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Apple、EU和解報道も公式声明で真っ向反論。「要求は法の範囲を超えている」

水面下での交渉進展が報じられる一方、DMAがもたらすユーザーへの悪影響を詳述し異議申し立てを表明

Andre hunter 5otlbgWJlLs unsplash

Appleが欧州連合(EU)のデジタル市場法(DMA)違反を巡る問題で、規制当局との和解に向けて最終段階に入っているとの報道が出ている。Financial Timesが関係者の話として伝えた。

しかし、Appleの公式声明を見る限り、和解に向けた歩み寄りの姿勢は見られず、むしろEUに対する不満と対立姿勢を鮮明にしている。報道と実態の間には大きな乖離があるようだ。

DMAを巡る対立の経緯

ゲートキーパー指定の背景

EUのデジタル市場法は、市場支配力を持つ巨大IT企業を「ゲートキーパー」に指定し、競争を阻害する行為を規制する法律だ。Appleは一定のユーザー数基準を満たしたため、ゲートキーパーに指定された。

主な争点はiPhoneアプリの販売独占だった。EUはAppleに対し、自社のApp Store以外でもアプリの販売を認めるよう要求。Appleはこれに応じ、現在iPhone向けの複数の代替アプリストアが存在している。

公の場での激しい応酬

Appleは以前、EUが不公正な競争を促進していると非難した。同社は「DMAのルールはAppleにのみ適用されるが、Samsungは欧州のスマートフォン市場でトップシェアを持ち、中国企業も急成長している。Appleは独自で革新的なエコシステムを構築してきたが、DMAはその革新に報いるのではなく、Appleだけを標的にしている」と主張していた。

一方、EUも強く反論。「AppleはDMAの施行開始以来、あらゆる点で異議を唱えてきた。これは同社が完全に協力的であるという主張を損なうものだ。企業が利益を守りたいのは理解できるが、それはDMAの目的ではない」と応酬していた。

Appleの主張

和解報道に反発する公式声明

Financial Timesの和解報道に対し、Appleは公式コメントとして強い不満を表明する声明を発表した。同社は「欧州委員会は、App Storeの運営方法について指示し、開発者にとって分かりにくく、ユーザーにも不利益となるビジネス条件を強制しています」と指摘している。

さらに「私たちは、ユーザーから求められてもいない、欧州委員会の常に変更され続ける要求に対応するために、エンジニアリング作業に延べ何十万時間も費やし、数多くの変更を行ってきました。しかし、数えきれないほどの会議を重ねても、欧州委員会はそのたびに達成基準を変え続けています」と不満を表明。「私たちは法令を順守していると考えていますが、今回の決定は法が求める範囲をはるかに超えていると判断し、本決定に異議を申し立てました」と締めくくった。

DMAがユーザーに与える3つの影響

Appleは公式ニュースルームでも、DMAがEU域内のユーザーに与える具体的な影響について詳細な説明を公開している。同社は機能提供の遅れ、セキュリティリスクの増加、プライバシーへの脅威という3つの主要な問題点を挙げている。

機能提供の遅れ

機能提供の遅れについて、AppleはDMAが「特定の機能を自社ユーザーが利用できるようになる前に他社の製品やアプリでも使えるようにすることを求めている」と説明。その結果、AirPodsを使ったライブ翻訳機能やiPhoneミラーリング機能などのEU域内での提供が遅れている。Appleはこれらの機能に対してユーザーのデータを保護するための変更案を提案したが、欧州委員会はこれを却下したという。

セキュリティリスクの増加

セキュリティ面では、DMAがAppleに対し、App Storeと同等のプライバシーとセキュリティ基準を満たさない場合でも、サイドローディングや代替アプリマーケットプレイス、代替決済システムを許可するよう求めていると指摘。Appleは「偽のバンキングアプリを通じた詐欺行為や、ゲームに偽装したマルウェアなどのリスクにEU域内のユーザーがさらされる可能性が高まる」と警告している。

プライバシーへの脅威

さらに深刻なのがプライバシーへの脅威だ。DMAは他社がApple製品のユーザーデータや中核技術へのアクセスをリクエストすることを認めており、Appleはほぼすべてのリクエストに応じるよう求められているという。現在、他社はユーザーの通知の完全な内容やWi-Fiネットワークの完全な履歴など、機密性の高いデータへのアクセスをリクエストしている。Appleはこれらのリスクを欧州委員会に説明しているが、「プライバシーとセキュリティに関する懸念はリクエストを拒否する有効な理由として認められていない」と述べている。

残された主要な争点

Appleはすでにサードパーティ製アプリストアの許可という要求には応じている。残る主な争点は、代替アプリストアを通じてアプリを提供する開発者に対するAppleの扱いが不公正かどうかという点だ。

特にCore Technology Fee(中核技術利用料)が議論の中心となっている。DMAはまた、Appleが自社ハードウェア向けに提供する新機能を、サードパーティ製品にも同等に提供するよう求めているが、Appleはプライバシー上の重大な課題があると主張。これがEU内での一部新機能の提供遅延につながっている。

和解報道の真偽は不明

Financial Timesは関係者の話として、交渉はまだ続いており最終決定には至っていないものの、近く和解に至る可能性が高いと報じている。AppleとMetaは4月に合計7億ユーロ(約1,100億円)の罰金を科されており、和解が成立すれば日々の金銭的ペナルティを回避できるとされる。

しかし、Appleの公式声明を見る限り、和解に向けた前向きな姿勢は一切感じられない。むしろEUの要求を「法が求める範囲をはるかに超えている」と批判し、異議申し立てを行っている状況だ。Appleは公式ニュースルームでも「この法が日常的にApple製品を使うEU市民にどのような影響を与えているかを詳しく確認するよう、規制当局に要請している」と述べており、DMAの見直しや廃止を求める姿勢を明確にしている。水面下での交渉と公式姿勢の間に大きなギャップがあるのか、あるいは和解報道自体が実態と異なるのか、現時点では判断が難しい。

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執筆者g.O.R.i
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