Beats Studio3 Wireless オーバーイヤーヘッドフォン レビュー
音楽に没頭して最大限楽しむことができるファッショナブルなヘッドホン
ワイヤレスヘッドホンは音質もさることながら、見た目も重要だ。僕は音楽を聴いていない時は首に掛けていることも多いため、なおさらだ。
マストではないがノイズキャンセリング機能はあることに越したことはない。これまで「Bose QuietComfort 35」や「Sony MDR-1000X」を愛用してきたが、ここ最近はまた新しい相棒とともに生活をしている。
それが「Beats Studio3 Wireless」。これまで使ってきたヘッドホンと比べて第一印象は地味なものだったが、使っているうちに「ユーザー自身が何も意識することなく音楽に没頭して楽しむことができるヘッドホン」であることが分かってきた。
何よりも見た目が格好良い。僕が購入したレッドモデルはパンチがあり、差し色にもなり、何かと濃い色の服が増えがちな冬の季節に身につけるには最適。
本記事では「Beats Studio3 Wireless」の外観や付け心地、音質やノイズキャンセリング機能「Pure ANC」の精度など、日々使っていて感じたことをまとめたので、購入を考えている人は参考にどうぞ!
外観:高級路線ではなく、ポップ寄りの格好良いデザイン
まずは「Beats Studio3 Wireless」本体の外観とデザインについて紹介する。
僕は今回初めての「Beats Studio」シリーズだが、「Beats Solo」シリーズとは異なり、オンイヤータイプではなくオーバーイヤータイプとなっている。つまり、イヤーカップが耳の上に乗るのではなく、耳全体を覆うようなサイズとなっているため、ヘッドホンの中でもどちらかというと大きめのサイズだ。
筐体のカラーは基本赤一色となっていて、ポイントでシルバーがアクセントとして入っている。右耳側のハウジングの下部には充電用のMicro USBと電源ボタン、電池残量を確認できるLEDが用意されて、左耳側は有線用の3.5mmヘッドホン端子が用意されている。
ハウジングの外側にはBeatsのロゴが書かれ、左耳側はBeatsロゴが操作用のボタンを兼ねている。つまり、電源ボタンを除いてボタンらしいボタンが見えないように作られている。
これもある意味デザインに重点を置いているからこそ実現されている仕様であり、Beatsのファッション性が評価される理由でもあるのではないだろうか。ポップなカラーの効果も加わり、「音の良さそうなヘッドホンを身に着けている」よりも「オシャレなヘッドホンを身に着けている」という印象に寄せることに成功していると感じる。
折りたたんだ時のサイズ感とハードケース
僕は基本的に「Beats Studio3 Wireless」を使っていない時は首にかけることが多いが、時にはしまってカバンの中に入れておくこともある。簡単に折り畳むことができるため、場所も取らずに安全に保管しておくことができる。
他の荷物に当たって傷ついたり壊れたりすることが心配、という人のためにもハードケースが同梱されているので安心だ。ハードケースなので言葉通り固く、よほどの力が加わらない限り壊れることはないので、僕のようにカメラ機材やジム用具など大量の荷物が入ったバックパックの中に放り込んだとしても、ヘッドホン本体が傷つく心配はない。
ただし、かえってケースの大きさや硬さがカバンの中で場所を取る原因になり、邪魔に感じる人もいるかもしれない。カラビナを付けることができる作りにもなっているため、バッグのストラップなどにつけて持ち運ぶこともできるが、セキュリティの面からあまりオススメできない。
僕が結果的に首に掛けた状態で使うようになったのはそういった理由もある。このカラーであれば差し色にもなり、ファッションの一部としても使えるのでとても気に入っている。
クッション性十分で付け心地は良好、カラーを選べば存在感は控えめ
本体の外観も重要だが、それと同じぐらい重要なのは実際の付け心地。「Beats Studio3 Wireless」のイヤークッションは比較的弾力があり長時間付けていても耳が痛くなったことは今のところ一度もないが、クッションの気持ちよさだけで比較すれば「Bose QuietComfort 35」には敵わない。
長時間の使用で気になることがあるとすれば、ヘッドバンドにそれほどのクッション性がないため、多少の疲れを感じるようになるが、これは「Sony MDR-1000X」でも同じだったので仕方ないのだろう。
オーバーイヤータイプなので耳がイヤーピースの中にすっぽりと入るのが理想。僕の場合は特に問題なく入るが、耳が大きいという自覚がある人は一度Apple Storeなどで試着した方が良いかもしれない。感覚的には「Sony MDR-1000X」と同じぐらいだろうか。
Beatsのイメージといえばスポーツ選手やセレブリティが身につけているイメージがあるが、多少かっちりとした格好でもカラーさえ選べば気にならない(僕のこの明らかに浮いている感じが好きなのでレッドなどの原色カラーを選んでいる)。
「Beats Solo3 Wireless」もそうだが、イヤーカップが必要以上に分厚くないため、正面から見た時に横にヘッドホンが必要以上に存在感を出さずに済む。
良い例は「Sony MDR-1000X」。素晴らしい音質やノイズキャンセリング性能を実現している代わりに、身につけた時にそこそこの存在感があり、正面から見るといかにも「ヘッドホンしている感」が出てしまう。それが気にならなければいいが、個人的にはちょっと気になる。
その点、厚みが少ない「Beats Studio3 Wireless」はヘッドホンしていることぐらいは当然分かるが、よりファッショナブルな印象を受ける。
音質と使い勝手:「Pure ANC」と「W1」が支える快適さ
見た目を中心に紹介してきたが、「Beats Studio3 Wireless」の肝心な音質はどうなのか。
ここからは最大の特徴である「Pure ANC」の精度、音質、操作性や電池持ちなどについて紹介する!
