Apple、5億ドル投資でレアアース磁石を米国調達へ。MP Materialsと史上初の大型契約
テキサス州にApple専用製造ライン新設、カリフォルニア州にリサイクル施設も建設
Appleが5億ドル(約750億円)を投じて、米国のレアアース企業MP Materialsと新たなパートナーシップを締結したことが発表された。この取り組みにより、Appleは米国産のレアアース磁石を調達し、カリフォルニア州にリサイクル施設を新設する計画だ。
同社は今回の投資により、テキサス州フォートワースにあるMP Materials社の「Independence」工場から、Apple製品専用に設計されたレアアース磁石の調達を開始する。さらに両社はカリフォルニア州マウンテンパスに、使用済み電子機器からレアアース素材を回収・再利用する最先端のリサイクル施設を共同で建設する。
アメリカ国内で完結するサプライチェーン構築
MP Materialsは現在、米国唯一の完全統合型レアアース生産企業として知られている。CNBCの報道によると、この契約により2027年からMP Materialsが磁石の出荷を開始し、Appleは事前に2億ドルを支払う仕組みとなっている。
テキサス州の工場では、Apple製品向けに特別に設計されたネオジム磁石の製造ラインが複数新設される予定だ。この拡張により、MP Materialsは全体的な生産能力を大幅に向上させることができる。完成後、米国製の磁石は全米および世界中に出荷され、増加する世界的な需要に応える。
5年間の実証実験を経て本格展開
カリフォルニア州マウンテンパスに建設されるリサイクル施設では、使用済み電子機器や産業廃棄物から回収したレアアース素材を、Apple製品用に再処理する。両社は約5年間にわたって先進的なリサイクル技術の実証実験を行っており、リサイクルされたレアアース磁石がAppleの厳格な性能・品質基準を満たすことを確認している。
Appleは2019年にiPhone 11のTaptic Engineで初めてリサイクルレアアース素材を採用し、現在ではほぼすべてのApple製品の磁石が100%リサイクル素材で作られている。Fortune誌の分析によると、この取り組みは地政学的なリスクヘッジとしても機能し、中国が約90%を支配するレアアース市場への依存を軽減する狙いがある。
トランプ政権下での国内回帰戦略
- 今回の投資は、Appleが発表した4年間で5000億ドルの米国投資計画の一環
- 製造・研究開発分野で数十の新規雇用創出を予定
- 両社が共同で人材育成プログラムを提供し、米国内の磁石製造専門人材を育成
CNNの報道によると、この動きはトランプ大統領からの国内製造回帰要求とも合致している。レアアース素材はスマートフォンからテレビ、軍事機器まで幅広い製品に不可欠で、米中貿易摩擦の重要な論点となっている。
ティム・クック最高経営責任者(CEO)は今回の発表について「米国産業の発展と、重要な素材の国内供給体制強化につながる」とコメントしている。MP Materialsの株価は23%上昇し、市場からも高い評価を得ている。
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