iPhone X レビュー
Touch ID から Face ID へ "スマホの未来" の第1歩
Appleは初代iPhoneから10年続いた、象徴的存在であるホームボタンを捨てた。それが「iPhone X」。Appleいわく、”スマホの未来” だ。
多くの人が望んでいた4年振りとなる大幅刷新モデルだからこそ、僕らはその “スマホの未来” に適応しなければならない。
ホームボタンの代わりに新しいジェスチャーや操作方法が加わった。指を置くだけで認証が完了する「Touch ID」も手間ではなかったが、iPhoneを握って画面を見るだけで認証が完了する「Face ID」の登場により、「認証する」という概念がさらに薄まった。
実際に「iPhone X」はどうなのか。「Face ID」の認証精度や使い勝手、iPhoneとして初の有機EL「Super Retina HD」ディスプレイの見やすさ、ベゼルレスの操作性、そして進化したカメラ性能。
10周年を飾るモデルに相応しい「iPhone X」の魅力、欠点、そして「iPhone 8」「iPhone 8 Plus」との違いなどについて細かく書いたので、購入を検討している人は参考にどうぞ!「iPhone X」の後継モデルである「iPhone XS」のレビュー記事が読みたい人はこちらからどうぞ!
デザイン:ステンレススチールフレームが美しい、新しい筐体
4年ぶりに刷新された「iPhone X」のデザインは、基本的には「iPhone 6」からのデザインを踏襲していると言える。カメラを無視すれば、iPhone 8に見えなくもない。
ステンレススチールフレームは高級感があり、僕が初めて手にした「iPhone 3G」を思い出す。傷つきやすく、指紋も目立つが、傷が気にする人はケースに入れ、ケースに入れない人は傷を気にしないはず。大事なのは、このフレームのお陰で「iPhone 8/8 Plus」にはなかった高級感が生まれ、大変美しい、ということ。
また特徴的なのは、縦並びになったデュアルレンズカメラと、大きくなったサイドボタン。
デュアルレンズカメラは縦並びになっただけではなく、大きくなった上に突起が目立つように。突起は無いことに越したことは無いが、僕の中では一周回って芸術的存在ではないかと思えるようになってきた。
ただ、机の上に置くとiPhone 8やiPhone 8 Plus以上にガタガタ揺れるので、どうにかして欲しい。Jony Ive氏は机の上に置いてiPhoneを使うことを全く想定していないのかな。
サイドボタンの大型化は、恐らくホームボタンが廃止されたことに伴い、いくつかの機能が割り当てられたため、より押しやすく、音量ボタンとは異なる存在であることを明確にするために大きくしたと考えられる。
筐体のサイズはiPhone 8より大きく、iPhone 8 Plusより小さい。どちらかと言うとiPhone 8寄りのサイズとなっているため、5.5インチモデルから移行するとその握りやすさに驚くはず。
もちろん、タイトなジーンズには余裕でねじ込める。
バックパネルは年々簡素化され、今となってはAppleロゴと「iPhone」の文字しかない。シンプル・イズ・ベスト。
ディスプレイ側のデザインといえば、ホームボタンが廃止されベゼルレスになったこと。コンテンツへの没入しやすく、ARに本腰を入れるタイミングで発表するフラグシップモデルをベゼルレスにしたのは大正解だ。
とは言え、完全なベゼルレスではない。ディスプレイの特徴として、TrueDepthカメラに必要とする各種センサーを収めた「センサーハウジング」と呼ばれている切り込みが用意されている。
これをとにかく否定したがる人も見受けられるが、いざ使い始めると数分でその存在を忘れる。それもそのはず、ステータスバーを見ながら画面の操作なんてほとんどしない。必要な情報は左右のいずれかにいつもあった。
非常にポジティブに考えると、これは「iPhone X」のデザインの一環なのかもしれない。近年のスマートフォンはベゼルレスデザインを採用する傾向にあるが、この凹型のディスプレイだからこそ、ひと目で「iPhone X」だと分かる。要は、個性だ。
ディスプレイ:「ベゼルレス x Super Retina」という最強タッグ
「iPhone X」はiPhoneとして初めて有機ELディスプレイを採用。解像度は458ppiでiPhone史上最高。もちろん、True Toneにも対応している。
iPhone 8 Plusから移行しても「iPhone X」のディスプレイは段違いに美しいことは一目瞭然だ。
