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Apple幹部が激白「DMA規制は競合他社への利益供与」——日本のスマホ新法にも警鐘

グレッグ氏が語る知的財産権「フリーライド」の実態と、イノベーション阻害の深刻な影響

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欧州のデジタル市場法(DMA)がApple製品に与える具体的な影響が、ユーザーレベルで明確になってきた。2024年WWDCで発表されたiPhoneミラーリングや、AirPods Pro 3向けのライブ翻訳機能が、EU諸国では提供されていない状況が続いている。そして9月19日、EU委員会がAppleの免除申請を却下したことで、状況はさらに深刻化している。日本でも、年末にはスマートフォンソフトウェア競争促進法(いわゆる「スマホ新法」)の施行が予定されており、同様の問題が生じる可能性が高まっている。

Appleのワールドワイドマーケティング上級副社長のGreg Joswiak(グレッグ・ジョズウィアック)氏は、この状況について厳しい見解を示している。同氏によると、「世界中の政府、特に欧州委員会は、Apple製品を再設計する権限を自らに与えようとしている」という。その目的は、ユーザーのために製品を良くすることではなく、「ごく一部の裕福な競合他社に利益をもたらすこと」であると主張している。

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グレッグ・ジョズウィアック氏 = Appleイベントよりキャプチャ

DMA規制によるApple機能への直接的影響

EU委員会が免除申請を全面却下

9月19日、EU委員会はAppleが提出していたOS機能アクセスに関する免除申請5件を全て却下した。却下された申請は、iOSの通知機能、近接ペアリング、ファイル転送手段、自動Wi-Fi接続、自動オーディオ切り替えの各技術を対象としている。これを受けてAppleは強い反発を示している。

Appleの公式声明によると、「欧州委員会の行為は、欧州のユーザーのプライバシーとセキュリティを損ない、ユーザーの皆様が愛用する高度に統合されたユーザー体験を脅かすものであり、さらにAppleに対して、自社の知的財産を競合他社に無償で提供することを強いるものです。欧州の規制当局は、ユーザーの皆様がこれまでに接続したWi-Fiネットワークの完全な履歴リストや、通知に含まれる機微な内容の暗号化を解除して第三者に提供することなど、重要な個人情報を引き渡すことを強制しています」と厳しく批判している。

機能提供の遅延と希薄化が現実に

DMAの影響は、もはや仮定の話ではなく現実の問題として表面化している。グレッグ氏は「ヨーロッパでは、これは仮定ではなく」機能が遅延、希薄化、あるいは「全く出荷されない」事態に直面していると明言した。

iPhoneミラーリングのEU非対応

具体的な例として、iPhoneミラーリング機能がEU諸国で利用できない状況が挙げられる。この機能は2024年のWWDCで初めて発表され、昨年秋から提供開始されたにも関わらず、「EUではまだ利用できません」という状況が続いている。

AirPods Pro 3のライブ翻訳機能

AirPods Pro 3向けのライブ翻訳機能も同様だ。この機能は、AirPodsとiPhoneがシームレスかつ強力に連携することで実現される。両デバイスのマイクからの音声が統合され、ユーザーのiPhone上でApple Intelligenceの力を使って翻訳される仕組みだ。しかし、Appleが設けるユーザーのプライバシー、セキュリティ、インテグリティに関する高い保護基準を満たすために必要な技術的対応を行わない限り、アプリに複数のマイクへのアクセスを許可するAPIを提供することはできないという。

日本の規制当局は、OS機能へのアクセス要求への対応について「おおむね6カ月から18カ月程度」、原則として「24カ月」を超えない期間での実装を想定している。しかし、Appleは配信メカニズムやサーバーインフラの大規模な再設計が必要であり、結果としてイノベーションの阻害や製品の発売遅延のリスクを生じさせると懸念を表明している。

技術統合とイノベーションへの構造的脅威

統合体験の破綻とエンジニアリングの複雑化

Appleは長年にわたり、ハードウェア、ソフトウェア、サービスがシームレスに連携する統合体験の提供に注力してきた。しかしDMAの要求により、「我々が持つ統合された機能はすべて、初日から他の人々の製品で同様にうまく機能しなければならない」という制約が課されている。

Appleによると、「欧州委員会の相互運用性要求は、今後EUにおいて、我々は第一日目から、我々のイノベーションを、場合によってはコピーすることを唯一のビジネスモデルにしている企業に引き渡さなければならないことを意味している」という。また、「これらの決定は、当局者、あるいは第三者が、iPhoneの将来の設計を事実上マイクロマネジメントすることにつながる」と警告している。

日本の規制案でも同様の「同等性能」の要求が盛り込まれており、指定事業者は自社が利用するOS機能について、他の事業者が「有意に劣ることがない」同等の性能で利用できるようにする義務が課される予定だ。対象となるOS機能には、スピーカー、マイク等の音声機能、通信機能、生体認証機能、位置情報測位機能、文字入力機能、そしてスマートフォンと外部接続機器とのペアリング機能なども含まれる。

この要求は「信じられないほどの量の複雑なエンジニアリング作業」を必要とし、グレッグ氏は「ユーザー体験を著しく犠牲にすることなくそれを行うことはできない」場合があると説明している。

イノベーションへのインセンティブが消失

最も深刻な問題は、イノベーションそのものへの影響だ。グレッグ氏はAirPodsのペアリング体験を例に挙げ、「蓋を開けるとiPhoneにダイアログが表示され、すぐにペアリングされる魔法のような体験」について言及している。これは「何年にもわたる我々の投資、ハードウェアとソフトウェアへの何年にもわたる投資」によって実現したものであり、「Bluetoothコミュニティが何十年もできなかったこと」を可能にした技術だという。

