AirTagはどこまで人の位置情報を追跡できるのか、検証してみた
子供の迷子防止・追跡用としての実用性、不要な追跡の対策の有効性を確認
AirTagは、モノを簡単に見つけだすためのiPhoneアクセサリだ。不要な追跡に使われない対策を行っているため、子供のカバンなどに付けることで追跡用や迷子防止、見守りアイテムとしての活用は「想定していない」とAppleは語っているが、人に付けたらどれほどの精度が期待できるのか。
YouTubeチャンネル「Appleが大好きなんだよ」の中の人(以後、ダイスキさん)とともにAirTagの動作を検証した。位置情報の更新頻度、子どもが持っていることを想定した追跡精度、ストーキングに悪用された場合の動作や警告する通知など、購入の参考にしてもらいたい。
検証1:だだ広い場所でAirTagを持って移動
AirTagは、紛失したアイテムがペアリングされたiPhoneのBluetooth圏内にない場合、「探す」ネットワークを活用してアイテムの場所を探し当てる。「探す」ネットワークとは、10億台におよぶApple製デバイスを使用し、紛失したAirTagからのBluetooth信号を検知することで、位置情報を持ち主に中継する仕組みだ。
だだ広い公園に移動し、ダイスキさんのiPhone 12 miniとiPhone 8にペアリングされたAirTagを2つ持ち、数百メートル先まで移動。
人通りはまばらだったからか、AirTagの位置情報は全く更新されず、不要な追跡を知らせる通知も表示されなかった。人通りが少なければ少ないほど、位置情報の追跡は難しくなる。
- 検証条件
- 所持品:iPhone 12 Pro、Apple Watch Series 6(セルラーオフ)、M1 MacBook Pro(スリープ)
- 人混み:少なめ
- 検証結果
- 位置情報の更新頻度:遅い
- 不要な追跡を知らせる通知:なし
検証2:お互いのAirTagを持ち、移動して位置情報を確認
次にダイスキさんとAirTagを交換して別行動。「探す」アプリ上でお互いの位置情報を追えるか検証した。通信可能なiPhoneとApple Watchを身につけながら、人通りの多い場所を歩いていたため、位置情報は最短で1分間で更新。遅くとも6分間以内には最新情報が反映された。
位置情報は非常に正確だ。今回はAirTagを人に付けていたが、モノでも人通りが多い場所にあれば探し出せるだろう。
紛失したモノは、「経路」をタップするとAppleマップで最短ルートが検索できる。「探す」アプリと独立して動作するため、対象物が移動してしまうと経路を都度検索する必要がある。
ダイスキさんと僕は合意の上でAirTagを交換したが、お互いを”不要な追跡”をしている状態でもある。僕のiPhoneには、不要な追跡を知らせる通知は表示されなかった。
- 検証条件
- 所持品:iPhone 12 Pro、Apple Watch Series 6(セルラーオフ)、M1 MacBook Pro(スリープ)
- 人混み:多め
- 検証結果
- 現在位置の把握:容易
- 位置情報の更新頻度:早い
- 不要な追跡を知らせる通知:なし
検証3:子どもにAirTagを持たせた場合を想定した検証
AirTagを子供の迷子防止・追跡用に使用したい人は多い。Appleは想定していないと指摘しているが、想定外の使用方法は可能なのか、検証してみた。
子どもがAirTagのみを所持した状態を再現するため、iPhoneとApple Watchは、電源をオフにして移動。人通りが非常に多い場所を歩いていたのにも関わらず更新頻度は低く、iPhone 8に紐付けたAirTagは2〜3分間隔で位置情報が更新されたが、iPhone 12 miniに紐付けたAirTagは全く更新されなかった。
紛失モードを有効にして再度試したが、結果は変わらなかった。iPhone 12 miniは場所から移動せず、iPhone 8も更新頻度は8〜9分となっており、リアルタイムに位置情報を追うのは厳しい。
本来はU1チップを内蔵しているiPhone 12 miniのほうが高い精度を出しそうだが、検証ではiPhone 8のほうが正確との結果に。このような誤差が生じた理由は不明だ。
- 検証条件
