当メディアのリンクにはアフィリエイト広告が含まれています

Dreameが描く「家庭の執事」への道。階段を登り機械アームで家事をこなす未来

家電を芸術品に昇華させるデザイン哲学と、自動車分野へも展開する野心的ビジョン

Interviewing leaders of Dreame Technology 20

中国の掃除ロボットメーカーDreame Technologyが描く未来は、単なる床掃除の自動化ではない。同社のロボット掃除機・開発チームマネージャーMeng Ji(モン・カ)氏と、日本・韓国・オーストラリア経営戦略マネージャーであるMaggie Dai氏へのインタビューから見えてきたのは、家庭の執事としてのロボット掃除機という壮大なビジョンだ。

家電を芸術品に昇華させるデザイン哲学、機械アームや階段清掃機能といった革新的な技術開発、そして自動車分野への参入計画。Dreameが目指すのは、家電メーカーの枠を超えた、夢を実現するテクノロジー企業への進化だ。

家電を芸術品に変えるデザイン哲学

Dreameの製品は、日系製品と比較して「Apple製品のよう」で、シンプルで美しいと評価されている。これは偶然ではない。Dreameは家電を単なる機能的な道具ではなく、家庭環境に融合し、芸術品のような外観を持つことを追求している。

外観設計には非常に厳格な基準があり、一つの角の設計を何十回、何百回も検討している。この徹底したこだわりが、ハイエンド製品らしい高級感のある落ち着いた印象を生み出している。

ユーザーが投票で決めるデザイン

Dreameのデザインプロセスは、業界でも珍しいユーザー参加型だ。デザイン案は、まず社内投票にかけられ、その中から選ばれたトップ3〜5案が、外部の消費者に選ばれる。Dreame Designerというプラットフォームを通じて、ユーザーが投票に参加できる仕組みになっている。日本向けにも現在開発中で、間もなく投票が可能になる予定だ。

この民主的なプロセスにより、Dreameの製品は消費者のニーズを正確に反映したデザインとなっている。使い勝手も損なわれず、シンプルで部屋を選ばないデザインが実現している。

ロボット掃除機の最重要3要素

Dreameの全てのイノベーションは、以下の3つの方向に焦点を当てて行われている。この3要素こそが、同社が考える理想のロボット掃除機の姿だ。

清掃能力:よりきれいに

Aqua10 Ultra Roller Dreame Flagship Robot Vacuum 24

最も核となる要素が清掃能力だ。よりきれいに掃除し、きれいにモップがけをすることを追求している。これには吸引力の向上や、毛髪が絡まないブラシなどが含まれる。最新製品は30,000Paの吸引力を実現し、業界最高水準を維持している。

メンテナンスフリー:手間からの解放

Aqua10 Ultra Roller Dreame Flagship Robot Vacuum 14

ユーザーの手間を解放するため、自動ゴミ捨てや自動モップ洗浄、ブラシの自動クリーニングといった機能が重要だ。100℃の熱水殺菌機能も、この方向性の一環として開発された。ユーザーは掃除機のメンテナンスを気にすることなく、常に清潔な状態を保てる。

スマート性:賢い掃除機

Aqua10 Ultra Roller Dreame Flagship Robot Vacuum in China 11

掃除機が賢くあることが重要だ。正確なルート計画、障害物回避、AIカメラによる突然の障害物検知など、人間のように状況を判断して動作する能力が求められる。Dreameの製品は、ペットが突然進行ルートを遮っても、即座に感知して避けることができる。

究極の目標は「家庭の執事」

Dreameの究極の目標は、ロボット掃除機1台で家中の全ての清掃を完了させること、すなわち「部屋の管理人」となることだ。この壮大なビジョンを実現するため、同社は複数の革新的な技術開発を進めている。

機械アームで立体空間の清掃へ

将来的な形態変化として、機械アームの搭載が研究されている。2025年9月に発表されたコンセプトモデル「Cyber10 Ultra」は、約500gまでの物体を持ち上げることができる機械式アームを搭載している。これにより、現在の床面清掃だけでなく、立体空間の清掃(例:テーブルの上を拭く)が可能になる。

単なる掃除だけでなく、靴下の仕分けや物の拾い上げといった家事支援機能も視野に入れている。床に散らばった小物を片付けながら掃除できる未来は、もうすぐそこまで来ている。

階段清掃機能:最後の砦への挑戦

ロボット掃除機業界が数十年にわたって続いてきた「1フロアのみ」という制約を打破するため、階段清掃機能の開発が進んでいる。2025年9月に発表されたコンセプトモデル「Cyber X」は、大きなトレッドを使って最大25cmの段差を登ることができる。