「ピュアアダプティブノイズキャンセリング(Pure ANC)」の魅力
そもそも「ピュアアダプティブノイズキャンセリング(Pure ANC)」とは一体どのようなノイズキャンセリング機能なのか。
公式サイトには下記のような説明となっている。
Beats Studio3 Wirelessヘッドフォンでは、周囲の音を効果的に遮断するピュアアダプティブノイズキャンセリング(Pure ANC)機能と、心を揺さぶるクリアで幅広い音域を維持するリアルタイムのサウンドキャリブレーションにより、上質な音楽を楽しめます。 周囲のノイズはすべて正確に感知され、一人ひとりが再生している曲に合わせてリアルタイムで自動的に遮断されるので、アーティストが意図した通りの質の高い音を、最適な状態で聴くことができます。
マーケティングトークが多いので簡潔にまとめると、自分が再生している曲に合わせて外部音をリアルタイムで自動的に遮断してくれる、というノイズキャンセリング機能だ。他のノイズキャンセリング搭載ヘッドホンと異なるのは、再生している曲に合わせてリアルタイムに行ってくれるという点。
さらに、実際に聴いている音楽や周りの環境だけではなく、身につけている人のフィット感なども配慮して最適化している模様。これに似たような機能は「Sony MDR-1000X」にも用意されていたが、別途ボタンを長押して調整する必要があった。「Beats Studio3 Wireless」の場合はユーザーが何1つ気にすることなく自動的に最適化されるので、一枚上手だ。
これを「オーディオキャリブレーション」と呼んでいるのだが、なんと毎秒5万回も行っているとのこと。その恩恵を受けているのか、「Beats Studio3 Wireless」を付けたまま静かな環境から騒がしい環境に移動しても、音の聞こえ方は変わらない。ノイズキャンセリング機能独特の閉塞感がないのは非常に良い。
「Pure ANC」は周りが騒がしい時と静かな時、メガネや帽子を身に着けている時と何も身につけていない時で音の聞こえ方をヘッドホンが自動的に認識し、調整してくれるのだ。普通にすごい。
基本的にはメリットばかりではあるが、僕が使いっている中で感じたデメリットがいくつかある。
1つは、遮音性能。騒音をシャットアウトするという点においては「Sony MDR-1000X」には劣る。娘が大騒ぎしている時に付けていても全く聞こえないのはSony。Beatsは大部分はシャットアウトしているが、ある程度は耳に入ってくる。
「ノイズキャンセリングはすべての音をシャットアウトして然るべき」という人にとって「Beats Studio3 Wireless」は向かないかもしれない。
もう1つは、ホワイトノイズが他社製品と比べて大きいという点。そのままに付けていると耳障りになるため、「音楽は流したくないけど周りの音をシャットアウトしたい」というニーズには応えづらいかもしれない。
幸いにも電源ボタンをポンポンッと2回押すだけで「Pure ANC」はオフにすることができる。実際に使ってみて驚いたのは、この有効化・無効化の切り替えをしても音楽が途中で途切れない、ということ。また音質そのものは全く変わらないのも、「Pure ANC」の技術ならではかもしれない。
「Pure ANC」にはデメリットもあるが、個人的にはメリットの方が大きく上回っている、という印象。音が流れている前提でユーザーのフィット感に最適化し、外部音をシャットアウトする。これらのことから、「Pure ANC」はユーザーが音楽を最大限楽しむために開発されたノイズキャンセリング技術であるという結論に至った。
音質:低音重視からバランス重視?幅広い音楽が楽しめるように
Beatsの音質と言えば、「とりあえず低音を強くしておけ」という雑なサウンド、というイメージが強かった。僕自身、長年Beatsの格好良さに惹かれつつも、製品価格に対して得られる音のクオリティが低すぎると感じ、敬遠していた時代があった。
その印象は、「Beats Solo3 Wirelessオンイヤーヘッドフォン」を買ってみてから大きく印象が変わった。Beatsは確実に音を変えてきている。
「Beats Studio3 Wireless」はさらに音のバランスが良くなり、もはや低音重視のサウンドではなくなった。
