12.9インチiPad Pro 2021 レビュー:”ガチ勢”用マシーン

「一番スペックの良いモデルを買っておけばいい」という時代は終わった

iPadを”画面の大きいiPhone”として活用しているような人でも、iPad Proを選ぶべき理由はあった。120Hzディスプレイの滑らかさ、iPhoneで慣れたFace IDの便利さ、ディスプレイの美しさ。「どうせなら一番良いやつを買っておこう」という気持ちもあった。

しかしiPad Pro(2021)は、iPadが日々のワークフローに入り込んでいるゴリゴリに使いこなす”ガチ勢用マシーン”に昇格してしまった。もはや僕のようなiPad素人が軽い気持ちで買っていいデバイスではない。プロ向けデバイスだ。

iPad Pro(2021)は、未だかつてないほどMacに近づいている。Macと同じM1チップを内蔵し、Thunderbolt/USB4ポートを搭載。12.9インチモデルは、ミニLEDを使用したLiquid Retina XDRディスプレイになり、iOSデバイス史上最も高性能なディスプレイとなった。

僕の主なiPadの活用方法は、YouTube動画の視聴とKindle本の読書だ。12.9インチiPad Pro(2021)である必要性はゼロ。しかしミニLEDディスプレイが気になる気持ちが抑えられず買ってしまったので、実機を試して分かったことを紹介する。

YouTubeでもミニLEDディスプレイの恩恵は受けられるの?

M1 iPad Pro 2021 12 9inch MIniLED Review 14

12.9インチiPad Proは、ミニLEDディスプレイが最大の特徴だろう。NetflixやApple TV+だけではなく、YouTube動画でもHDR動画であれば高いコントラスト比が体感できる

問題は、高いコントラスト比のある動画を見るかどうか。僕はカメラ関連のチュートリアル、各種製品のレビュー、格闘技などを見ることが多く、高いコントラスト比を全く必要としていない。

M1 iPad Pro 2021 12 9inch MIniLED Review 13

ディスプレイとは関係ないが、12.9インチモデルを使った動画視聴は、膝の上に立てかけるかスタンドを使うなどの工夫が必要だ。両手で持ち続けるには重すぎる。

結論

  • YouTubeでも黒い部分はより黒く見える。
  • HDR動画であれば、並べて比較しなくても違いがわかる。
  • すぐ慣れるため、感動は一瞬。
  • 普段見ている動画では恩恵を受けない。

Thunderbolt 3ハブ経由で周辺機器を接続できるの?

M1 iPad Pro 2021 12 9inch MIniLED Review 11

iPad Pro(2021)のポートはThunderbolt/USB4に改良されたため、Thunderbolt 3ドックと互換性がある。OWC Travel Dock E経由でSanDisk エクストリーム ポータブルを接続したところ、ドライブがファイルアプリで正しく認識された。

試しにSanDisk エクストリーム ポータブルにSDカードを挿し、USB-CポートにOWC Travel Dock E経由で2枚目のSDカード、Caldigit Tuff nanoを接続してみた。
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2枚のSDカードとSSDドライブは、ファイルアプリ上ですべて認識された。僕には活用できない機能だが、接続できる機器が増えるのは良いことだ。
M1 iPad Pro 2021 12 9inch MIniLED Review 16

結論

  • Thunderbolt 3ドック、USB-Cハブと互換性あり。
  • 複数のドライブや周辺機器と接続が可能。

5K2Kのウルトラワイドモニターを出力できるの?

M1 iPad Pro 2021 12 9inch MIniLED Review 20

Thunderboltを使った外部ディスプレイの出力を試すべく、5K2K解像度のウルトラワイドディスプレイと接続してみた。ケーブル接続後すぐに出力されたが、ミラーリング以外は利用できず、左右の余白が目立つ。外部ディスプレイは接続しても活用できない。

なおPower Deliveryに対応するディスプレイの場合、出力と同時に充電もされていた。
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結論

  • 出力できるがミラーリングしかできず、全く意味がない。
  • 余白が気になる。

Sidecarとしての使い勝手はどう?

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12.9インチの画面サイズを活かし、13.3インチディスプレイを搭載したM1 MacBook ProとSidecarで接続し、サブディスプレイとして使用してみた。iPad ProのほうがDPIが高いだけではなく、高いコントラスト比のお陰で表示が綺麗だ。同じウェブサイト、画像、動画を表示しても、iPad Proのほうがパリッと表示される。

しかし12.9インチiPad Proは、携帯性に欠ける。M1 MacBook Proと組み合わせると、合計重量は約2.08kg。16インチMacBook Proと同じ重さになってしまう。日頃から持ち運ぶのであれば、11インチiPad Pro(466g)や10.8インチiPad Air(458g)がおすすめだ。

結論

  • 13インチサイズのMacBookシリーズであれば、同等のディスプレイが横に追加できるため便利。
  • ただしかなり重くなるためSidecar目的であれば11インチiPad ProやiPad Airのほうがおすすめ。

Magic Keyboardとの組み合わせはどうなの?

