Tim Cook氏「このプロセスを見たい」と感嘆、京セラの”見えない魔法”がiPhone 17を支える
横浜で初公開された驚異の製造工程、1,600°Cで焼成される15年間の技術革新
AppleのCEOであるTim Cook氏がAppleの横浜テクノロジーセンター(YTC)を初公開という歴史的な瞬間に訪問し、iPhone 17シリーズのカメラ技術について「日本の技術なしには実現できない」と語った。これまでベールに包まれていた同施設で行われたのは、日本を代表する4社によるプレゼンテーション。その1社である京セラのセラミック基板技術が、iPhoneの革新を支える重要な役割を担っていることが明らかになった。
謎に包まれていた横浜テクノロジーセンターが初公開
2017年に開設されたYTCは、約6,000平方メートルのラボスペースを持つ最先端研究開発施設だ。数百名の従業員(主に日本人開発者)が常駐し、カメラレンズの技術を中心とした光学技術の研究開発を行っている。故安倍元首相も誘致に関わった「アジア最大級の研究開発施設」として位置付けられながら、これまで厳格な秘密保持により詳細は公開されてこなかった。
YTCの最大の特徴は「言われたことだけをやるのではなく、自発的に開発している」点にある。日本語でのコミュニケーションが可能なため、日本のサプライヤーとの高速な開発ループを実現し、素材開発からテストまでを日本国内で完結できる体制を構築している。
iPhone 17カメラシステムを支える特別なプレゼンテーション
Tim Cook氏の訪問に合わせ、iPhone 17シリーズおよびiPhone Airのカメラシステムにおいて重要な役割を担う日本企業4社の社長が勢揃いした。TDK、AGC、京セラ、ソニーグループが技術プレゼンテーションを実施し、Cook氏は「日本のサプライヤーが持つ技術なくして、我々が提供するカメラシステムは実現できない」と明言している。
複数のサプライヤーを招いた共同プレゼンテーションの開催は今回が初めてのことで、各社が提供する技術はいずれも他社では代替不可能な独占供給部品となっている。
京セラのセラミック基板技術がiPhoneを支える
4社プレゼンテーションで明かされた京セラの役割
横浜テクノロジーセンターでの4社プレゼンテーションにおいて、京セラはセンサーを載せる多層セラミック基板の供給を担当することが明らかになった。谷本秀夫社長が登壇し、「ビアパンチングやキャビティホールなどの独自の構造を容易に製造でき、センサーの熱やノイズを極限まで抑えられることが競争力となっている」と説明した。
京セラとAppleの協業は2008年から始まった長期的なパートナーシップだ。2010年のiPhone 4では1つのセラミック基板しか使用されていなかったが、最新のiPhone 17 Pro/Pro Maxには6つの京セラ製セラミック基板が搭載される予定で、15年間で大幅な供給拡大を実現している。
セラミック基板って何?iPhoneの「見えない土台」の正体
セラミック基板を一言で説明するなら、iPhoneの中で電子部品を支える「床」のような存在だ。想像してみてほしい。家を建てる時、どんなに立派な柱や壁があっても、しっかりした基礎がなければ家は建たない。セラミック基板は、まさにiPhoneのカメラやセンサーにとっての「基礎」なのだ。
京セラの技術の最大の特徴は、紙を何枚も重ねるようにセラミックのシートを積み重ねることで、その内部に立体的な電気の通り道を作る技術だ。iPhone向け製品では、このシートがなんと11層も重ねられている。これは、11階建てのマンションのように、各階に異なる電気回路が配置されているイメージだ。
面白いのは、製造前のセラミックは「分厚い油取り紙のような感じ」と表現されるほど柔らかいこと。この状態で複雑な加工を施し、最終的に約1,600°Cという溶けた金属並みの高温で焼き固める。一度焼き上がると、ダイヤモンド並みに硬くなり、何年使っても劣化しない電子部品となる。
なぜセラミック?他の材料では作れない理由
「絶対に壊れない」が求められるiPhoneの世界
なぜAppleはセラミック基板を選ぶのか。答えは「他の材料では不可能なことができるから」だ。
従来の基板は有機材料(プラスチックのようなもの)で作られているが、これには致命的な弱点がある。湿気を吸ってしまうのだ。iPhoneを2年、3年と使い続けても問題が起こらないためには、湿気を一切吸わない材料が必要になる。セラミックは陶器と同じく無機物なので、水分を吸収せず、長期間安定している。
