【レビュー】Atlas FXR CFexpressカードリーダー:Thunderbolt接続で爆速転送
普段使用しているProGrade Digitalのカードリーダーと外観、転送速度などを比較してみた
僕のメインカメラはCanon EOS R3。メインの記録カードは、ProGrade DigitalのCFexpress Type B(650GB)。データが数十GBに及ぶことも少なくない、保育園の行事や仕事のイベントでの撮影は、バッファー容量だけではなく撮影データの転送速度を重要視している。
Thunderbolt周辺機器やアクセサリに定評のあるメーカーOWCより、Thunderbolt接続のCFexpressカードリーダー「OWC Atlas FXR」、CFexpress Type Bメモリーカード「OWC Atlas Ultra」が登場した。身近な友人が非純正カードリーダーを使ってデータを損失するトラブルに巻き込まれて以来、普段はProGrade Digitalのカードとカードリーダーを使用することを徹底してきた。他社メーカーを使用することに不安はあったが、メーカーよりそれぞれ提供してもらったので、性能を検証してみた。
安心感のある金属製筐体、ProGradeよりも高級感がある
ProGrade Digitalのカードリーダーに比べて、OWC Atlas FXRはスリムでコンパクト。作りの差は歴然。ProGrade製カードリーダーのように背面にマグネットが内蔵されておらず、バッグに入れる際に余計な心配をせずに済む。
カードリーダー本体以外に、USB-C to USB-Aのアダプターが付属したThunderboltケーブルが同梱されている。最新のMacBook Proを使っている限り、使う機会はないだろう。
ProGradeのダブルスロットカードリーダーと外観を比較
僕が普段持ち運んでいるカードリーダーは、ProGrade Digital CFexpress Type B/SDダブルスロットカードリーダー。SDカードとCFexpress Type Bカードを両方読み込める仕様だ。MacBook ProにはSDカードスロットがありSDカードリーダーは必須ではないが、万が一のことを考えると選択肢は1つでも多いほうが良い。
正方形に近いProGrade製カードリーダーに対し、OWC Atlas FXRは細長い。
当然ながらダブルスロットのProGradeに比べて、シングルスロットのOWCのほうが薄い。
Thunderbolt 3接続とUSB3.2 Gen2接続、転送速度の違いを検証
ProGrade Digitalで統一してきたカードとカードリーダーを、あえてOWC製に乗り換えるべきか。決断するには、実際の転送速度を計測する必要がある。
検証1:OWC Atlas Ultraカードで転送速度チェック
まずはOWC Atlas Ultra(165GB)を使用し、OWC Atlas FXRとProGrade Digital CFexpress Type B/SDダブルスロットカードリーダーによる転送速度を比較した。OWCカードリーダーは712枚のRAW+JPEG(7.43GB)を26秒で転送完了。ProGradeカードリーダーは35秒かかった。
使用カメラ | Canon EOS R3 |
使用カード | OWC Atlas Ultra(165GB) |
転送したファイル | RAW+JPEG(7.43GB) |
OWCカードリーダー(Thunderbolt) | 26秒でMacに転送完了 |
ProGradeカードリーダー(USB3.2 Gen2) | 35秒でMacに転送完了 |
検証2:ProGrade Digital COBALTカードで転送速度チェック
次にProGrade Digital COBALT(325GB)を使用し、同様の検証を実施。880枚のRAW+JPEG(9.66GB)の転送時間は、OWCカードリーダーが37秒、ProGradeカードリーダーが45秒かかった。
使用カメラ | Canon EOS R3 |
使用カード | ProGrade Digital COBALT(325GB) |
転送したファイル | 880枚のRAW+JPEG(9.66GB) |
OWCカードリーダー(Thunderbolt) | 37秒でMacに転送完了 |
ProGradeカードリーダー(USB3.2 Gen2) | 45秒でMacに転送完了 |
カードのメーカーに問わず、Thunderbolt接続のOWC Atlas FXRほうがデータの転送時間が30%前後早く完了した。
検証3:同じカードでディスクスピードを検証
Blackmagic Disk Speed Testアプリを使用し、ProGrade Digital COBALT(325GB)と撮影データを入れた状態で、ドライブの計測スピードを比較してみた。同じカードで異なるカードリーダーを使用して性能を比較するため、純粋にカードリーダーの転送速度性能を比べられるはずだ。
OWCカードリーダーは読み込み速度は1,467MB/s、書き込み速度は1,192MB/sだったが、ProGradeカードリーダーは703MB/sと824MB/sだった。Thunderbolt接続による恩恵は大きい。
メーカー | 接続方法 | WRITE 書き込み速度 |
READ 読み込み速度 |
---|---|---|---|
OWC | Thunderbolt | 1,192MB/s | 1,467MB/s |
ProGrade Digital | USB3.2Gen2 | 824MB/s | 703MB/s |
検証4:カード性能の違いをチェック
カードリーダーとは別に、レビュー用にOWC製のCFexpress Type Bカード「OWC Atlas Ultra(165GB)」も提供してもらった。主に写真撮影を使用するため、容量の違いはあるが、ProGrade Digital COBALT(325GB)とカードのバッファー容量(連続撮影枚数)を比較した。
Canon EOS R3で電子シャッターを使用したRAW+JPEGの最高速連写を試したところ、ProGrade COALTは880枚撮影できたが、OWC Atlas Ultraは712枚で撮影がストップ。時間にして24秒と16秒ほどの差だった。
OWC Atlas Ultra 165GB | ProGrade COBALT 325GB | |
---|---|---|
最大読込速度 | 1700MB/s | 1700MB/s |
最大書込速度 | 1500MB/s | 1500MB/s |
最低継続書込速度 | 1300MB/s | 1400MB/s |
連続撮影枚数 | 712枚(RAW+JPEG) | 880枚(RAW+JPEG) |
Atlas FXR CFexpressカードリーダーはアリなのか?
Thunderbolt接続のCFexpressカードリーダー「OWC Atlas FXR」はProGrade製カードリーダーに比べて転送速度は圧倒的に早い。CFexpress Type Bメモリーカード「OWC Atlas Ultra」はバッファー容量こそProGradeに劣るが、15秒以上連写する可能性は低く困ることはないだろう。
唯一の懸念は、Canon EOS R3の動作確認済みメモリーカードにOWC製カードが含まれていないことだ。OWC側はEOS R3の動作確認を主張しているが、Canon側の”お墨付き”がなければ安心して使いづらい。
データは失ってからでは遅い。趣味だろうと仕事だろうと、失って良いデータなんてものは存在しない。OWC Atlas FXRは、Thunderbolt接続カードリーダーとして高速転送を実現しており、大容量データの扱いに最適だ。記録カードとカードリーダーのメーカーが統一されていないことが気にならないのであれば、魅力的な製品であることは間違いない。特に動画データなど、数十GB、百数GBなどのデータを日常的に扱うのであれば、高速転送は効率アップに貢献するだろう。