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Vision Proを体験したら、「空間コンピューティング」なんてどうでも良くなった

イマーシブコンテンツこそがVision Proのキラーコンテンツだ

Experiencing Apple Vision Pro 09

Apple Vision Proを体験してきたガジェタッチの番組に出演する際にリンクマンが体験させてくれた。リンクマンは発売日に現地で入手するため、遙々ハワイのApple Storeまで行って調達してきた。無料で試させてくれるなんて太っ腹だ(後日高額な請求書が送られてくるかもしれないけど)。

僕はVision Proに対して懐疑的な姿勢を取っていた。実は未公開の下書きに「Apple Vision Proが未だに”ピンとこない”理由」がある。体験前に公開し、体験後に本記事を執筆する計画だったが、記事の着地点が見えなかったため公開を見送っていた。

購入者のレポートを読んだ上で、体験前に懸念していた内容は主に3つ。1つ目は着け心地の悪さ。顔や首の締め付けの不快感、酔い、目の充血などを報告している人が見受けられたからだ。2つ目は、価格を正当化できるほど作業の効率化や生産性の向上が期待できないこと。3つ目は、キラーアプリの不在

大前提として、僕はゴーグル型デバイスが嫌いだ。メガネを装着したまま付けられず、髪型が崩れ、顔が押さえつけられる仕組みが苦手だ。特にメガネ問題は大きい。メガネの置き場所を確保しなければならないことは、使うハードルを高くする。

これらを踏まえた上で、初めて体験するVision Proは「うおおおすげぇ!」と「やっぱりそういう感じかあ」の両方もあった。しかしそれを上回る「Appleはもっとこれを推すべき!」という体験もあったので、紹介したい。

Vision Proの直感的ではない操作体験、EyeSightの気持ち悪さ

Appleが「空間コンピューター」と言うものだから、Vision Proを「次なるMac」という位置づけで捉えていた。マウスとキーボードではなく、指先で操作する新しい体験は想像以上に良かった。

基本操作は「目で見て、指で摘まむ」。目で見たものが選択され、指で引っ張れば手前に来て、ウィンドウの端を見て引っ張ればウィンドウサイズを変更できる。空間内にウィンドウを自由に配置できるため、巨大化したSafariを天井に置いて、右側に接続したMacBook Proの画面を表示して100インチサイズで動画編集画面を置き、右側にApp Store、左側にApple TVアプリを置いていつでも暇つぶしができる状態になる。

Experiencing Apple Vision Pro 12
天井にSafariを置いて眺めている図 = リンクマン撮影

ウェブブラウジングはトリッキーだった。見たものが選択されるため、ちょっとムフフな広告に視線を送りながら誤って摘まむと広告が開いてしまう。また「目で見て、指で摘まむ」という操作は直感的ではないと感じた。平面で表示されるウェブページ内にあるリンクを摘まむ、という操作に対する違和感は終始抜けなかった。

MacBook Proの表示内容を巨大な画面で出力できる仕組みは使いようによっては便利だが、作業時に大画面がなければ作業が成り立たないという人ではない限り、Vision Proを持ち運ぶほどの価値があるとは思えなかった。

Vision Proを装着している人の目の仮想映像を前面に表示する機能「EyeSight」は、想像していたよりも何倍も気味が悪かった。ほとんどの角度では目が全く見えず、見えても「なんか目のようなウニョウニョしたものが見える」としか思えず、最終的に不快感だけが残る。周囲との隔たりを和らげる効果は全く感じられなかった。

イマーシブコンテンツというキラーコンテンツ

しかしイマーシブコンテンツには感動した。心の底から感動した。

東京ディズニーシーの人気アトラクション「ソアリン・ファンタスティック・フライト」に乗ったことがある人は、同じ体験をいつでも、どこでもできると思ってもらえればいい。大自然を歩く映像、動物を目の前で楽しむ映像、絶景を見下ろす映像など、リアリティ溢れる体験がいつでもどこでもできてしまうのだ。

Experiencing Apple Vision Pro 34
あまりもの臨場感に感動する僕 = リンクマン撮影

特に感動したのは、サッカー観戦映像だ。スポーツは本来であれば「リアルタイムで見てナンボ」だと思うが、すでに見ている試合でもVision Proで改めて見たくなる人はいるはずだ。それほど究極な体験だった。

