【レビュー】MagSafeバッテリーパック:中途半端で期待外れ
Anker PowerCore Magnetic 5000のほうが断然おすすめ、今秋に登場予定の7.5Wモデル待つのもアリ
「これはイマイチだな」と思いながら買い、想像以上にイマイチで絶句した製品を久しぶりに買ってしまった。Apple純正の「MagSafeバッテリーパック」は、2021年の「買って後悔・失敗したものランキング」のトップランカーは確実だ。
なぜイマイチなのか。サードパーティ製品と出力は変わらず、容量が少なく、価格が高く、挙動がわかりづらく安定しない。Apple純正品としての強みをほとんど活かせていないのだ。買わない理由を探している人は、参考にしてもらいたい。
なぜイマイチなのか語らせてもらおう
挙動が安定しない
バッテリーパックは、挙動が不安定だ。満充電された状態で電池残量30%のiPhone 12 Proに貼り付けてみたところ、充電を認識しているのにも関わらずiPhoneの電池を先に消費。
気づいたら電池残量が20%を切り、低電力モードへの切り替えを提案するポップアップが表示されてしまった。
一度MagSafeバッテリーパックを外し、iPhoneを再起動。再度貼り付け、動作を確認した。
満充電されたバッテリーパックは、iPhone 12 Proを18%から67%まで回復させることに成功。かかった時間は3時間。本体はじんわりと発熱していた。
「モバイルバッテリー」としての使い勝手が悪すぎる
出力が低すぎる問題
バッテリーパックは、「モバイルバッテリー」ではなく「充電機能付きバッテリー拡張」だ。「限られた時間でiPhoneの電池残量を回復させる」という思想に基づいて開発されていないためか、出力が異常なまでに低い。
最大出力は5Wとされているが、同じ端末をAnker PowerCore Magnetic 5000と比べて充電しても、MagSafeバッテリーパックのほうが充電にかかる時間が長い。
iPhoneを90%に保つ仕様がデフォルト
フル充電されたiPhoneとバッテリーパックを取り付けた状態で使用開始すると、まずはiPhoneのバッテリーを90%まで消費。その後90%を保つように、MagSafeバッテリーパックから給電する仕組みになっている。
バッテリーパックの電池残量は減っているが、iPhoneの電池残量は90%前後をキープ
モバイルバッテリーとして捉えている場合、iPhone本体のバッテリーが消費されることに強い違和感を抱くだろう。
デフォルトでiPhoneが100%充電にならない
「90%を超えるまで充電」をタップしなければ100%まで充電できない
モバイルバッテリーは、iPhoneの電池残量が回復すれば取り外すだろう。バッテリーパックは、iPhone本体のバッテリー保護機能により90%で止まる設定になっている。
ポケット内の刺激には耐えられない(ずれる)
Smart Battery Caseに代わるアクセサリだとすれば、iPhoneから簡単に外れてはならない。内蔵マグネットはAnker製品に比べて強いが、それでもポケットの中に入れているうちにずれてしまう。
MagSafe充電器として使える?いや、全然使えない
バッテリーパックは、Lightningケーブルと高出力アダプタの組み合わせでMagSafe充電器になるとAppleは説明している。20Wの充電器で試したところ、バッテリーパックが満充電になっていない限り15Wの出力は確認できなかった。
次に61Wの充電器を使用し、満充電の状態でiPhoneを充電してみたが15Wとは程遠く、出力は6W前後を推移。MagSafeデュアル充電パッドやMagSafe充電器は1時間で45〜48%回復したが、バッテリーパック経由では31%しか回復しなかった。
バッテリーパックの充電中にiPhoneを充電した場合、なぜかiPhoneのバッテリーが消費される謎仕様も確認した。
約1時間の充電でバッテリーパックは14%から80%まで回復。しかしiPhone 12 Proのバッテリーは61%から55%まで減ってしまった。
バッテリーパックがワイヤレス充電に対応しない
ワイヤレス充電に対応して以来、有線による充電は急ぎでない限り使わなくなった。デスクの上ではMagSafe、寝室やリビングなど急ぐではないが充電しておきたいときは通常のワイヤレス充電台の上に放置している。
バッテリーパックは、Lightningケーブルで充電しなければならない。ワイヤレス充電を中心とした生活において、地味に不便だ。
バッテリー容量が少ない
バッテリーパックのバッテリー容量は、11.13Wh。Anker製品は18.5Whとなっており、約6割程度の電池容量しかない。容量が少ない割に、重量差はわずか20gだ。
良い点を絞り出そう
スマートバッテリーケースの代わりとしては優秀
不満がで続けるバッテリーパックだが、スマートバッテリーケースの代わりとしては想定どおり動作する。
iPhone 12 Proとバッテリーパックが満充電された状態で、1日使い倒してみた。偶然にも出先で作業する日だったため、1〜2時間のテザリング使用、1時間弱の動画視聴を行うなどiPhoneを使い倒したが、7時00分から18時40分頃まで、ほとんどバッテリーパックの電池のみで過ごせた。
