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Appleの「Siri」開発現場で明らかになった内部混乱と方針転換の連続

「AIMLess」と揶揄される部門、架空のWWDCデモ、そして救世主となるか新リーダーシップ

Using Apple Intelligence on iPhone16Pro and M4iPadPro 03

Apple Intelligenceで刷新されるSiriの開発背景には大きな内部混乱があったことが明らかになった。The Informationが10日に公開した新たな報告書で明らかにした。

AppleはApple Intelligenceのバックエンドについて複数の選択肢を検討していたという。当初の構想では、iPhoneのローカル環境とクラウド上でそれぞれ動作する小規模と大規模の言語モデル(「Mini Mouse」と「Mighty Mouse」と呼ばれていた)を構築する計画だった。

しかしその後、Siriのリーダーシップは方針を転換し、すべてのリクエストをクラウド経由で処理する単一の大規模言語モデルを構築する方向へと舵を切った。さらにその後も技術的な方針転換が繰り返されたという。この優柔不断な態度と度重なる方向転換に、エンジニアたちはフラストレーションを募らせ、一部のスタッフはAppleを去ることになったと報じられている。

「AIMLess」と呼ばれる部門とリーダーシップの問題

Appleの根深いプライバシーへのこだわりに加え、社内の対立する人間関係も問題に拍車をかけた。The Informationの報道によると、AppleのAIおよび機械学習グループで働いていた元従業員6人以上が、実行面での問題の原因はリーダーシップの欠如にあると指摘している。過度にリラックスした企業文化や、Siriの将来バージョンを設計する際のリスクを取る意欲と野心の欠如が挙げられている。

AppleのAI/ML部門は社内で「AIMLess(目的のないAI/ML)」と揶揄され、従業員たちはSiriを「ホットポテト(誰も責任を取りたくない厄介事)」と呼び、異なるチーム間で継続的に受け渡されるものの、大きな改善は見られないと表現しているという。また、AI部門の同僚たちへの高い給与、早い昇進、長い休暇、短い勤務日についても対立があったとされる。

ChatGPTへの対応の遅れと内部の方針

AppleのAI責任者であるジョン・ジャナンドレア氏は、適切なトレーニングデータと一般的な知識の質問に対する回答のためのより良いウェブスクレイピングによって、Siriを修正できると確信していたという。しかし、上級リーダーたちは2022年のChatGPTのデビューに対して緊急性を持って対応しなかった。ジャナンドレア氏は従業員に対し、ChatGPTのようなチャットボットはユーザーにとって大きな価値を加えるものではないと考えていると伝えていた。

2023年、Appleのマネージャーたちはエンジニアに対し、最終的なApple製品に他社のモデルを含めることを禁止し、自社のモデルとのベンチマークにのみ使用できると伝えた。しかし、Appleの自社モデルはOpenAIの技術ほど良いパフォーマンスを示さなかったという。

小さな勝利と挫折したプロジェクト

一方、Siriのリーダーであるロビー・ウォーカー氏は、Siriの応答時間の短縮など「小さな勝利」に焦点を当てていた。ウォーカー氏のペットプロジェクトの一つは、アシスタントを呼び出すために使用される「Hey Siri」から「Hey」を削除することで、これを達成するのに2年以上かかった。また、彼はLLMを使用してSiriにより感情的な感受性を与え、困っているユーザーを検出して適切な応答を提供できるようにするエンジニアチームの取り組みを却下したという。

Appleは「Link」というコードネームのプロジェクトを開始し、Vision Pro向けにアプリを制御しタスクを完了するための音声コマンドを開発していた。このプロジェクトでは、ユーザーが音声だけでウェブを閲覧したりウィンドウのサイズを変更したりできるようにする計画や、共有仮想空間で複数の人からのコマンドをサポートして共同作業を可能にする計画があった。しかし、これらの機能のほとんどはSiriチームが実現できなかったため断念されたという。

WWDC 2024のデモは「架空」だった?

報告書によると、WWDC 2024でのApple Intelligenceの最も印象的な機能のデモ(Siriがユーザーのメールにアクセスしてリアルタイムのフライトデータを見つけ、メッセージを使用してランチの予定についてリマインダーを提供し、マップでルートを計画するなど)は、事実上架空のものだったという。このデモはSiriチームのメンバーにとっても驚きであり、彼らはこれらの機能の動作バージョンを見たことがなかったとされる。

WWDC 2024のデモで実際にテスト端末で有効化されていた唯一の機能は、Apple Intelligenceのディスプレイの端を囲む脈動する色とりどりのリボンだけだったという。この架空のデモを披露する決断は、Appleの過去の行動からの大きな転換だった。

Using Apple Intelligence on iPhone16Pro 01

通常、Appleはイベントで機能や製品を紹介する際、すでにテスト端末で動作しており、マーケティングチームが予定通りにリリースできることを確認して承認したものだけを紹介していた。

一部のApple従業員は、クレイグ・フェデリギ氏とマイク・ロックウェル氏がSiriを立て直せるという楽観的な見方を持っているという。フェデリギ氏はSiriのエンジニアに対し、「最高のAI機能を構築するために必要なことは何でもする」よう指示しており、それがApple自身のモデルではなく、他社のオープンソースモデルをソフトウェア製品に使用することを意味する場合でもそうするよう伝えているという。

(Source: The Information via MacRumors

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更新日2025年04月11日
執筆者g.O.R.i
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