【GMIC Tokyo】基調講演:LINEのグローバル成長について
本日、渋谷ヒカリエホールにて「GMIC 東京 2014 | Global Mobile Internet Conference」が開催中。
LINE株式会社の代表取締役COOである出澤剛氏に「LINEのグローバル成長について」という内容で基調講演が実施されていたので、その内容を書き起こしておく!
LINEこれまでの歩み
まずはLINEのこれまでの歴史から。知っている人も多いと思うが、LINEが開発することになったきっかけは2011年3月11日。東日本大震災の時だ。
この時、日本中のインフラのほとんどがダウンし、何もかもが繋がらない状態だった。そのような状況の中、Twitterなどのオープンなコミュニケーションサービスが情報を拡散することに大いに役に立った。
ただ、同時にオープンなコミュニケーション、オープン型インターネットに限界を感じたとのこと。オープンなインターネットで家族の安否などを確認するのは極めて困難だからだ。
それまで新規のサービスの立ち上げを検討していたLINEだが、これがきっかけで1対1のコミュニケーション、つまりクローズドなコミュニケーション取ることができるサービスの必要性に気付いたそうだ。
開発体制を整えることができたのはゴールデンウィーク。1ヶ月半でLINEを開発し、リリースしたとのこと。「クローズなコミュニケーションを身近な人達と繋がる」「スマートフォンに特化してやり切る」という2つのコンセプトでスタートしたそうだ。
今後のグローバル戦略について
続いて、今回のテーマである「LINEのグローバル戦略」について「ポジショニング」と「ものの考え方」という2つの軸で説明された。
1. ポジショニング
現在、コミュニケーションにおける大きな変化が起きている。スマートフォンの普及により、一般の消費者(若い女性から年寄りまで)が簡単にコミュニケーションツールを使うことができるようになったからだ。
これまではメールやSMS、シンプルなコミュニケーションアプリが多かったが、LINEはWeChatやKakaoTalkなどと同じ「スマートフォンメッセンジャーの第2世代」であると位置付けているとのこと。スタンプや通話など様々な形でコミュニケーションを取ることができる「マルチコミュニケーションアプリ」である。
クローズドネットワークの特徴は友達だけでグループを作る、同僚だったら同僚だけでグループを作る、というユーザー同士が密度の高いコミュニケーションを取ることができるという点。
スタンプはLINEの大きな特徴でもあり、LINEが提案することに成功した新しいコミュニケーションの形。話すことのセットでボディランゲージがあるように、テキストにもスタンプというものを取り入れたことによってよりエモーショナルなコミュニケーションが可能になった。一部ではスタンプはアジア圏のみの流行りとも言われているが、スタンプはFacebookやViberが追従しているように、今後グローバルにおいても使われるコミュニケーション手法と言えるのではないかと指摘する。
コミュニケーションが変化していることを裏付けるデータもある。とある調査によると最近はメルマガの9割が開封されないと言われている。また、モバイルインターネットのアクセスはブラウザ経由はたったの2割、残り8割はアプリ経由になっているという情報もある。かつてあったポータルサイトで情報を探すという常識は既に終焉を迎えつつある。
よって、LINEとしては、コミュニケーションアプリがインターネットの入り口になるのではないかと考えている。LINEが順調に成長している理由は、下記スライドにあるように、様々なコミュニケーションにおける台風の目のところに位置づけることに成功したからではないかと出澤氏は分析する。
2. ものの考え方
モバイル業界はとにかく動きが早い。非常に激しい市場環境に対してどのようにLINEは戦っているのだろうか。
これについては「一番早く変化に対応することができること」を最優先にして、それを一番の強みする、とコメントしていた。
具体的に何をしているかというと、やはりLINEは基本的にプランニングはしないそうだ。スマホのような激しい動きがある世の中で3年後のことを考えるのは非常に難しい。よって、長くても3ヶ月先の計画を考えるようにしているそうだ。
ただし、企業として事業計画を立てずにどのようにして今後の戦略を考えているのか。何を基準に進むべき方向を決定しているのだろうか。
出澤氏は「ユーザーの反応」とコメントしていた。
例えば、新しくサービスや機能をローンチをした後、必ずありとあらゆるログを取得するようにし、膨大な量のログを徹底的に解析するようにしているそうだ。また、ブログやTwitterなどを積極的にクロールをし、調査していることも言及していた。
これらの情報を細くPDCAを回し、短期の改善を繰り返し行うようにしているとのこと。
これは海外展開にも同じことが言えるようだ。知っての通り、LINEは海外における人気も高く多くのユーザー数を抱えているのだが、それを可能にするのは積極的に現地にあわせるようにして、ローカルの考え方などを重要視しているからだという。
現地展開のパターンは以下の通り。言語のサポート、ローカル向けのコンテンツを提供、ローカル企業とのパートナシップ、そして現地にローカルオフィスを用意するの4つ。基本的に権限においてもローカルのオフィスの意見や主張が優先されるような仕組みになっているとのことで、とにかくユーザーの声に耳を傾けるようにしているそうだ。
つまり、LINEは「ユーザーファースト」であることを最重要視している。ユーザーファーストを実践しているからこそ、ここまでこれたのだ。
開発のスタイルについて
スピード感のある事業展開とユーザーファーストを意識したサービス作りを実現にしているのはその開発体制にもあるようだ。
LINEは企画・デザイン・開発が平行して走ることができるアジャイルで開発している。ウォーターフォールで開発をしないことによってユーザーにとって一番良い物を選択することが可能になるという。
他にも会社内で階級を3階層以上設けないことやタスクの割り振りを工夫するなど、スピード感が損なわれないための仕組みを導入しているそうだ。その結果、動きの早い時代に対応する方法を取り入れた結果、日本だけではなく世界的に利用されるサービスになったことは言うまでもない。
成功しているのはコミュニケーションアプリとしてのLINEだけではない。今ではLINEに関するサービスは世界で10億ダウンロードを突破している。
コミュニケーションアプリは収益化が難しいとは言われているが、収益面において成功していると評価されている。
LINEがこれから目指すところ
ここまで誰もが認める大成功を収めているLINEだが、今後何を目指すのか。
出澤氏によると、「スマートフォンのナンバーワンプラットフォームになる」と力強くコメントした。
既にLINEは新しいコミュニケーションツールを提案し、ゲームやコンテンツも幅広く提供している。世界No.1のプラットフォーマーになるために今後力を入れていくのは「O2O」だと語った。
これについて出澤氏は「2、3年後、リアルな世界とインターネットの世界がより一層近くなり生活者が便利になる世の中になるのではないかと考えている。LINEはこの領域に今後力を入れていきたい」と語った。よって、「スマートフォンのナンバーワンプラットフォームになる」とは発表したものの、最終的にはスマートフォンに留まらず、「生活のナンバーワンプラットフォームになるということ」を目指すと発表した。
LINEが目指すのは日本だけではない。アジアだけでない。世界だ。世界中の人に利用される、生活に欠かせないプラットフォームを目指す。