ゴールのポスト裏に立っているような位置から観戦するPK、ピッチに立っているような視点から観戦席を見渡せるような画角、そしてチーム優勝後のシャンパンかけに参加しているかのような映像には思わず感動せずにいられない。ボールが飛んでくる。シャンパンが降りかかる。観客の熱量を肌で感じる。

Vision Proの魅力は間違いなくイマーシブコンテンツだ。ヘッドセットならではのリアルな映像体験にくわえて、迫力のあるサウンドの影響で、何百万もかけて構築するであろうサラウンド音響付きシアターと同等またはそれ以上の体験ができる。この体験のためであれば、50万円以上支払う人がいても不思議ではない。むしろ費用対効果は良いとも言える。

Appleは「職場や自宅でアプリに無限のキャンバスを」「FaceTimeが空間体験に対応」などと言っているが、そんなことはどうでも良い。iPadアプリがVision Proで利用でき、TikTokがVision Proに対応したなど話題になっていたが、ハッキリ言ってそんなことはどうでも良い。ちょっと真新しいだけで、MacやiPhoneでの体験と大差はない。

Vision Proで無ければ利用できないコンテンツは、イマーシブコンテンツだ。あの没入感と臨場感が生み出す感動は、現状あるAppleデバイスでは実現できない。Vision Proはキラーアプリこそ存在しないが、キラーコンテンツとしてイマーシブコンテンツがある。「既存の体験を空間で利用できる新しいコンピューター体験」ではなく、「極上エンタメ体験デバイス」としてアピールするべきだと思う

Vision Pro体験後に感じた2つの懸念点

さてイマーシブコンテンツに感動した僕だが、現実世界に戻ってきてから気になった点が2つある。

1つ目は、装着による疲労感だ。リンクマンのものを借りているためサイズが最適かされていないことは前提として、長時間の着用によって前頭への疲労感は凄まじく、目の周りはしばらく痛かった。またイマーシブコンテンツに見入ってしまったせいか、目の乾燥や疲労が酷かった。

2つ目は、漠然とした健康面への不安だ。「ブルーライトは視力に良くない」と言われている今の世の中で、目の前に超高繊細ディスプレイを見続けることは大丈夫なのだろうか。大画面に囲まれて仕事をしている僕でさえ、ブルーライトカットメガネを付けた上でディスプレイとは一定距離離れるように配置している。眼精疲労を訴えている人は一定数いるため、実際のところはどうなのか知りたい。

Experiencing Apple Vision Pro 36

ディスプレイ付きデバイスは、年月が経つにつれて顔に近づいている。テレビは数メートル離れて見る。パソコンは1メートル前後の距離で見ているだろう。スマートフォンは数十センチの距離。そしてApple Vision Proは数センチの距離で見る。ヘッドセット型が未来の標準デバイスになるとは全くもって思えないが、日常的に目の前でディスプレイを見る世界戦は十分あり得るだろう。

日常的にイマーシブコンテンツを見る機会も時間もない僕は、Vision Proを体験後も自分で購入する予定は全くない。しかし体験させてもらえたことで、Appleが思い描くコンピューティングの未来を知ることができた。とりあえずイマーシブコンテンツでしょ!


余談だが、Vision Proの製品としての完成度は「さすが」としか言いようがない。特にディスプレイ面のカバーが、「たかがカバー」とは言えないほど出来が良かった。

Experiencing Apple Vision Pro 05

バッテリーパックは「もしAppleが本気を出してモバイルバッテリーを作ったらこうなった」という仕上がり。
Experiencing Apple Vision Pro 04

Vision Proの内側はこのようになっている。落下テストの動画でLight Sealは簡単に外れると紹介されていたが、想像していたよりも簡単に外れて驚いた。第2世代モデルは確実に改良される部分だろう。
Experiencing Apple Vision Pro 06

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更新日2024年04月03日
執筆者g.O.R.i
コメント(2件)

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  1. 通りすがりの読者(コメントID:703996)

    世界線。。

    iPhone15Proシリーズで撮れる空間ビデオの再生は試されました?
    解像度が低くても空間ビデオで撮りためておく意味はありそうですかね?
    空間ビデオ非対応の4Kビデオの方が画質がいいので、どっちで撮るのがいいのだろうか、と悩むことが多いです。
    奈緒、Apple Vision Proを買う予定は全くありませんw

  2. 通りすがりの読者(コメントID:703961)

    買うかどうかはともかく、こういう新製品はワクワクするし体験してみたいですね☺️

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