Apple、チップ材料不足で”日本政府に直談判”か。AI需要でiPhone・Mac生産に影響の恐れ
日東紡績ほぼ独占の高級ガラスクロスが争奪戦に、NvidiaやGoogleも殺到

Appleが2026年以降の製品向けチップの生産で深刻な材料不足に直面している。Nikkei Asiaが報じた。問題の核心にあるのは「高級ガラスクロスファイバー」という聞き慣れない素材で、AI需要の急拡大により世界的な争奪戦が起きている。
これは単なるAppleだけの問題ではない。先日報じたように、Appleは「iPhone 17」シリーズ向けメモリでSamsungへの依存度を約70%まで高めざるを得なくなったと報じられている。今回のガラスクロス不足も含め、テック業界全体がサプライチェーンの”綱渡り”を強いられている状況が浮き彫りになっている。
「ガラスクロスファイバー」って何?なぜ重要なのか
まず「ガラスクロスファイバー」が何なのか、簡単に説明しておきたい。これはチップの基板に使われる素材で、建物における鉄筋のような役割を果たしている。プリント基板やチップ基板の内部に埋め込まれ、構造全体を支える骨格となる。
重要なのは、この素材が一度組み立てられると修理も交換も不可能という点だ。だからこそ、各ガラス繊維は極めて薄く、均一で、欠陥がないことが求められる。品質基準を満たさないガラスクロスを使えば、チップ全体が不良品になってしまう。
この最先端の高級ガラスクロスを生産できるのが、日東紡績(Nittobo)ほぼ1社だけという状況だ。まさに「特定の店でしか買えない希少な材料」のような存在で、Appleは数年前からAI処理が登場する以前に同社の高級ガラスクロスを採用していた。
AI需要で”材料の奪い合い”が激化
ところが状況は一変した。AIワークロードの拡大に伴い、Nvidia、Google、Amazon、AMD、Qualcommなどの企業が同じ供給源に殺到している。日東紡績の限られた生産能力に前例のない圧力がかかっており、Appleは自社製品向けの材料確保に苦戦しているのだ。
これはメモリ高騰と全く同じ構造だ。SK HynixとMicronがAI向けHBM(高帯域幅メモリ)の生産に製造キャパシティを振り向けた結果、モバイル向けメモリが不足し、AppleはSamsungに約70%も依存せざるを得なくなった。今回のガラスクロスでも、AI企業が大量に買い占めたことで、iPhoneやMac向けの材料確保が困難になっている。
Appleが異例の”政府に直談判”
供給網を守るため、Appleは異例の措置を講じている。同社は2025年秋にスタッフを日本に派遣し、日東紡績のガラスクロスを使用する基板材料メーカーの三菱ガス化学に常駐させた。さらに日本政府関係者にも接触し、供給確保の支援を求めたという。
これがどれだけ異例かというと、通常Appleはサプライヤーとの交渉を徹底的に秘密にする企業だ。そのAppleが政府に直接支援を求めるというのは、状況の深刻さを物語っている。iPhoneやMacの生産に直接影響するレベルの危機感があるのだろう。
代替サプライヤー探しも難航
Appleは代替サプライヤーの認定作業も進めているが、進捗は遅れている。中国の小規模ガラス繊維メーカー、Grace Fabric Technologyなどと交渉を開始し、三菱ガス化学に品質改善の監督を依頼した。台湾や中国の他の潜在的な参入企業も生産規模の拡大を試みているが、業界関係者によると、必要なレベルで一貫した品質を実現することは依然として困難だという。
Appleは低グレードのガラスクロスを暫定的に使用する案も検討したが、実現には広範なテストと検証が必要で、2026年製品の供給制約を大幅に緩和することはできないという。主要なチップメーカーは一時的であっても低品質の材料を採用することに消極的で、同様の懸念は業界全体に影響を及ぼしている。
僕も”駆け込み購入”した一人です(余談)
実は余談だが、僕自身もこのサプライチェーン問題を目の当たりにして、年始にMacBook Proを”ほぼ全盛り”で購入してしまった。以前の記事で散々悩んでいたM4 Max 128GB、4TB構成を、Appleの初売りで買ってしまったのだ。
メモリ価格が2025年9月から12月にかけて約2.8倍に値上がりし、市場全体では2〜4倍に跳ね上がったケースも報告されている。Appleの長期供給契約が2025年末に期限切れを迎え、2026年1月からメモリ価格が引き上げられるという情報もあった。「今買わないと、今後さらに高くなる」という危機感が、92万円超えの決断を後押ししたわけだ。
テック業界全体の”綱渡り”が続く
今回のガラスクロス不足は、AI需要が引き起こしたサプライチェーン危機の一例に過ぎない。メモリ、ストレージ、そして今回の基板材料と、あらゆる部品で争奪戦が起きている。特に問題なのは、供給が特定企業に集中しているケースが多く、代替調達が極めて困難だという点だ。
SK Hynixの内部分析では、DRAM供給の逼迫は2028年まで続くと予想されている。ガラスクロスについても同様の見通しが示されており、少なくとも今後2〜3年は”材料不足の時代”が続くと考えられる。Appleをはじめとするテック企業は、この厳しい環境下で製品開発と生産を続けなければならない。
消費者としては、今後の新製品が値上げされたり、発売が遅れたりする可能性を覚悟しておく必要がありそうだ。
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