TDK「TMRセンサー」がiPhoneカメラの秘密、Tim Cook氏も絶賛する日本技術の正体
Apple横浜テクノロジーセンター初公開でTDKが明かした、30年間の技術蓄積と競合他社が真似できない製造プロセス
AppleのCEOであるTim Cook氏が、来日中に横浜市綱島にあるApple横浜テクノロジーセンター(YTC)を訪問した。2017年に開設されたこの施設の一般公開は今回が初めてで、約6,000平方メートルのラボスペースとクリーンルームを備えた最先端の研究開発拠点の実態が明らかになった。
同日、YTCではAppleのイノベーションを支える日本を代表する4社—TDK、AGC、京セラ、ソニーセミコンダクタソリューションズ—によるプレゼンテーションが実施された。Tim Cook氏は記者団に対し「Appleは決して現状に満足しません。もっとよいものを求め続ける。そして、これは日本企業も同じです。決して満足せず、常にさらに先を目指して開発を続ける」と語り、日本企業との協業関係の重要性を強調した。
30年以上続くTDKとAppleの深いパートナーシップ
TDKとAppleの提携は初代iPod以前から始まっており、既に30年以上の長期にわたる関係を築いている。現在では、ほぼすべてのApple製品にTDKの技術が採用されており、電池、パスフィルター、インダクタ、マイク、各種センサーなど幅広い分野で貢献している。
注目すべきは、TDKがApple製品向けに製造するすべての製品において、100%再生可能エネルギーを使用している点だ。普段何気なく使っているiPhoneの美しい写真撮影やスムーズなオートフォーカスの背景には、TDKが開発したTMRセンサーという超小型部品が、実はすべてのiPhoneユーザーが恩恵を受けている技術として機能している。
身近すぎて気づかない「超精密な位置検出技術」
TMRセンサーとは「Tunnel Magnetoresistance(トンネル磁気抵抗)センサー」の略で、磁界の変化を極めて高感度で検知する超小型センサーだ。その小ささはワイングラス1杯に5万個も入るほどで、肉眼ではほとんど見えないサイズを実現している。
このセンサーの動作原理は、量子力学的な現象を応用している。簡単に説明すると、極薄の絶縁体を2枚の磁性体で挟んだ構造で、外部の磁界の変化によって電気抵抗が劇的に変化する仕組みだ。従来のホール素子と比べてTMRセンサーの感度は約100倍にも達し、「0か1か」といった極端にはっきりとした反応を示すのが特徴となっている。
iPhoneカメラの「瞬時ピント合わせ」を支える仕組み
iPhoneでカメラアプリを起動し、被写体にレンズを向けた瞬間に自動的にピントが合う体験は、多くのユーザーが日常的に感じている「当たり前」だろう。しかしこの背景では、TMRセンサーがレンズの位置を1000分の1秒単位で正確に把握している。
具体的な仕組みは以下の通りだ。レンズが前後に動く際、レンズと一緒に小さな磁石が動く。TMRセンサーはこの磁石との距離変化を磁界の変化として検知し、レンズが今どの位置にあるかを瞬時に把握する。「距離を測る」のではなく「位置を検出する」ことで、カメラシステムは適切なフォーカス調整を行っている。
iPhone Xから始まった技術進化
iPhone Xで初めてオートフォーカス用途に採用されたTMRセンサーは、iPhone 12シリーズからはセンサーシフト式手ブレ補正(OIS)にも応用されている。手ブレによる微細な動きも瞬時に検知し、センサー自体を動かして補正する高度な制御を実現している。
最新のiPhone 17シリーズでは、フロントカメラのCenter Stage機能にもTMRセンサーが活用されており、一般的なホール素子に比べ100倍の感度でレンズの微細な動きをリアルタイムで検出している。
ゲームコントローラーで体感する性能差
TMRセンサーの性能を理解しやすい例として、ゲームコントローラーのジョイスティックがある。従来のジョイスティックには「ポテンションメーター」という機械式の部品が使われており、物理的な接触によって角度を検知していた。
一方、TMRセンサーを使ったジョイスティックは非接触で動作するため、応答速度と精度が格段に向上する。また、機械的な摩耗がないため、長期間使用しても精度が劣化しない耐久性も実現している。
他社が真似できない「90年間の技術蓄積」
TMRセンサーの構造自体は、競合他社が分解すれば理解できる。しかし実際に同等の製品を作ることは極めて困難だ。その理由は、TDKが持つ独自の製造プロセス技術にある。
製造には半導体系の装置が使われるが、重要なのは装置そのものではない。TMR成膜、磁性材料めっき、ドライエッチングといった複数の専門技術を組み合わせ、どの方向から磁界を感知し、どの方向からは感知しないかという独自の層構造を作り上げるプロセスが核心となっている。
薄型デバイス時代の磁気干渉対策
現代のスマートフォンは薄型化が進み、内部に多数の磁石が使用されている。この環境で繊細なTMRセンサーが正常に動作するのか、という懸念もあるだろう。
TDKは顧客の設計段階から密接に協力し、最適なセンサー配置と設計を提案している。物理的な距離を1cm確保するだけで磁界の影響は急激に弱まるため、適切な設計により干渉問題は解決可能だ。年間14回ものクパチーノ訪問を行い、Appleのカメラチームと綿密に連携している実績もその証拠といえる。
日本の精密技術が支えるiPhoneの未来
TDKは90年にわたる磁性材料の専門知識を活かし、このプロセス技術を確立した。日本の浅間テクノ工場で製造されているTMRセンサーは、100%再生可能エネルギーを使用した持続可能な製造体制も実現している。
iPhoneユーザーが何気なく撮影している1枚1枚の写真の背景には、このような日本の精密技術と長年の技術蓄積が結実している。TMRセンサーは決して目立つ部品ではないが、現代のスマートフォン体験を支える重要な技術として、今後さらなる進化を遂げていくだろう。
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