発売当初は電池容量の少なさが指摘されていたが、実際に使ってみるとバッテリーの拡張としては十分。特にもともとバッテリー容量が少ないiPhone 12 miniユーザーは重宝しそうだ。
AirPodsを載せれば充電できる
バッテリーパックにAirPodsやMagSafe非対応のiPhoneやスマートフォンを置けば、ワイヤレス充電台になる。ただし出力は最大5Wとなっているため、使い勝手は良くない。
製品としての仕上がりは高い
製品としての仕上がりは、安定のAppleクオリティだ。MagSafeのマークはエンボス加工になっており、全体的にマット仕上がりで肌触りが良い。
Anker製品と比べても薄く作られており、手のひらに馴染みやすいように台形型のデザインが採用されている。
2台同時に充電できる(2本のケーブルを使用すれば)
バッテリーパックは、それぞれケーブルを用意すれば同時に充電できる。20W充電器とUSB-C to Lightningケーブルを2セット用意すれば、限られた時間でどちらの電池容量も回復できるだろう。
磁力が強い
Anker製品と比べて、iPhoneと強く貼り付く。とくに左右の動きは明確な違いがあり、ちょっとした振動でも外れない。
MagSafe対応ケースであれば使える
バッテリーパックが1つあれば、端末を買い替えてもMagSafe対応製品であれば使い回せる。またMagSafe対応ケースであれば貼り付けることで、”スマートバッテリーケース”になる点も見過ごせない。
電池残量がiPhoneから確認できる
純正品ならではの強みとして、iPhoneに貼り付けるとバッテリーウィジェットで電池残量が1%単位で確認できる。バッテリーパック本体で確認できないのは少し不便だが、LED表示よりも正確に把握できるのは良い。
MagSafeバッテリーパック レビュー:購入を正当化できない
MagSafeバッテリーパックは、Appleのスマートバッテリーケースに対する答えだ。充電が完了すれば外すのではなく、最初から貼り付けて使用することを前提としている。
製品としてのクオリティは高いが、11,800円の価値は正当化できない。Anker PowerCore Magnetic 5000と価格は2倍、容量は60%、充電スピードは変わらず、ワイヤレス充電以外の選択肢がない。特に「iPhoneへの給電は可能な限り短時間で済ませたい」を考えている僕としては、iPhoneの一部のようにして貼り付けたまま使用することを前提としたMagSafeバッテリーパックは合わない。
MagSafe充電器としての機能も期待外れで、バッテリーパックの充電はいちいち不便だ。ほとんど使用していないLightningケーブルを用意するのも面倒に感じる。
MagSafeバッテリーパック | Anker PowerCore Magnetic 5000 | |
---|---|---|
バッテリー容量 | 11.13Wh | 18.5Wh |
ワイヤレス充電時の出力 | 5W | 5W |
有線充電 | × | 最大10W |
充電端子 | Lightning | USB-C |
価格 | 11,800円 | 3,990円 |
MagSafeを使用したモバイルバッテリーが必要であれば、Anker PowerCore Magnetic 5000のほうが断然おすすめだ。とくに急ぎではない場合は、今年9月発表が予定されている後継モデル「PowerCore Magnetic 5000 7.5W」を待ったほうがいいだろう。
本文中でも言われてた、「モバイルバッテリーではなくバッテリー拡張だ」は、まさに言い得て妙だと思います。
Apple自身もモバイルバッテリーではなくスマートバッテリーケースの延長、みたいな位置づけなのかもしれませんね…。
挙動に関してはアップデートで改善があればいいんですけどね。ただ、スマートバッテリーケースもたまに充電の挙動がおかしな時があります。
めっちゃ良い質問ですね!でも全く同じ仕様ならケースかなあ。サクッと充電して必要なくなったら外す、みたいな使い方したかったのになー。
>スマートバッテリーケースの代わりとしては優秀
とのことですがもし12シリーズ用のスマートバッテリーケースも発売されたらどちらを選びますか?
しかしApple純正なのに挙動が悪いってキツイですね…
そうそう、しかもAppleロゴの位置がiPhoneとマッチしている点も地味ながらAppleらしいですよねw
全然好きであることに罪はないですし、そのようなユーザーにとっては全然だと思っていますよ!!そのために良いところもしっかりと書きましたので!あくまでも僕の立場からして「合わない」という評価ですので、ご安心を!
おっしゃるとおり、バッテリーの寿命や長く使い続けることに対して、Appleはものすごく力を入れていますからね。その思想が色濃く反映された製品でもあると感じています。
クソ味噌な言われようだけど、スマートバッテリーケースユーザーとしてはやっぱり欲しいw iPhoneで残量を細かく確認できる快適さは捨てがたい。
iPhoneのバッテリー寿命を気にして、熱の発生に極端にシビアなんでしょうねぇ。
数値上のスペックも微妙でしたけど、想像以上に微妙ですね
充電を90%に保つ仕様がデフォルトっていうのはApple側も容量が少なすぎることを自覚していて苦肉の策って感じですね
メリットの1つは、背面に貼り付けても林檎マークが見えることとかw