しかし、DMAのルールは「初日から他のすべてのデバイスに同じ機能を提供しなければならない」と要求している。Appleは「それに対して補償を受けることなく」、「最低共通分母に合わせて設計しなければならない」状況に追い込まれており、この状況は「イノベーションへのインセンティブを完全に削ぐ」と警告している。

Appleによると、「これらの要求は我々の製品と我々のヨーロッパのユーザーにとって悪いものであり、ヨーロッパで新しい製品や技術をローンチすることをはるかに困難にする」という深刻な状況だ。

知的財産権と規制適用の公平性

知的財産権と「フリーライド」問題

日本のスマホ新法を巡る議論では、知的財産権の保護がより具体的に検討されている。Appleは日本の規制案に関する意見書で、自社の知的財産権によって保護された技術への「フリーライド」を防止するための措置が認められるべきであると主張している。

Appleは、OS機能の利用を「無償でかつ制約なく」認めている場合は競争を「妨げる」行為に該当しないとする指針の表現について、知的財産権に対するフリーライドを容認していると誤解されるおそれがあるとして、その削除を要求している。一方で、日本の規制当局は、特許権などの知的財産権の権利行使と認められる場合には、OS機能の利用に対して手数料等の金銭的負担を課す行為は、法の規定に違反しないとの見解を示している。

手数料や金銭的負担の合理性を評価する際には、指定事業者がデベロッパに提供するツール、技術、サービスの価値を反映しているかどうかが考慮されるべきであり、そうでない場合、技術革新のインセンティブが阻害される可能性があるという指摘もある。

規制の公平性と正当化事由

規制の適用範囲についても議論が分かれている。グレッグ氏は「ヨーロッパでのルールの適用方法は、誰に適用されるかというと、我々にしか適用されません。サムスンには適用されません。急速に成長している中国のベンダーにも適用されません」と不公平な状況を指摘している。

Apple単独への適用問題

Appleの主張によると、「欧州委員会は、他の企業もDMAの相互運用性要求の対象であるにもかかわらず、これらの義務をAppleにのみ適用している。これは、Appleが同じルールでプレイする必要のない競合他社に知的財産を無償で提供することを強制されている唯一の企業であることを意味する。一方で、彼らは自分たちのイノベーションから利益を得続けている」という深刻な不平等が存在する。

また、「Appleは、他のスマートフォンメーカーからデータに飢えた企業まで、我々の競合他社には求められていないことを行うよう求められている」と訴えている。

日本の規制閾値設定への懸念

日本の規制対象を指定する閾値(国内月間利用者数4000万人など)についても、日本の人口規模に対してこの閾値が高すぎ、特定の米国の巨大企業を標的にしているのではないかという懸念が提起されている。DMAと比較しても、日本の閾値設定には疑問の声が上がっているのが実情だ。

ただし、日本の規制では競争制限的な行為であっても、サイバーセキュリティの確保、利用者情報の保護、青少年の保護、犯罪行為の防止、またはスマートフォンの異常な動作の防止という正当な目的のために必要不可欠な行為は、禁止行為から除外される仕組みが存在する。日本の規制当局は「スマートフォンの利用者における利便性や安全・安心の確保の両立」を図ることが重要であるとの姿勢を示している。

今後の展望とユーザーへの影響

Appleによると、DMAの「過激な解釈」は、すでにヨーロッパのユーザー、開発者、そしてApple自身に予期せぬ結果をもたらしている。規制当局は「ユーザーのプライバシーとセキュリティの保護を侵害し、イノベーションを行う我々の能力を妨げ、我々の技術を無償で提供することを強制している」と厳しく批判している。

日本では年末にスマホ新法が施行される予定だが、知的財産権の保護や正当化事由の存在など、EUのDMAとは異なる配慮がなされている。しかし、根本的な構造は類似しており、日本のユーザーも最新のApple機能を利用できない状況に直面する可能性は高い。

EUユーザーが最新のApple機能を利用できない現状は、規制とイノベーションのバランスという難しい問題を浮き彫りにしている。競争促進を目指すDMAやスマホ新法が、結果的にユーザー体験の向上を阻害する皮肉な状況となっているのが実情だ。

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特集
公開情報
更新日2025年09月27日
執筆者g.O.R.i
コメント(5件)

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  1. 通りすがりの読者(コメントID:706580)

    さらにITmediaより
    >代表理事にぶつけたところ「ODBCが結成されたときから4社とは関わっているため、それ以前の話は知らない」とのことであった。

    >代表理事は、内閣府や消費者庁で官僚として政策の策定に関わった経験が豊富なようだが、デジタル方面にはあまり詳しい印象はなかった。
    >実際、メディアに対して「ガラケーしか使っていない」と自慢していた。

    こんなのがスマホ新法の推進者(笑)

  2. 通りすがりの読者(コメントID:706579)

    スマホ新法の一つにスタートアップを支援するというのがある

    そしてスマホ新法推進団体としてODBCが設立された
    会員企業はクアルコム、グーグル、メタ、ガーミン

    スタートアップ(笑)

  3. 通りすがりの読者(コメントID:706412)

    競争に勝てないと勝てるようルールを変えるのが欧米のやり方ですからね。

  4. 通りすがりの読者(コメントID:706411)

    Appleがー!Apple幹部がー!ってApple側の意見ならそりゃ自分らの暴利を守るためなら発狂して叩くでしょ

  5. 通りすがりの読者(コメントID:706403)

    今の某政権は媚中って言われてますからねぇ。

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