「Apple File System(APFS)」ーーSSDに最適化、暗号化に焦点を当てたファイルシステム
Appleは独自の新しいファイルシステム「Apple File System(アップルファイルシステム:APFS)」を発表した。既に「macOS Sierra」には開発者プレビュー版が提供されているが、正式リリースは2017年としている。
特徴はSSD/フラッシュストレージに最適化され、暗号化を重要視しているとのこと。対象となっているデバイスはMacだけではなく、Apple Watchから「Mac Pro」までスケールすることを明らかにしている。
APFS誕生の理由と必要性
なぜAPFSという新しいファイルシステムを用意する必要があるのだろうか。それはそもそも今使用しているファイルシステムが古すぎるからだ。Macの「ディスクユーティリティ」を開き、「ファイルシステム」を開くと「OS X 拡張」と表示される。これは「HFS Plus」とよばれるファイルシステムとなっていて、その前バージョンである「HFS」を含むと実に30年以上も前のファイルシステムなのだ。
30年前と言えば僕が生まれた年。当時のパソコンといえば「パソコンの歴史 1986年」にあるようなフロッピーディスクの搭載が当たり前の時代で、ファイルサイズの計測単位はキロバイトやメガバイトだった時代だ。
今はSSD/フラッシュストレージが主流になり、ファイルサイズの単位はギガバイトやテラバイトが基本となった。さらに、最近はセキュリティに対する意識は高まるばかりでファイルシステムにおいてもその点に対する配慮は欠かせない。
そこで、APFSはiOS・macOS・tvOS・watchOSが動作するデバイスに必要とされる条件を満たし、今後数十年間のうちに進化する技術に適用できるようなファイルシステムを目指し、開発された。次に「APFS」の特徴となるものを紹介する。
APFSで僕らユーザーが受ける恩恵
ハッキリ言ってデバイスを使っている時にファイルシステムを意識することはまずないだろう。最も触れる機会がありそうなのはMacを使用している時で、それはMac本体に不調があった時やストレージが圧迫された時など、問題が起きた時に限られる。
なので、細かい仕様を解説する気は無いが、APFSにって僕らがユーザーとして受けられる恩恵も色々とあるようだ。以下にその例を載せておく。
不足してきたパーティション容量を拡張することができる
例えば、ドライブの一部でパーティション切っていた場合、容量が足りなくなってきても拡張することができる。500GBのSSDに50GBのパーティションを2つ切り、パーティションの容量を使い切りそうになった場合、残容量は400GB(全体のストレージ[500GB] – パーティション[50GB×2])と表示される。
これはAPFSではパーティションを「拡張可能なコンテナ」として認識することから、必要に応じてパーティション容量を増やすことができるのだろいう。
ファイルを複製してもファイル容量は2倍にならない
従来は1GBのファイルを複製するともう1つ1GBのファイルが作成され、2GBになる。ところが、APFSになるとこの容量が大幅に抑えられる。
というのも、複製されたファイルを編集する場合、ユーザーはオリジナルバージョンにアクセスしているような仕組みになり、ファイルに変更を加えた場合は「別ファイル」ではなく「別バージョン」として認識するようになる。ファイルの複製は仕組みとしてバージョン管理に近くなるようだ。
ユーザーは日頃の使い勝手が便利になるので期待して待とう
他にもセキュリティが強化され、ファイル単位の暗号化にも対応。HFS Plusのタイムスタンプが1秒ごとだったのに対し、APFSのタイムスタンプは1ナノ秒。クラッシュを防ぐために「コピーオンライト (Copy-On-Write) 」機構を採用。目に見えないところでユーザーが快適にデバイスを使用することができる仕組みが色々と盛り込まれている。
個人的に気になるのは今後発売されるであろう新しいデバイスとの兼ね合い。特にMacに関しては「macOS Sierra」内に「Touch ID」や有機ELタッチバーをほのめかす記述が発見される新型MacBook Proの噂と一致する記述が見つかっていることから、今秋に新モデル発売はほぼ間違いないと思われる。APFSとの兼ね合いはどうなるのか。
1つ言えるのは、目に見えないところがAppleは我々ユーザーの利便性や安全性向上に努めてくれているということ。これからもその恩恵に預かりたい。