- 所持品:iPhone 12 Pro(電源オフ)、Apple Watch Series 6(電源オフ)、M1 MacBook Pro(スリープ)
- 人混み:多め
- 検証結果
- 現在位置の把握:難しい
- 位置情報の更新頻度:遅い
- 不要な追跡を知らせる通知:なし
検証4:Apple推奨、Apple Watchの位置情報精度と更新頻度を確認
Appleは、子どもの追跡用にはApple Watchを推奨している。精度を確認するべく、だだ広い公園で、Apple WatchのGPSとWi-Fiを有効化した状態で身につけて移動してみた。
接続元のiPhoneとは数メートル離れてすぐに接続が切れていたが、位置情報はほぼリアルタイムに更新。正確に位置が確認できた。セルラーモデルではなくWi-Fiモデルでも十分だ。
- 検証条件
- 所持品:iPhone 12 Pro(電源オフ)、Apple Watch Series 6(セルラーオフ)、M1 MacBook Pro(スリープ)
- 人混み:少なめ
- 検証結果
- 現在位置の把握:容易
- 位置情報の更新頻度:早い(Apple Watch)
- 不要な追跡を知らせる通知:なし
検証5:不要な追跡を再現した検証
最後に、不要な追跡を再現した検証を行った。結論としては、現状の仕様では簡単にストーキングできてしまう恐れがある。
僕とダイスキさんはお互いのAirTagを持ち帰った。帰宅後早々に、「あなたが所持中のAirTagが見つかりました」「このAirTagの所在地は所有者が見ることができます」の通知を受信。これはセーフティ通知と呼ばれている。ダイスキさんも同じく帰宅時のタイミングで受信したという。
帰宅の移動中は通知を受信せず、帰宅時に初めて表示された。ダイスキさんは僕が帰宅中、常に僕の正確な位置情報を把握。車移動だったため他のiPhoneと近距離で接触しておらず、2〜3分で位置情報がリアルタイムに更新されていたそうだ。自宅だけではなく、テイクアウトで立ち寄ったサラダ屋、ガソリンスタンドなど、すべて正確に表示されていた。
AppleのバイスプレジデントKaiann Drance氏とRon Huang氏のインタビューでは、実際に持ち主か離れたAirTagから音が鳴るまで3日間掛かると述べている。お互いのAirTagを交換してから3日経ったが、警告は度々表示されるものの音が聞こえるまで4日間かかった。
The Washington Postの調査によると、音は小さい音量で15秒間鳴ると自動的に止る仕様だ。音は数時間後に再度鳴るが、音量は60デシベル。「普通の声」「走行中の自動車内」と同程度の騒音で、一般的な防犯ブザーの基準値である、1メートル離れた位置で音量が85デシベル(電車のガード下の騒音より大きい音)以上の音量を下回っている。
現状の仕組みから言えることは以下のとおり。
余裕でストーキングに使えてしまう
果たしてこれは「不要な追跡の対策」と言えるのだろうか。例えば芸能人がAirTagを仕込まれ、そのまま帰宅してしまった場合、簡単に自宅の位置情報を割り当てられてしまう。
落ちているAirTagは絶対に自宅に持って帰るな
万が一AirTagのついた忘れ物を見つけたとしても、決して自宅に持ち帰ってはならない。所有者はAirTagの場所を把握できるため、あえてAirTagを拾ってほしい人の近くに落とし、その位置情報をもとに自宅を割り当てられるリスクがある。
- 検証条件
- 所持品:iPhone 12 Pro、Apple Watch Series 6(セルラーオフ)、M1 MacBook Pro(スリープ)
- 人混み:なし(車で移動)
- 検証結果
- 現在位置の把握:容易
- 位置情報の更新頻度:早い
- 不要な追跡を知らせる通知:自宅到着時
- 自宅到着までセーフティ通知は表示されず、自宅バレするリスクは極めて高い
- 3日間後に鳴るはずの音が鳴らない
AirTag レビュー:単体使用で人の追跡には不向き、Apple Watchは優秀
AirTagは、ペアリングされたデバイスとのBluetooth圏内であれば探しやすい。iPhone 11シリーズ以降であればU1チップを活用したAR検索機能が利用でき、紛失物の方向を指示してくれる。多少の誤差はあるが、音を鳴らせば見つかるだろう。