もちろん、低音はどちらかというと強調されている方ではあるが、一昔前のBeatsのような強調のされ方ではなく、全体のバランスを踏まえた心地良い低音になっている。恐らく「Pure ANC」によって楽曲ごとの音質の最適化も多少行われているのかもしれない。
僕はこの音は好きだ。バランスが取れたことによって、幅広いジャンルの音楽を楽しむことができるようになったことは大きなメリットだ。また、必要以上に低音が強調されていないため、長時間聞いていても疲れない。
僕は比較的ポップスを聴くことが多く、最近はリトグリの最新アルバムをリピート。音量が小さいと欲しいところの低音は若干の物足りなさを感じずにはいられないが、総じてバランスは良い。音量をある程度まで上げると低音不足も解消され、「Beatsサウンド」も感じられるようになる。
意外と知られていないが、Beats製品は「Apple Music」に最適化されている。これは同じ楽曲を「Spotify」と「Apple Music」で聞き比べると分かるのだが、曲によってはその差がハッキリと分かる。
そのため、「Beatsの音はイマイチ好みではない」という人は一度騙されたと思って「Apple Music」で視聴してみることをオススメする。劇的な変化ではないが、「Spotify」ユーザーだった僕でも「Apple Music」に移行することを決断させるぐらいには違いが感じられた。
「Beats Studio3 Wireless」の音質にしろ、ノイズキャンセリングにしろ、生活に溶け込むような自然さが魅力なのかもしれない。派手さはないが、幅広い音楽ジャンルを何も気にすることなく没頭できるようにすることは、どちらも流れてくる音楽を今まで以上に楽しめるような機能として大いに役立っている。
「W1」チップ:すべてを支えるブレイン、開封した瞬間から分かる使いやすさは健在
Apple傘下に入った後のBeats製品には「W1」チップの搭載、という大きなアドバンテージがある。
「AirPods」や「Beats Solo3 Wireless」と同様にiPhoneを近づけるだけでペアリング用の画面が表示され、タップすればペアリングが完了する。
「W1」チップのメリットはペアリング作業だけではない。同じiCloudアカウントで紐付けられたデバイス間であれば、簡単に接続先のデバイスを切り替えることができる。
例えば、iPhoneで音楽を聴きながらカフェに入り、音楽の再生元デバイスをiPhoneからMacに変える時は、メニューバーから「Beats Studio3 Wireless」を選択するだけ。手間いらずで助かる。
まだまだ「W1」チップのメリットはある。先程紹介した「Pure ANC」も「W1」チップありきの機能。同機能を有効化した状態で使い続けても最大22時間のバッテリー駆動時間を実現しているため、ほとんどの場合は丸一日持つだろう。
ちなみにオフにすると電池持ちは最大40時間。毎日通勤・通学時間が片道1時間、往復2時間だとしても、「Pure ANC」を有効化した状態で2週間は持つ。無効化した状態であれば1ヶ月持つ計算になる。
万が一電池がなくなったとしても「Fast Fuel」機能搭載により、たった10分間の充電で3時間の再生時間を確保できる高速充電が利用可能。なお、有線ケーブルも用意されているが、なぜか電池がなければ利用できない仕様となっているため、どのみち充電しなければならない。
また、用意されている充電ケーブルはなぜかMicro USB。先に発売されている「BeatsXワイヤレスイヤホン」はLightning端子になっているのだが、なぜあえてMicro USBにしたのだろうか。百歩譲ってUSB-Cにしてほしかった。
Bluetoothヘッドホンのメリットはコードから解放されることだが、デメリットは最初のペアリング作業や都度充電しなければならないこと。「Beats Studio3 Wireless」は面倒なペアリング作業もなく、長時間の電池持ちで充電も1週間に1回やれば間に合う。
見方によっては、「あんまりオーディオとかガジェットとか興味ないけど、そこそこ良いヘッドホン欲しいなあ」というざっくりとしたニーズに応えられる1台かもしれない。
「Studio3 Wireless」と「Solo3 Wireless」を比較
同じBeatsの「W1」チップ搭載ヘッドホンとして、「Beats Studio3 Wireless」を「Beats Solo3 Wireless」と比較してみることに。
