14インチ M1 Pro MacBook Pro(2021)レビュー
薄さの呪いから脱却、プロユーザーが求めるマシーンとして復活
Apple M1 Proチップを内蔵した14インチMacBook Pro(2021)を入手してから、Macが益々好きになった。初めてMacを買ったときのようなワクワク感がある。最強の作業環境があるのに、あえて単体で使いたくなってしまう。
M1 MacBook Proは素晴らしいマシーンだ。16インチMacBook Pro(2019)を上回る性能を持ち、バッテリー残量表示のバグを疑うほど電池持ちが良い。フルスペックにしても25万円台。ブロガーにとって最強のコストパフォーマンスマシーンだ。
しかし14インチMacBook Proは、M1 MacBook Proを上回る魅力がある。真の”Proマシーン”になった。
M1 MacBook Proから買い替えて良かった理由
外部ディスプレイの出力が安定している
M1 MacBook Pro最大の不満は、外部ディスプレイ出力の制限。最大6K解像度を1枚までしか出力できず、2枚の外部ディスプレイを使用している僕にとっては使い勝手の悪い仕様だった。DisplayLinkに対応したアダプタを使用していたが、出力できる解像度にも制限があり、何かと使い勝手が悪かった。
14インチMacBook Proは、最大2台の外部ディスプレイで最大6K解像度まで出力可能。5K2Kディスプレイと4Kディスプレイを問題なく出力できる。搭載ポートがThunderbolt 4対応になったことを受け、Thunderbolt 4化した作業環境への移行にも成功した。
引き続きeGPUには対応しないため5K2K+4Kの出力には2本のケーブルが必要だが、出力解像度はIntel Macと同じ。ウィンドウの表示位置を記憶するアプリ「Stay」との組み合わせで快適に動作している。接続時の動作は安定しているが、勝手に再起動する問題が稀に発生する。
SDカードスロットが復活した
SDカードスロットの復活で、Canon EOS R6で撮影した写真データをそのままMacBook Proに差し込み取り込める。USB-Cドックを取り出す必要がない。UHS-IIまでの対応だが、UHS-IIIカードは使用していないため問題ない。転送速度は、純正のUSB-Cアダプタよりも早い。
抜き差しはスムーズだ。カードの認識が僅かに遅れる場合があるが、概ね瞬時にデスクトップ上に表示される。取り出しの際は、Alfredのキーボードショートカットで処理を行う。
2022に入ってから、Canon EOS R5に買い換え。記録メディアがCFexpress Type BになりSDカードスロットを使用する頻度が下がってしまったが、SDカードを使うときは未だに重宝している。
Touch Barが廃止され物理ファンクションキーが復活
”自称・日本で最もTouch Barを嫌っていた男”として、物理ファンクションキーが復活しただけでも買い換える価値がある。
音量ボタン(大)を押せば音量が大きくなり、ミュートボタンを押せば消音化される。5年前、当たり前のことができない、役立たずの有機ELパネルに置き換えられた物理ファンクションキーは、本当に気の毒だ。失われた青春を取り戻してほしい。
物理ボタンの復活で、ディスプレイ輝度、Mission Control、Spotlight、おやすみモード、音楽操作、音量操作をすべてワンタッチで行える。押し間違えはない。ボタンを押せば、押した感覚がある。当たり前が戻ってきたのだ。
ディスプレイは美しく、広く、作業しやすい
14インチMacBook Proは、ディスプレイ性能が著しく進化した。ミニLEDバックライトの採用で、コントラスト比が改良。最大輝度も上がり、ProMotionテクノロジーによる最大120Hzのリフレッシュレートに対応した。
普段は外部ディスプレイを使っているせいか、ProMotionの恩恵には預かれていない。対応アプリも限られており、高いリフレッシュレートは大きなメリットになっていない。購入後早々に無効化しているが、不便に感じたことはない。
ミニLEDバックライトの高いコントラスト比は、すっかり見慣れてしまった。購入当初は「圧倒的に内蔵ディスプレイのほうが綺麗」と思っていたが、HDRコンテンツも見る機会がなく、なかなか恩恵に預かれない。
最も進化を実感しているのは、物理的にサイズアップしたことだ。13.3インチから14.2インチに大型化したことで、作業解像度は1680×1050から1800×1169まで広くなった。数値ではわずかな差だが、違いは体感できる。窮屈さがない。
MacBook Pro(2021)のディスプレイと言えば、画面上部の”ノッチ”がセット。購入当初から全く気にならない。ノッチの導入で上左右のベゼルが薄くなったことのメリットのほうが大きい。
持ち運びと作業領域の絶妙なバランス