例えば、ブラウザを見ていると、ガラスの下に文字があるのではなく、まるで文字がディスプレイに張り付いているように思えてくる。「iPhone X」のコントラスト比(最も明るい色と最も暗い色の差)は1,000,000:1。参考としてiPhone 8 Plusは1,300:1なので、あらゆるコンテンツにメリハリが生まれるのは当然のことかもしれない。
加えて、5.8インチのディスプレイをフルに活かすように最適化されていれば、とてつもなく気持ちが良い。思わずこのレビュー記事のような長い記事をあえて「iPhone X」で読みたくなる。
ところで、「iPhone X」のディスプレイサイズは5.8インチではあるものの、実際はiPhone 8 Plusより大きいディスプレイではない。iPhone 8が縦に伸びたディスプレイ、という表現が正しい。
「5.5インチモデル以上のディスプレイを持つ4.7インチサイズのiPhone」ではなく、「4.7インチモデルが少し縦に伸びたベゼルレスiPhone」なのだ。
iPhone X | iPhone 8 | iPhone 8 Plus | |
---|---|---|---|
アスペクト比 | 2.17:1 | 16:9 | 16:9 |
ディスプレイサイズ | 5.85インチ | 4.7インチ | 5.5インチ |
解像度 | 1125 x 2436 ピクセル | 750 x 1334 ピクセル | 1080 x 1920 ピクセル |
実質解像度 | 375 x 812 ポイント (@3x) |
375 x 667 ポイント (@2x) |
414 x 736 ポイント (@3x) |
比率 | 82% | 65.7% | 68.2% |
ピクセル密度 | 458 ppi | 326 ppi | 401 ppi |
要は、「iPhone 5」から「iPhone 6/6 Plus」のようなサイズアップではなく、どちらかと言うと「iPhone 4S」から「iPhone 5」へのアップデートに近い。
そのため、長い画面サイズを活かすようにキーボードも一部配置が変更。キーパッドの下に地球儀アイコンが移動している。
既存アプリ、ホーム画面を「iPhone X」と「iPhone 8/8 Plus」で比較
実際に既存アプリやホーム画面は「iPhone X」と「iPhone 8/8 Plus」ではどのように変わるのか。
ホーム画面はいずれもDockを除いて6 × 4個のアプリを表示することができる。分かりづらいかもしれないが、「iPhone X」はiPhone 8と同じ横幅のため、iPhone 8 Plusと比較すると少しホーム画面が窮屈に感じる。
Safariを表示すると縦に長いお陰でiPhone 8 Plusよりも多くの記事数を一度に表示することとができている。TwitterやInstagramも同様に、縦に長い分、一度に見ることができるコンテンツ量が多い。
一方、出たばかりの「iPhone X」に対応できていないアプリも多い。「iPhone 6」が登場後、なかなか大画面に対応しなかったデベロッパーも多かったことから、「iPhone X」でも移行には時間が掛かると想定される。
意外にもビッグネームも対応は遅く、GoogleやMicrosoftなどのアプリは暫くの間、「iPhone X」の大画面を活かすことができない可能性がある。
僕が使用している「Spotify」も記事執筆時点では未対応。上下に黒い帯が表示されてしまい、横幅がiPhone 8と同じであることから、未対応アプリを開くと実質「iPhone X」がiPhone 8に戻ってしまう。
過去に5.5インチモデルから4.7インチモデルへの移行に失敗した身としては、損をした気分になる。
動画視聴時のセンサーハウジングは邪魔、動画も大画面を活かせず
「iPhone 8/8 Plus」のアスペクト比は16:9だが、「iPhone X」は2.17:1という縦長の比率になっている。そのため、16:9の動画を再生しても「iPhone X」のディスプレイを活かすことができず、左右に黒い帯が表示されてしまい、これもまたiPhone 8と同じ大きさに。
アプリが対応していれば動画を拡大して再生することもできるが、その場合、センサーハウジングで一部隠れてしまう他、上下も見切れてしまう。実際、YouTubeで拡大した状態で再生してみたが、上下が見切れることによって見えない字幕などがあり、不便だ。
「iPhone X」は動画視聴には向かない。特にiPhone 8 Plusなど5.5インチモデル出身の人はむしろ画面が狭く感じ、物足りなく思えるかもしれない。
次のページでは、ホームボタンが廃止されたことによって導入された新しいジェスチャー操作、そして「Touch ID」の代わりに登場した「Face ID」の実力について紹介する!