両モデルのスペックを比較してみると、下記の通り。大きな違いはヘッドホンのタイプと「Pure ANC」の対応可否。本体の重さは45g差となっていて、どちらも高速充電や長時間駆動に対応している。
Studio3 Wireless | Solo3 Wireless | |
---|---|---|
ヘッドホンのタイプ | オーバーイヤー | オンイヤー |
高さ | 18.4cm | 19.8cm |
重さ | 260g | 215g |
電池持ち | Pure ANCオフ:最大22時間 Pure ANCオン:最大40時間 |
最大40時間 |
Pure ANC | ◯ | ☓ |
Fast Fuel | 10分で3時間再生 | 5分で3時間再生 |
「Beats Studio3 Wireless」を付けている様子がこちら。
「Beats Solo3 Wireless」を付けている様子がこちら。
オーバーイヤータイプとオンイヤータイプではハウジングの大きさが一回り変わる。耳に置くタイプはピアスをしている人にとっては当たると痛いのではないかという懸念があるかもしれないが、僕個人としてはうまくずらすことができ、困らなかった。
その点、「Beats Studio3 Wireless」は耳全体を覆うため、耳がすっぽりと入る。冬場はイヤーマフ代わりにもなりとても暖かいのだが、夏は暑くなるので必然的に使用頻度が減ってしまう。
イヤークッションは「Beats Studio3 Wireless」の方が厚みがある。実際に付けていてもクッション性の違いは感じられる。これは「Beats Solo3 Wireless」が快適ではない、という意味ではなく、オーバーイヤーとオンイヤーの付け方の違いによるものではなかと考えている。
僕は気分や用途によって様々なヘッドホンを使い分けているが、今回比較している2台のBeatsヘッドホンのうち、どちらか1台を選ぶとしたら、僕は「Beats Studio3 Wireless」ではなく「Beats Solo3 Wireless」を選ぶだろう。
ノイズキャンセリング機能はあることに越したことはないが、オールシーズン使うにはオーバーイヤーヘッドホンはオススメできない。実際、僕は夏になると手元にあるオーバーイヤー型のノイズキャンセリング機能付きヘッドホンを移動中に使う回数が大幅に減る。
僕自身も「どうせ買うなら良いものを」という考え方をすることが多いが、買っても使わないというのはあまりにももったいないため、「Beats Studio3 Wireless」の購入を考えている場合は暑くなっても使えるか、使わないとしたら他に代用できるものはあるか、などを考慮に入れた方が良いかもしれない。
「音楽を楽しむ」を追求したBeatsヘッドホンの最高峰
「Beats Studio3 Wireless」はBeatsヘッドホンの中の最高峰であることは言うまでもない。再生している曲に合わせてリアルタイムにノイズキャンセリングを調整してくれる「Pure ANC」に対応し、長時間バッテリー、格好良いデザイン、分かりやすく簡単な操作性を実現。
純粋に「音質」だけに注目すると税別34,800円という価格が音質に見合わないかもしれない。正直なところ、同価格帯ではもっと音質の良いヘッドホンはあるだろう。それでも僕は買ってよかったと思っている。
デザインは持っているヘッドホンの中で1番気に入っている。音質は感動的ではないが好みに近く、幅広いジャンルの音楽を楽しめることができ、ノイズキャンセリングも自動的に最適化してくれるので快適だ。僕自身が希望するヘッドホンの条件を満満たしているのだ。
欠点を挙げるとすれば、夏場には恐らく使えなくなるだろうということ、同梱されている有線ケーブルは電源が入っていないと使えないということ(つまり、電池切れしていると全く使えない)、充電ケーブルがLightningではなくMicro USBであるということぐらいだろうか。欠点として挙げたが、個人的にはこれらを欠点として感じてはいない。
同価格帯のノイズキャンセリング機能対応のワイヤレスヘッドホンとしては「Bose QuietComfort 35」や「Sony MDR-1000X」も選択肢に入ってくるが、身につけたい、という思えるのはやはり「Beats Studio3 Wireless」。やはりこのレッドが格好良い。
「良いサウンド」と「良いデザイン」を満たすワイヤレスヘッドホン、それが「Beats Studio3 Wireless」ではないだろうか。