M1 MacBook Proはコンパクトで持ち運びしやすいが、単体使用時は作業領域が少し狭かった。16インチMacBook Pro(2019)は、内蔵ディスプレイが広く快適だが重い。2021年モデルはさらに重量が増し、2.1kg以上。ちょっとしたダンベルだ。
14インチMacBook Proは、画面サイズと重さのバランスが絶妙だ。M1 MacBook Proに比べて200g増(1.6kg)だが、代わりに進化したディスプレイ、復活した各種ポート、改良されたキーボード、パワーアップした性能が手に入った。失うものよりも得るもののほうが大きい。
キーボードが打ちやすくなった
14インチMacBook Proのキーボードは、Touch Barの廃止だけではなく打ち心地が改良された。「M1 MacBook Proと全く変わらない」と指摘する人もいるが、僕はタイピングがしやすくなったと感じる。
M1 MacBook Proと比べてキートップの厚みが増し、使い始めた当初は違和感を感じていたが、今は全く気にならない。
スピーカーはモバイルスピーカーいらずの大音量・高音質
14インチMacBook Proのスピーカー性能は、驚くほど優れている。音に厚みと広がりがあり、低音もスカスカしていない。16インチMacBook Pro(2019)と同等の音質を実現しており、Bluetooth接続のモバイルスピーカーは不要になるだろう。
主に家族旅行の宿泊先で、子どもたちのお気に入りミュージックを再生する際に役立っている。
電池持ちは必要十分、急速充電は便利、右からの充電対応は神
14インチMacBook Proのバッテリーは、それなりに使っていれば、それなりに減る。いくら使い倒しても使い切れなかったM1 MacBook Proには劣るが、Intel Macからの買い替えであれば感動するに違いない。
使用例として、合計3時間の記事執筆とRAW画像の現像作業、1時間半のウェビナー参加で、バッテリーは34%まで落ちた。M1 MacBook Proに比べて、電池残量を気にするようになった。マシーン負荷の少ない作業が多い人は、macOS Montereyの低電力モードを利用すれば電池持ちが長くなる。
幸いにもMacBook Pro(2021)は、iPhoneのような急速充電に対応。96W USB-C電源アダプタの利用で、電池残量25%から30分の充電で69%まで回復した。
急ぎでなければ、67W出力の充電器で十分。僕は普段、最大65WのCIO LilNob Shareを持ち運び、必要に応じて最大100W出力のCIO-G100W3C1Aと入れ替えている。
M1 MacBook Proは、すべてのポートが左側に集約されていて不便だ。14インチMacBook Proは右側にThunderbolt 4ポートが1つあり、右側にケーブルを挿して充電できる。地味なようで、めちゃくちゃ便利だ。右側にコンセントがある場所でも、ケーブルを左側まで回す必要がない。
MagSafeは、気付いたら全く使わなくなっていた。自宅ではCalDigit TS4 Dockを使っており、98Wの出力が得られている。出先も充電専用ケーブルを持ち運ぶよりUSB-Cケーブルとして使用できるThunderboltケーブルのほうが汎用性が高いため、持ち運ばない。
フルHDカメラは予想以上に綺麗
Appleは、コロナが大流行中も頑なにアップデートを拒否し続けてきたFaceTimeカメラを、ようやくフルHDに改良した。M1 MacBook Proと比べて画質の改良に加えて、画角も広くなっている。
ポートの復活と合わせてまるで英断のように語るAppleの役員には、世界中から冷ややかな視線を浴びせられていたが、変わったことは素直に喜びたい。
16インチではなく14インチ、M1 MaxではなくM1 Proを選んだ理由
今回選んだMacはM1 Proチップを搭載した14インチMacBook Pro。スペックは以下のとおり。価格は387,800円。
- 10コアCPU、16コアGPU、16コアNeural Engine搭載Apple M1 Pro
- 32GBユニファイドメモリ
- 2TB SSDストレージ
MacBook Pro(2021)は、M1 MacBook Proと違い様々な構成が選択できる。なぜ上記構成を選んだのか、解説する。
14インチを選んだ理由
14インチを選んだ理由は、携帯性を優先したかったからだ。僕はいつでもどこでもMacBook Proを持ち運ぶ。家族との時間を優先した生活を送る中で、スキマ時間は1分も無駄にしたくない。軽さとコンパクトさを重視し、14インチを選んだ。
不思議と14インチMacBook Proを使っていると16インチが欲しくなるが、自宅では外部ディスプレイでの使用がメイン。16インチを大きく上回る広く快適な作業スペースがあるため不要なのだ。