また、セラミック基板は「3D配線」という魔法のような技術を可能にする。通常の基板は表と裏にしか配線できないが、セラミックなら表、裏、さらに側面まで、あらゆる方向に電気の通り道を作れる。これは、立体パズルのように複雑な回路を小さなスペースに収める技術だ。
熱とノイズをシャットアウトする「見えないバリア」
セラミック基板のもう一つの超能力は、熱を逃がしながらノイズを遮断することだ。iPhoneのカメラが高性能になればなるほど、発生する熱も増える。セラミック基板は、まるで高性能なエアコンのように、この熱を素早く外に逃がしてくれる。
同時に、外部からの電気的なノイズ(電波の雑音のようなもの)をシールドし、カメラの繊細な動作を邪魔させない。これは、防音室の中で録音するような環境をiPhoneの中に作り出している技術なのだ。
1,600°Cの超高温が生み出す「奇跡の製造工程」
1枚に10,000個の穴!針の先ほどの精密加工
京セラの製造工程は、まさに現代の「匠の技」と呼べる精密さだ。柔らかいセラミックシートに、各層で数千から数万個もの微細な穴を開ける。この穴は、ビルの各階をつなぐエレベーターのような役割で、電気信号を上下に伝える重要な通路となる。
驚くべきは、1枚のシートに10,000個もの穴が開けられることだ。これは、1円玉の面積に約3,000個の穴を開けるほどの精密さ。人間の髪の毛よりもはるかに細い穴を、完璧な位置に開ける技術は、まさに職人芸の域に達している。
15%縮むセラミックを完璧に制御する技術
製造で最も難しいのは、約1,600°Cの「鉄を溶かすほどの高温」での焼成工程だ。この温度は、一般的な家庭用オーブンの約16倍に相当する。この高温処理により、セラミックは元のサイズから約15%も縮小する。
これは、A4用紙がハガキサイズになるほどの変化だ。この大幅な縮小を予測し、完成品が設計通りのサイズになるよう調整する技術は、まさに「魔法のような精密制御」と呼べるだろう。
指先に乗るコンデンサ:0.4mm×0.2mmの極小世界
セラミック技術の精密さを物語るエピソードがある。京セラは、0.4mm×0.2mmという米粒の100分の1ほどのサイズのコンデンサ(電気を蓄える部品)も製造している。これほど小さいため、「くしゃみをするだけで100万個ほどのコンデンサが失われる可能性がある」と語られるほどだ。
この極小部品も、基本的な製造技術はセラミック基板と同じ。100層、300層という「原稿用紙を300枚重ねたような」多層構造により、限られたスペースに大容量の電力を蓄える機能を実現している。僕たちが当たり前に使っているiPhoneの中には、こんな信じられないほど小さな部品が数百個も入っているのだ。
カメラ革命の陰の立役者
京セラのセラミック基板事業において、カメラモジュールへの応用が最大のビジネスとなっている。スマートフォンのカメラが年々高画質になり、センサーが大型化する中、それを支える基板も進化が求められている。Vision Proのように12個のカメラを搭載する製品にも対応しており、今後のAR/VRデバイスの発展にも重要な役割を果たすだろう。
Cook氏は横浜での取材で「日本は、カメラなど光学機器分野において歴史的に、そして現在においても、極めて重要な専門知識と技術がある」と語った。部品単体の品質だけでなく、それを可能にする研究者・技術者の集積こそが強みだということだ。
「決して満足しない」者同士の化学反応
Cook氏は日本企業との協業について「日本企業の精密さ、職人技、品質、そして配慮を深く敬服している」と語り、「1+1が3になる」という協業の力に言及した。「Appleは決して満足しない。実は日本も決して満足せず、常に次に向かって取り組んでいる」という共通点が、世界最高峰のカメラシステムを生み出している。
京セラは環境面でもAppleのパートナーとして重要な役割を担っている。Appleサプライヤークリーンエネルギープログラムに参加し、2025年末までにApple製品の製造に100%再生可能エネルギーを使用する目標に向けて順調に進んでいる。
創業者・稲盛和夫博士の「敬天愛人」の哲学と「人の心の絆に基づいた経営」は、2022年の逝去後も全社員に受け継がれている。この企業文化が、Appleとの長期的なパートナーシップを支える基盤となっているのだろう。iPhone 17シリーズの性能向上の背景には、こうした京セラの確かな技術力と企業哲学がある。僕たちが何気なく使っているiPhoneのカメラ機能の裏側には、まさに「見えない魔法」のような日本の製造技術が隠されているのだ。
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