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Apple、AI規制で「プライバシー重視」貫く――OpenAI「大谷翔平の国」発言とは対照的に

GoogleとOpenAIが「スピード化」を要求する中、Appleは「政府が設計に口を出すな」と警戒

Solen feyissa 5uNgZE6KfZo unsplash

2026年1月30日、公正取引委員会が主催する「第2回デジタル競争グローバルフォーラム」のパネルディスカッション「原則から実践へ〜未来に適合する競争政策」で、OpenAIの最高経済政策オフィサーであるアダム・コーエン氏が興味深い発言をした。「ここは(判定が早い)大谷翔平の国だ。当局はボールかストライクかの判定(介入の判断)を早くするべきだ」――日本の規制当局に向けて、スピード感のある判断を求めたのだ。

2025年12月18日に全面施行された通称「スマホ新法」から約1カ月。規制のフェーズが「ルール作り」から「運用」に移る中、次なる焦点は急速に進化するAI分野だ。GoogleやOpenAIは「スピード重視」を訴え、Appleは「プライバシー保護」を譲らない。本稿では、AI時代のルール作りを巡る各社の攻防を追う。

「ここはオオタニの国だ」――OpenAIとGoogleが求めるスピード

コーエン氏の「大谷翔平」発言は、AI分野における競争環境の速さを象徴している。パネルディスカッションでコーエン氏は「10年後を予測するのは不可能。だからこそ、将来を固定するルールではなく、インプット(半導体やデータ)へのアクセスや流通のボトルネック解消に注力すべきだ」と語った。技術の進化が速すぎて、硬直的なルールを作ると時代遅れになるリスクがある――これがOpenAIの主張だ。

同じくパネルに登壇したGoogleアジア太平洋地域法規制政策統括のフェリシティ・デイ氏も、同様の懸念を示した。「AI分野では、ローンチから55日でユニコーン(評価額10億ドル以上)になる企業も現れるほどのスピード感だ」とデイ氏は語った。さらに、「まだ技術の初期段階であり、規制を急ぎすぎてイノベーションを阻害すべきではない。エビデンスに基づいた監視が必要」と続けた。

GoogleもOpenAIも、AI分野においては「まず市場に任せ、問題が明確になってから介入する」アプローチを求めている。スマホ規制のように時間をかけて議論するのではなく、大谷翔平のように「ボールかストライクか」を素早く判定し、市場の成長を妨げないでほしい――これが両社の共通したメッセージだ。

Appleの懸念:「AI × OS」でプライバシーは守れるか

一方、Appleの競争法・規制統括シニア・ディレクターであるショーン・ディロン氏は、異なる立場を示した。パネルディスカッションでディロン氏は「AIとOSが融合していく中で、政府が『こちらのシステム(例えばクラウド型)の方が望ましい』と設計に口を出すことは避けてほしい」と語った。さらに、「技術そのものが競争すべきであり、セキュリティやプライバシーを犠牲にしてまで、他社と同じ仕組みに合わせる必要はない」と続けた。

Appleが特に警戒しているのは、プライバシー保護のあり方だ。Appleによると、Appleは「Apple Intelligence」において、可能な限り端末内(オンデバイス)で処理を完結させるアプローチをとっている。規制によってデータを外部に出すことや、Androidのようなオープンな処理方式を強制されることは、彼らの差別化要因であるプライバシー保護を損なうと考えている。

GoogleやOpenAIが「スピード」と「オープン化」を叫ぶ中、Appleは「プライバシー」という旗を降ろさない。AI分野でも、スマホと同じ「iPhoneがAndroid化させられる」懸念が繰り返されている。規制当局が「特定の技術方式」を推奨することは、Appleにとって最大のリスクなのだ。

対立から「対話」へ――実践のフェーズに入ったルール作り

パネルディスカッションでディロン氏は「原則論(Principles)も大事だが、今は『実践(Practice)』のフェーズだ。何が機能し、何が機能していないかという現実を見て、柔軟に調整していく必要がある」と語った。スマホ新法が施行された今、理論ではなく実際の運用結果を見ながら改善していくべきだという主張だ。

OECD競争課次長のアントニオ・カポビアンコ氏は「国ごとにルールがバラバラになると企業は困る。国際的な一貫性と協力が不可欠だ」と語った。EUは厳格、米国は緩い、日本は中道――各国でルールが異なると、グローバル企業は対応に苦慮する。AI規制においても、国際的な協調が求められている。

GoogleとOpenAIは「スピード重視」、Appleは「プライバシー重視」、規制当局は「国際協調重視」――各社の立場は異なるが、共通しているのは「対話の必要性」だ。技術を理解しない官僚が一方的にルールを押し付けるのではなく、企業と当局が対話しながら実践的なルールを作っていく。それがパネル全体を通じて浮かび上がった結論だった。

「大谷翔平のように判定を」の真意

コーエン氏の「大谷翔平」発言は、単なるリップサービスではない。AI分野は55日でユニコーン企業が誕生するほどのスピード感で進化しており、従来の規制プロセスでは追いつかない。だからこそ、明確な基準を設け、素早く判断し、市場の成長を妨げない――これがOpenAIの訴えだ。

一方、Appleは「スピード」よりも「質」を重視する。プライバシーやセキュリティを犠牲にしてまでオープン化を急ぐべきではない、という立場だ。GoogleとOpenAIが「まず市場に任せろ」と主張するのに対し、Appleは「技術的なリスクを理解してから判断しろ」と訴える。同じパネルに座っていても、各社の温度差は明らかだった。

日本の公正取引委員会は、9名のエンジニアを採用し、技術的な知見を深めながら実態調査を行っている。スマホ新法では「セキュリティを競争要因として認める」という日本独自のアプローチが評価された。AI規制でも、日本が「スピード」と「慎重さ」のバランスをどう取るのか。大谷翔平のように、ボールとストライクを正確に見極められるか。その手腕が問われている。

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執筆者g.O.R.i
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