是枝裕和監督「ラストシーン」全編iPhone 16 Pro撮影の衝撃──映像美と物語の余韻に浸る30分
プロの現場で活用された最新iPhoneの映像技術と、観る者を惹きつける物語体験をレビュー
Appleが展開する「Shot on iPhone」プロジェクトの最新作として、是枝裕和監督が全編iPhone 16 Proで撮影した短編映画「ラストシーン」が公開された。
カンヌ国際映画祭パルムドール受賞監督が初めて挑んだタイムトラベル・ラブストーリーは、仲野太賀、福地桃子、リリーフランキーら実力派俳優陣の演技とともに、iPhone 16 Proのカメラが日常の美しさと人間の心情を鮮やかに描き出している。
「ラストシーン」──物語と映像美の融合
「ラストシーン」は、脚本家の倉田と、50年後からやってきた由比との出会いを軸に、「未来に何が残り、何が消えるのか」というテーマを描く。舞台となる鎌倉の情景や、日常のささやかな瞬間、登場人物の繊細な心の動きが、iPhone 16 Proのレンズを通してリアルかつ印象的に映し出される。是枝監督ならではのリアリティと余韻が、スマートフォン撮影という枠を超えた映像体験を生み出している。
僕自身、普段はほとんど映画を見ないタイプだが、「ラストシーン」は約30分とは思えないほど充実した内容で、見終わった直後から「待った、もう一度見たい」と思わずにはいられなかった。特に最後のシーンは「あれってどういうことだったんだろう?」「つまりあれってこういうこと?」と感情がグルグルして、誰かと語り合いたくなる余韻が残った。
映画に対して浅はかな知識である立場でありながら大変恐縮だが、多くの人が細かくカット割りされた動画や再生速度機能に慣れてしまった今の時代でも、じっくりと物語に浸れる力を持った作品だと感じた。
「ラストシーン」で活用されたiPhone 16 Proのカメラ機能
本作の映像美を支えるのは、iPhone 16 Proの進化したカメラ機能だ。最新iPhoneの映像制作力はプロの現場でも十分に通用するレベルに到達している。
実際に「ラストシーン」では、以下のような機能が効果的に活用されている。
- シネマティックモード:冒頭のファミレスでのシーンでは、被写体の表情を際立たせつつ、背景を美しくぼかすことで、登場人物の心情や空気感を丁寧に表現。ピントの自動・手動切り替えや撮影後の焦点調整も活用され、映画のような奥行きと臨場感が生まれている。
- 4K 120fpsスローモーション:主役のドライブ中の寝顔や、観覧車で桜貝の入ったフィルムケースを落とすシーンなどで、滑らかで高精細なスローモーション映像を実現。4分の1や5分の1の速度で再生することで、夢の中のような印象的なカットを演出している。
- アクションモード:観覧車に向かって主役が走るシーンでは、手持ち撮影でもブレを抑え、安定した映像を記録。光学式と電子式の手ぶれ補正を組み合わせたアクションモードが、動きの多い場面でも滑らかな映像を可能にしている。
- 5倍光学ズーム:砂浜での遠景撮影では、5倍望遠カメラを活用し、被写体を大きく引き寄せながらも高精細な画質を維持。画角の自由度が広がり、映画的な構図やダイナミックなカットを実現している。
僕は作品をすべて見終わってから、これが本当にiPhoneで撮影されているとは正直思えなかった。iPhoneで撮影することを前提に作られた短編映画だとはいえ、視聴中に「これがスマホで撮られている」という意識が一切浮かばなかったのが印象的だ。逆に、iPhoneという物理的に小さいカメラだからこそ実現できた撮影も多いと知り、プロの現場では「iPhoneでしかできない表現」を意識して使っているのだと実感した。
きっと「iPhoneで撮影された作品」と聞いて「妥協作」と思い込む人もいるだろうが、実際はプロがiPhoneの特性を最大限に活かして、唯一無二の映像を作り上げている。カメラの進化と現場の柔軟な発想が融合した、まさに今しか見られない映像体験だと思う。
iPhone 16 Proで広がる映像表現
「ラストシーン」の映像を見て、「iPhoneはプロの現場でも十分に使える機材である」と実感した。シネマティックモードによる被写界深度のコントロールや、4K 120fpsのスローモーション、アクションモードの安定感、5倍光学ズームの表現力など、iPhone 16 Proのカメラ機能が、是枝監督の世界観と俳優たちの繊細な演技を余すことなく捉えている。
従来の映画制作機材では難しかったアングルやスピード感、役者の自然な表情も、iPhoneならではの機動力と柔軟性で引き出されている。スマートフォンの枠を超えた映像体験を、ぜひ本作で体感してほしい。