時代の幕開けだ。
M1 MacBook Pro13インチ(以下M1MBP13)は今後もラインナップに残ると思われますか?M1Air
を使用中ですが、ファンレスはどうも心許なく、M1MBP13に乗り換えたいのですが、タッチバーが
ネックとなり、踏み切れずにいます。タッチバーを廃止したM1MBP13が欲しいのです。
M1 MacBook Proとどのように関係あるのか、先に伺ってもいいですか??質問の意図がイマイチよく分からなくてですね……
Catalinaへのアップデート以降、充電制御がついてMacをケーブルに繋ぎっぱなしでも問題ないという情報が出ていますが、goriさんは夜中に充電するタイプですか?
国内で一番参考にしているgoriさんの見解を知りたいです😅
MSの対応、期待ですよね。やっぱり独占状態はどんな業界でもよくないと思うので、良いライバル関係として進化してもらわなければ!
気になるのはMicrosoft側がいつ追いつくかってことですね。
良いこと、良いこと👍
私もタッチバー好きです!
音量の上げ下げとか指でスライドさせたりするの楽しいので😊
好きな人、使いこなせる人はラッキーですよ!!!僕がめちゃくちゃ嫌いなだけなので✋
Touch Barそんなに使えないものかな?
結構好きなんだけどな。
M1搭載のMacBookですら4つ星9点ですか・・・
g.O.R.iさんから5つ星10点をとれる製品は、いったいどんなものになるのだろう
2016のMBPからM1 MBAに乗り換えましたが、速く静かになったのは驚異と感じました。
不満点はマシンというよりアプリ周りの環境ですが、問題は大別して2つかなと思ってます。
・M1であること(Rosetta2も含む)
・OSがBig Surであること(M1だとそれ以前のOSへのダウングレード不可)
1つ目は余程でなければ大丈夫ですが、Intel Macだとターミナルでゴニョゴニョして動いたアプリが、
M1だとターミナルで同じコマンドを受け付けずに、うまく動かないことがありました。
2つ目は別に持っている12インチMacBookにBig Surを入れて問題のアプリを試した結果、
M1環境と同じ結果となったため、アプリがBig Surに完全に対応し切れていないと感じました。
MacOSあるあるですが、M1はBig Sur以外対応していないため、ココがネックですね〜。
あと筐体関係ですが、「M1チップの驚異的なパフォーマンスに注目を集めたかったから」と書かれてますが、
私は加えて同じデザインであることの安心感、特に外装に関係するオプションの互換性とか大きいと思いました。
筐体がインテル版と同じであれば、同じパーツ類が使えるため、M1用パーツ待ちは必要ありません。
実際2020のインテル版MBA用の外装カバーを使ってますが、M1購入当初より買えたのは大きかったです。
あと私は使ってないですが、TB3を2個使うハブもコネクタ間ピッチが同じで使えるので、これもプラスでしょう。
長文・駄文失礼しました。
読めば読むほど、来るのが楽しみです。当初、airを注文したのですが、僕も外で使うことを考慮してProに変更したため、年明けになりそうです。今まで、Proの13インチ、15インチを使っていましたが、13インチを手放して外出用にM1で行こうと思っているのですが、これは15インチの出番がなくなりそうです。来年の秋頃?に15インチをM?版のiMac等に入れ替えてしまおうかな。Proのポート数2個を多くの方がデメリットと言っていますが、僕は全く問題ないですね。1個はTYPE-Cの4Kディスプレイに繋ぐのでそこから充電できるし、あと一つにHUBをつけているので。HUB無しだと逆に4ポートあっても不便だし。名のでそこは納得済みです。
他のデメリットを探りながら来年新しいsilicon Macが追加されるのを楽しみにしておきます。
ありがとうございますー!!爆速で修正しました!
そうです、そのとおりです!弱点が大した弱点ではないというか、少なくとも僕にとってはそれほど問題ではないってことですね!
僕も実は4ポート待ちなんですよ、本当に充電端子が右にないのは不便すぎる……。14インチ、いつ出るかわからないですが、めっちゃ楽しみですね!!!!
ここ、誤字ってますよ。
“一般的にベンチマークスコアと実正解のパフォーマンスはリンクしないことも多いが、M1 MacBook Proは基本的な動作からキビキビしている。”
“グラフィク性能は16インチモデルよりは弱い。”
弱点4つもあって、9点ってことは、長所の
方が相当素晴らしいってことですね。
ただ、個人的には4ポートモデルまで待ちですね。(充電端子目当て。14インチモデルがどれだけデカくなるのかによっては、13インチを購入するかもですが)