M1 Proを選んだ理由
実は14インチM1 Max MacBook Proを売日に入手していたが、返品を決めた。理由は、不要なパフォーマンスと犠牲になるバッテリーだ。
高いグラフィック性能を必要とする作業は稀だ。Final Cut ProやiMovieを使うときは動画のフォーマット変更のためで、せいぜい数十秒の動画。むしろ外部ディスプレイ出力のほうが負荷がかかってそうだ。
またM1 MaxよりM1 Proのほうが電池持ちが優れている。Appleによると、M1 Maxのほうがアクティブ状態およびアイドル状態の両方で電池消費が多いという。
不要なパフォーマンスのためにバッテリーを犠牲にするぐらいなら、必要十分なスペックで電池持ちを優先したい。Apple Storeで返品し、発表直後にオンラインで予約注文していた14インチM1 Pro MacBook Proをメインマシーンに決めた。
32GBのRAM、2TBのSSDにアップグレードした理由
作業の負荷として32GBのRAMは不要だが、数十のタブをGoogle Chromeで開き、多数のアプリケーションを起動したまま次々と作業する癖が抜けない。次期モデルに買い替えたとしても登場は1年半以上になると予想し、「大は小を兼ねる」理論で32GBを選んだ。
ストレージは、整理が追いつかないRAWファイルが日に日に増え容量を圧迫しており、1TBでは足りず2TBにした。
14インチ M1 Pro MacBook Pro(2021)レビュー:失敗からの学び
Appleは2016年、MacBook Proを刷新した。搭載されていた従来ポートを邪魔者扱いし、最大4つのThunderbolt 3ポートに置き換えた。本体を薄く、軽くした。ファンクションキーの1列を、物理キーからタッチパネルのTouch Barに置き換えた。
当時の僕は、薄型化や軽量化を歓迎した。ポートが排除されたことでシンプルになった筐体のデザインは格好良かった。
しかし喜びも束の間。バタフライキーボードが動作不能になり、ディスプレイが故障。Touch Barが正常に表示されなくなり、ロジックボードに問題が発生。周辺機器を接続するにはハブやドックが欠かせない生活を強いられた。
#macbookpro2016 のGPU不具合はまだまだ健在。ディスプレイの取り付け取り外しに関する不具合は頻度が高く、本体だけで使用するのが今のところ最も安定しているっぽい。
発生するたびにバグレポート送ってるけど、直してくれないかなあ……ハードウェアの問題なのかなあ……。 pic.twitter.com/947lVQcjR0
— g.O.R.i(ゴリミー管理人) (@planetofgori) 2017年4月20日
Appleは2016年、大きな失敗を犯した。「Macは信用できない」「Macは価格と性能が見合わない」と批判され、多くのプロユーザーがMacを離れていった。
Appleは5年間で、プロユーザーにポートが必要であること、薄さや軽さよりも性能が大事であること、物理ファンクションキーが必要とされていることを学んだ。自ら切り捨てた”邪魔者”を「先進的な接続性のための多様なポート」として紹介する神経の図太さには感心せずにいられないが、製品として誤ちを認めたことは称えるべきだ。
復活したプロの求めるハードウェアと、M1 ProとM1 Maxチップのパフォーマンスが組み合わさったMacBook Pro(2021)は、プロユーザーが求めていた「真のMacBook Pro」だ。Apple、ありがとう。
Macの公式情報・購入ページ
- ノート型Mac ▶ MacBook Air / MacBook Pro
- デスクトップ型Mac ▶ iMac / Mac Pro / Mac mini
- 各モデル比較 ▶ Macを比較
- Macアクセサリ ▶ Apple公式ストア / Amazon
- 整備済商品(公式の新中古品) ▶ Apple公式ストア(整備済み商品とは?)
- 学割(教員・PTA役員も対象) ▶ 学生・教員向けストア(学生・教職員向けストアとは?)
+200gは意外と感じられますからねw それなら次のMacBook Airはきっと狙い目でしょうね……!ただSDカードスロットとかないとなると、僕はもう厳しいな……SDカードスロットは神………
人によって使い方は様々ですね😉
いいですねー!!それは天才的な活用方法だ!2022年もどうぞよろしくお願いします!
Apple gift cardのコンビニ10%キャッシュバックを利用して、年が明けたと同時に14インチMAXを注文します。
今年も色々な楽しい記事、ありがとうございました。
自分は家でしか使わないのでもっと重くても全く問題ないので17インチでも全然いいですね。
性能アップもポート復活もキーボード改良も最高だけど、軽さと薄さ大好きマンだからやっぱり持ち運びには重すぎるように感じちゃう…😭