小さなカーブの階段は第1世代で対応可能だが、垂直90度の直角階段や螺旋階段といった難しい構造への対応は今後の技術開発課題としている。安全性を最優先にした設計となっており、3重ブレーキ保護システムと3D視覚システムによる事前スキャン機能が転落事故を防ぐ。

現行製品でも、最新の「X50 Ultra」は6cmの段差を越えることができ、「Aqua10 Ultra Roller」は最大8cmの段差に対応している。段差走破性能は着実に進化している。

スマート家電の中枢へ

Dreameは、ロボット掃除機をスマート家電の中枢として活用し、家中のスマート家電を制御することを目指している。掃除機が家全体を移動しながら各部屋の状態を把握し、他のスマート家電と連携して快適な住環境を提供する。まさに執事のような存在だ。

モーター技術の限界突破

Dreameは現在の毎分20万回転を限界ではなくスタート地点と捉えている。この姿勢こそが、同社の技術開発に対する野心を物語っている。

今後の課題は、20万回転を超えることと、高速回転しながら騒音をコントロールすることだ。実用性を伴わない高回転数は意味がないとしており、性能と静音性の両立を追求している。モーター技術はDreame製品の心臓部であり、この技術革新が全ての製品性能向上につながっている。

自動車分野への応用も視野に

このモーター技術は、家電分野だけでなく、Dreameが参入を目指している自動車分野にも応用される予定だ。高速デジタルモーター技術は、電気自動車の駆動システムや冷却システムなど、様々な用途への展開が期待される。

中国市場における新エネルギーや自動車領域での技術的優位性を活用し、関連製品やモジュールを日本市場へ展開する計画も、長期(3〜5年)の事業計画に含まれている。家電メーカーから総合テクノロジー企業への進化が始まっている。

「夢」を実現する企業文化

社名「Dreame」の由来は、CEOが清華大学時代に設立した「天空工場」クラブでの経験にある。CEOの元々の夢は飛行機を作って空を飛ぶことだった。その夢は叶わなかったが、そのロマン主義的色彩は企業文化として引き継がれている。

若い創造力が支える開発

従業員規模は約14,000人で、平均年齢は30代後半と比較的若い。会社の文化は若者の創造力を奨励しており、社員の7割以上が研究開発に従事している。年間売上の7%を研究開発に投資し、出願済特許数は累計約10,000件(2025年6月時点)に達している。

Interviewing leaders of Dreame Technology 10
責任者の人も圧倒的に若い

この若く情熱的なチームが、階段を登る掃除機や機械アームを搭載した掃除機といった、従来の常識を打ち破る製品を生み出している。「夢の実現を目指す」という企業文化が、社員にも浸透している。

グローバルな多様性

創業初日から海外チームを構築し、全世界市場を志向してきた。各国籍の社員が集まっているが、良い製品を消費者に提供したいという共通の目標を持っている。この多様性こそが、日本市場の畳対応や韓国市場の木製床対応といった、きめ細かなローカライゼーションを可能にしている。

製品開発の初期段階から各国の消費者ニーズを取り入れる体制が、Dreameの強みだ。

テクノロジーで日常をより快適に

Interviewing leaders of Dreame Technology 17
本社キャンパス内にあるストアでインタビューをさせていただいた

Dreameのビジョンは明確だ。「テクノロジーで日常をより快適に、より楽しく。小さな不便を解消し、日常の幸せを大きな笑顔に変えていく」。この思想が、全ての製品開発と企業活動の根底にある。

家電を芸術品に昇華させるデザイン、床掃除から立体空間の清掃へと進化する機能、階段という最後の砦への挑戦、そして自動車分野への展開。Dreameは、掃除機メーカーという枠を超えた、夢を実現するテクノロジー企業を目指している。

「皆様一人ひとりの夢を叶えるために、Dreameは存在しています」というメッセージは、単なる マーケティング文句ではない。機械アームで家事を支援し、階段を登って全フロアを掃除し、スマート家電の中枢として家全体を管理する。そんな未来のロボット掃除機が、家庭の執事として私たちの生活を支える日は、そう遠くないのかもしれない。

現在、Dreameは世界100以上の国と地域で展開している。日本市場を最重要市場と位置づけ、ユーザーの声に耳を傾け、製品を進化させ続ける姿勢。その先に見えるのは、単なる掃除機メーカーではなく、生活に自然に溶け込むスマート家電で多くの家庭に快適さと便利さを届ける、次世代テクノロジー企業の姿だ。

もっと読む

12本の記事を表示する
ギャラリー
特集
関連キーワード
公開情報
更新日2025年11月08日
執筆者g.O.R.i
コメント(0件)

コメントは承認後に表示されます。良識のあるコメントを心がけ、攻撃的な表現や他人が傷つく発言は避けましょう。なお、コメント投稿時に「利用規約」に同意したとみなします。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

「家電製品」新着記事
トレンド検索