12インチ型MacBookは未来を提示した、Apple渾身のネットブック
Retinaディスプレイを搭載した12インチ型MacBookがついに発表された。MacBook AirのRetinaディスプレイ搭載を期待していた人にとってはスペックにはガッカリした人も少なく無いだろう。
プロセッサーは「MacBook Air (Early 2014)」の90%程度のパフォーマンスしか出ないと予想されている「Core M」を搭載。RAMも8GBで拡張不可。ポートもUSB-Cの1つのみで拡張性は非常に悪い。
新しい12インチ型MacBookは一体誰に向けた、誰が買うべきMacなのだろうか。
これはあくまでも個人の意見だが、僕は12インチ型MacBookは「ネットブック」に対するAppleなりの答えではないか、という結論に至った。つまり、撮影した写真を取り込みLightroomで編集するような人や動画をAdobe Premiumでゴリゴリ編集するような人はそもそもこの新しい12インチ型MacBookのターゲットではない。
ただ、当然ながらこれまでの世の中に存在していたネットブックとは訳が違う。この12インチ型MacBookは新しいMacの未来を提示した、Apple渾身のデバイスだ。
その理由について説明する!
ネットブックと重なる12インチ型MacBook
【img via Netbooks de Conectar Igualdad by ANSESGOB】
一世を風靡したネットブック。プロセッサーには省電力のものを採用し、RAMは1GB程度、ストレージも数GB程度しかないものも多かった。OSはWindows機が多かったが、LinuxなどUnix系を採用しているものもあった。
性能は従来のノートPCに比べて劣っていたものの、より安価で持ち運びやすいことから注目を浴び、各PCメーカーから次々と発売された。当時はスマホで利用できる機能も限られていたため、メールの送受信や各種資料作成などビジネス用途として活用する人も多かった。
ネットブックの特徴を振り返ってみると、12インチ型MacBookはネットブックが担っていたの存在に限りなく近いような気がしてこないだろうか。
USB-Cポートのみという決断と、実は良心的な価格設定
ただし、12インチ型MacBookはネットブックのように低価格ではない。現行のMacBook Airよりも高価だが、性能は劣る。そして外部ポートがUSB-Cのみ。
なぜAppleはこのような製品として発表したのか、僕なりの考えを述べたいと思う。
USB-Cポート1つとLightningポート1つという共通点
恐らく最も衝撃的だったのは外部ポートがUSB-Cのみになったということ。そしてMacならではの技術としてMacBookに採用し続けてきたMagSafeが廃止されたこと。一体なぜAppleはこのようなことをしたのだろうか。
当時の「ネットブックユーザー」 ≒ 今の「パソコンを持たないiPhone/iPadユーザー」
【img via Microsoft Office for iPad. by MIKI Yoshihito (´・ω・)】
冒頭に12インチ型MacBookはネットブックに対するAppleなりの答えであると書いたが、今の時代、ネットブックを買う人と言うのは一体誰だろうか。
僕はiPhone(またはiPad)で無理矢理全てを完結させようとしている人達なのではないかと思っている。
今のiPhoneとiPadは非常に優秀だ。Macでなければできない作業も減りつつあるが、同じ作業でもMacの方が快適に行うことができることは未だに存在する。
12インチ型MacBookはそのような人をターゲットとしたデバイスであると考えている。つまり、MacBook AirやMacBook Proを使うほどではないが、iPhoneやiPadでは物足りない、という人が使うべきデバイスなのだ。
iPhoneやiPadに近い、モバイルデバイスとしての使い方を想定
【img via iPad mini by Janitors】
iPhoneやiPadで行っていたような作業をするためのデバイスだとすれば、使い方も似ていることが想定される。
実は、iPhoneやiPadに存在する外部ポートは12インチ型MacBookと全く同じだ。イヤフォンジャックの他、iOSデバイスはLightningポート、12インチ型MacBookはUSB-Cポートのみとなっている。
iPhoneとiPadを充電したまま使う人はほとんどいないだろう。基本的にポケットの中かカバンの中に入ったままで1日を過ごす。1日の終わりに充電するか、途中で電池がなくなった場合はモバイルバッテリーや電源か一時的に充電する程度だ。
12インチ型MacBookも同じような使い方になる。日頃からMacに向かっている人からすると常に電源は繋いだ状態でバリバリキーボードを叩いて作業することが当たり前だが、iPhoneやiPadはそうではない。むしろLightningケーブルを持ち運ぶことさえもしない。
1日1回充電するモバイルデバイス。それがAppleが想定している、新しい12インチ型MacBookの使い方なのかもしれない。
12インチ型MacBookの商品購入ページがiPhone/iPadとそっくり
実際、12インチ型MacBookの商品購入ページは他のMacと異なり、iPhoneとiPadと同じような商品購入ページになっている。以下、見比べてみるべし。
こちらが「iPhone 6」「iPhone 6 Plus」の商品購入ページ。
これは単なる偶然ではないはず。当然、Appleが意図してこのiPhoneとiPadに寄せたデザインを採用しているだろう。
初代MacBook Airに比べたら圧倒的に良心的な価格設定
ポートを削ぎ落したのも驚いたが、非常にアグレッシブな価格設定に対する反響も大きかった。以下に先日発表された最新の256GBモデルの価格を比較してみた。
– | MacBook | MacBook Air | |
---|---|---|---|
モデル | 12インチ | 11インチ | 13インチ |
価格 | 148,800 | 126,800円 | 136,800円 |
公式ページ | MacBookの詳細 | MacBook Airの詳細 |
こうして比べてみるとサイズの近い11インチモデルでも22,000円も安い。従来製品よりも高いモデルが「ネットブック」としてあり得るのか。
エントリーモデルだったMacBook Airも発売当時は高価だった
【img via IMG_8845 by Malabooboo】
12インチ型MacBookにその立場を奪われるまで、MacBookシリーズのエントリーモデルは間違いなくMacBook Airが担っていた。今でこそ10万円台前半で購入できるが、発売された当時はなんと20万円超え。初代MacBook Air(MB003J/A)は229,800円だったのだ!