M1 iPad Pro 2021 12 9inch MIniLED Review 22

発売前は一部で互換性なしと言われていた旧モデル用Magic Keyboardだが、素の状態であれば問題なく使用できる

普段は11インチiPad ProとMagic Keyboardを使っていたが、久しぶりに12.9インチで使用すると、タイピングの快適さに驚く。設定画面の傾斜が限られる点は惜しいが、打ち心地は抜群だ。バックライトもあり、暗い場所でも作業できる。

M1 iPad Pro 2021 12 9inch MIniLED Review 23

ただし12.9インチiPad ProとMagic Keyboardの合計重量は1.3kg以上。持ち運ぶ機会が多く、iPadとしての機能を活用する機会が限られているならば、M1 MacBook Airを選んだほうがいいだろう。

結論

  • 11インチと比べてキーボードが広々としている分、文字が打ちやすい。
  • 旧モデルでも保護ガラスが貼っていない状態であれば問題なし。
  • iPad Proで文字を打つ機会が多い人は買ったほうがよい。

iPad Pro(2021)レビューiPadOSもっと頑張れ

M1 iPad Pro 2021 12 9inch MIniLED Review 06

iPad Pro(2021)は、Macと同じM1チップとThunderbolt/USB4ポートを搭載。すっかり”ガチ勢用マシーン”になってしまった。

”Mac化”が進んでいるようにも見えるが、性能や使用できる外部ポートが同じになったからこそ、作業内容次第で選ぶべきデバイスが明確になった。Apple Pencilやタッチ操作が必要であればiPad Pro、キーボードとマウスの作業がメインであればMac、という棲み分けになるだろう。

iPad ProはMacを置き換えるポテンシャルを持っているが、ソフトウェアに妨害されている。OSの進化ペースは遅く、未だに”iPhoneの大画面バージョン”から抜けきれていない。Final Cut ProやLogic Proなど、プロ向けアプリの不足は致命的だ。

Appleの役員は、「ハードウェアとしての可能性を引き上げることで、デベロッパーやユーザーは活用する」と説明しているが、A12Z Bionicを搭載したiPad Pro(2020)でもパフォーマンスに見合うソフトウェアが提供されていない。「パフォーマンスに余力があることは、長く使用する上で重要」とも指摘しているが、ハードウェアのポテンシャルが活かせない製品は、長く持っていても無駄だ

12.9インチiPad Pro(2021)は、そのポテンシャルを活かすためのソフトウェアが必要だ。OSも、アプリケーションも、進化しすぎたハードウェアに追いつく必要がある。6月7日からオンライン開催される「WWDC 2021」で、iPadOSとiPadアプリの進化に期待しよう。

……僕は進化しても使いこなせないけどね。

iPad Pro 12.9-inch (第5世代)
8.2/10
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更新日2021年05月31日
コメント(6件)

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  1. 通りすがりの読者(コメントID:603587)

    記事内容に激しく同意できます。使用用途がProにマッチする方のためのデバイスって感じで自分はもうPro版は買わない(取りあえず良いモノ使っておこうって人なので)。
    いっそMacOSも稼働できる様にしてしまえば食指も動くし12.9ってサイズがもっと活かせるのではと思うのは私だけでしょうか?

  2. 通りすがりの読者(コメントID:603495)

    ありがちな絶賛一辺倒で中身の薄い記事が多い中、忖度なく良し悪しどちらもきちんと書かれていて素晴らしいです

    Mac OSもiOS/iPad OSも熟成重ねて安定こそしてるもののソフトウェアの、というか(万人が感じる事ができる)ユーザー体験の進化が止まってるのは寂しいですね

    そのせいなのか、最近いわゆるブロガー勢でもチラホラSurfaceや自作PCでWindowsを併用or逆スイッチしたり、Google Pixelに手を出す方が以前よりも散見されるような気が…

    Appleならではの思い切りの良さを今後のアップデートでは期待したいですね

  3. 通りすがりの読者(コメントID:603493)

    これだけモンスタースペックだとますますmacOS搭載のiPadが欲しくなるけど、Appleはそんな気がサラサラないという悲しさ。

  4. 通りすがりの読者(コメントID:603491)

    Macは持っているが、iPadは持っていない。iPadは仕事や高い趣味性の場面で使えるのだろうか?と思っている自分にとっては、かなり濃いレビューでした。
    ただ、黒背景に白文字は若干見づらいので、モードを選択できるようにして頂けると幸いです。(こちら側の都合なので、対応されなくても全然大丈夫です。統一があって良いと思います。)

  5. g.O.R.i(コメントID:603490)
    コメント先:森のぬんたら(コメントID:603488)
    12.9インチiPad Pro(2021)のレビューを楽しみにしていました!楽しく読ませていただきました。 ゴリさんの端末は、ブルーミング(光漏れ)はいかがでしたか? どうやら個体差があるようですが、 この点が気になり12.9インチ iPad Pro (2018)を置き換えるべきか悩んでおります。

    ブルーミング、なんか気にして見ていないせいか、特に気にならないんですよねえ。Kindleを読むに12.9インチは大きすぎて使っていないですし、通常の文字はまあ普通ぐらいですかね。もともと輝度を控えめにする傾向があるのと、日中使うことが多いので、気になっていないかもしれません!気になったらすかさず追記します!w

  6. 森のぬんたら(コメントID:603488)

    12.9インチiPad Pro(2021)のレビューを楽しみにしていました!楽しく読ませていただきました。

    ゴリさんの端末は、ブルーミング(光漏れ)はいかがでしたか?

    どうやら個体差があるようですが、
    この点が気になり12.9インチ iPad Pro (2018)を置き換えるべきか悩んでおります。

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