Bluetooth圏外になり「探す」ネットワークに依存する場合、人通りの多いところであれば位置情報は数分おきに更新される。人通り少ない場合、更新頻度は下がる。iPhoneを所有している人が持ち歩いている場合、人通りが少なくても位置情報は頻繁に更新されるため、現在位置を把握しやすい。
子どもやペットなどを追跡する目的での使用は不可能ではないが、精度にムラがある。通信できるiPhoneを持ち歩いている、もしくは常に近くにあれば位置情報の更新頻度は上がるが、単体では何分も更新されない恐れもある。位置情報をリアルタイムに追う目的での購入はおすすめできない。
子供の追跡用としてAppleの推奨するApple Watchは、リアルタイムに近い位置情報の更新が見られた。GPSモデルでも十分だ。
Appleは、AirTagが「不要な追跡に使われない為の事前対策と共に設計」しているというが、AirTagを使用した不要な追跡は容易であり、ストーキングに悪用されるリスクが非常に高い。セーフティ通知のが遅く、帰宅時に初めて通知されるからだ。自宅の現在位置を把握されてしまう。
しかしセーフティ通知をすぐに発さないことで、落としものを盗まれても盗人を追跡できるメリットがある。Appleは、盗難時における有効性とストーキングによる悪用防止を両立させる方法を考える必要がある。
今回の検証は、「Appleが大好きなんだよ」で動画としても公開されている。あわせて見てもらいたい。
そう!それ!僕もそれが気になってるんですよ!今度検証できたらしますが、もし検証されたらこちらに共有していただけますと幸いです!
AirTagの話も気になりますが、AppleWatchの件(検証4)も気になりました。Watchの予備はないけど、お古のiPhoneはあるからWiFiオンで子どもの持ち物に混ぜといたら居場所わかるのかしらん? 試してみるか・・・
失礼しました。書いてありました。
こちらもNFCということは見通し10cm程度以内に接近している必要があり、実効性というよりはiPhone端末以外に対して最大限配慮した末の苦肉の策なんでしょう。
GizModoさんの記事をごらんください
これ、ブロックしてもURL変えて〜、の繰り返しでうんざりなんですよね……僕もまた見かけたのでブロックURLに追加しました。ご迷惑をおかけしてすいません……。
本当ですか?
NFCで持ち主の情報を表示できる機能と勘違いしてません?
いつも貴重な情報ありがとうございます。
以前から気になっているのですが、偽物のApple Watchの販売サイトの広告が毎回表示され、非常によろしくないと思います。
まぁ、AdSenseが悪い訳ですが…
Appleファンとしては、適切にブロックなどをお願いできると嬉しく思います。
よろしくお願いいたします。
自宅を登録していない人の場合、何の通知も出ないということでしょうか?
Macgeek氏、すっかりダイスキさんに…
「AirTagの持ち主のiPhoneと一定時間以上携行されていない」かつ「自宅と学習されている場所以外に一定時間以上滞在する」というのが不審警告トリガーなんですね。
自宅の場所は知られるにしても、勝手にそれを忍ばせた、その犯人が位置情報を確認していたことを警察に証拠として提示できるのであれば一応ストーカー対策になるのかな、という気はします。
いや出ますが…
不要な追跡が容易と思われるのは問題ですね。とくに、AirTagを荷物などに紛れ込まされた人(ストーキング被害者)がiPhoneだと、被害者自身が自分の位置情報を加害者に送ってしまうということでしょうか。
タグからの通知音が柔らかいので意外に聞き取りづらかったりするかもですね。ところで旧グーグルfilestreamがM1で使えるようになっていますが(サイトの発表はない)、その辺りの情報はいっていますか〜?♪
散々言われてることかと思うけど、Android携帯の人はストーキングされてる通知すら出ないと思うので簡単に追跡できそう。
この辺プライバシーを尊重するApple的にどうなんだろう…
ストーキング対策ができていないってことは、逆に言うと思ったより盗難対策は出来ているわけですか。
ストーキング対策に関しては、登録した自分の住所付近で反応するようにしてるって考えた方が良さそうでしょうね。
うーん、逆に少し自分は安心しましたね。