1.6GHz Core 2 Duoプロセッサーを搭載し、RAMは2GB、HDDは4,200rpmの80GBしかないポンコツMacだったが、その1ヶ月後に発売された13インチ型「MacBook (Early 2008)」は最低でも(2.1GHz Core 2 Duoプロセッサーを搭載し、RAMは4GB、HDDは5,400rpmの120GBだった。
以下、初代MacBook Airと同時期に発表された「MacBook (Early 2008)」のスペックを表にまとめてみた。
MacBook Air (初代) |
MacBook (Early 2008) |
|
---|---|---|
CPU | 1.6GHz Core 2 Duo | 2.1GHz Core 2 Duo |
RAM | 2GB | 1GB |
ストレージ | 80GB 4,200rpm HDD |
120GB 5,400rpm HDD |
グラフィック | GMA X3100 | GMA X3100 |
価格 | 229,800円 | 129,800円 |
その価格差、なんと100,000円!今なら同じ価格で15インチ型「MacBook Pro Retina」が購入できる。
最新技術に対する対価、徐々に安くなる
それでも多くの人は初代MacBook Airを購入した。なぜなら、それまで存在していたMacが一瞬にして「重すぎる」と思えるほど薄く、軽くなったことが魅力的だったからだ。最新技術を駆使して創り出された極薄のMacに十分な価値を見出した人達がいたのだ。
12インチ型MacBookにも数々の最新技術が詰まっている。11インチモデルよりもさらに薄くなった筐体、どこを押しても一定の押し心地を実現するキーボード、物理的にクリックしない感圧式の新しいトラックパッド、消費電力も抑え史上最薄の新しいRetinaディスプレイ、段になったバッテリー構造と小型化されたロジックボード、そしてAppleが発明したとされるUSB-Cの採用。
今はまだMacBook Airを上回る価格だが、エントリーモデルである以上、今後価格が下がる可能性は高い。むしろ、現時点でこれほど革新的な新しいテクノロジーが取り入れられているのにも関わらず、従来のエントリーモデルとの価格差が2万円というのは非常に良心的であると言えるだろう。Retinaディスプレイのために2万円支払うと思えば全く高くない。
MacBookの新しい時代を切り開いた、Apple渾身のネットブック
Appleは極限まで削ぎ落とすことで新しい文化を作ってきた。フロッピーディスクドライブを削ったように、CD/DVDドライブを削ったように、Ethernetを削ったように。12インチ型MacBookではあらゆるポートを削り、光るロゴもなくし、ファンも取り除き、結果的に史上最もコンパクトなMacを生み出した。
初代MacBook Airが発売された当初、あまりにも色々と削りすぎて世間からは不安と批判の声が上がった。ただ、今や有線LANを使っている人はどれほどいるだろうか。新しいアプリや音楽をCDやDVDから入れる人はどれほどいるだろうか。その当時に比べて格段に減っているのは事実である。
その当時批判的だった人も、今やMacBook AirがメインのMacになっているかもしれない。
MacBook AirはMacBookシリーズをはじめ、ノートパソコン業界において大きな変化をもたらした。同じように、12インチ型MacBookを起点として今後MacBook AirやMacBook Pro、そしてMac以外のノートパソコン全般も進化するだろう。
個人的には僕の愛用する15インチ型「MacBook Pro Retina」がどのように進化するのかが楽しみだが、12インチ型MacBookそのものもとても気になっている。「iPad Air 2」並みの携帯性を持つ小型Macは1台持っていて損することは無さそうだ。
買おうかな……。
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