【レビュー】MX MASTER 3S：たかがクリック音、されどクリック音

初代MX MASTERを使い始めてから8年近く経とうとしている。トラックパッド派、トラックボール派など様々な派閥がいる中で、僕はMX MASTER一筋を貫いてきた。出先でマウスを使いたいときも、MX Anywhere 3は使わずあえて専用サイズのケースに入れて持ち出している。

MX MASTERシリーズの新作「MX MASTER 3S」は、MX MASTER 3やMX MASTER 3 for Macの外観はそのままに、マウスとしての使い勝手が一段向上した。目立つ進化ではないが、MX MASTER 3Sに慣れると過去のモデルには戻れなくなってしまう。

メーカーよりレビュー用としてサンプルを提供してもらったので、紹介する。

見た目は全く同じ。前モデルから変わった機能・仕様

MX MASTER 3、MX MASTER 3 for Mac、MX MASTER 3Sを並べてみても、使用感を無視すれば全く見分けられないだろう。色見、形状、操作性はすべて同じだ。

しかし1台のみ、ボタンをクリックした際の感触が明らかに違う。それがMX MASTER 3Sだ。

不快感ゼロ。クリック音が90％削減

MX MASTER 3Sは上部にある右クリック・左クリック用ボタンの音がほとんど聞こえない。メーカーによると、クリックスノイズは90％減少しているという。

押したときに鳴って当たり前だと思っていたクリック音が目立たくなっている。「カチッ」という耳に残る音がではなく、「ポコッ」という鈍い音になった。物理的な押し心地には変わりないはずだが、音が変わった影響で押しやすく感じる。クリックの1つひとつが心地良いのだ。

クリック音ぐらいで大袈裟な、と思うかもしれない。僕も実機を手にする前は同様の感想を抱いていた。しかし使ってみると、言っている意味が分かるはずだ。

音楽を流しながら作業をする人は恩恵を受けづらいが、作業する場所次第では周囲に喜ばれるだろう。静かなカフェで鳴り響くマウスのクリック音は、意外と気になるものだ。オフィスにカチカチうるさい人がいれば、MX MASTER 3Sをプレゼントしてあげよう。

トラッキングセンサー、8,000DPIに強化。従来より倍増

MX MASTER 3Sには、MX MASTERシリーズで最も精密という最大8,000DPIのセンサーを搭載。従来は4,000DPIが最大だった。

最近は38インチや49インチのウルトラワイドディスプレイ、4Kディスプレイを複数使用するマルチモニター、5Kや6Kなどの高解像度ディスプレイを使用する人も増えている。DPIを調整すれば、マウスをわずかに動かすだけでカーソル移動が可能だ。

専用アプリケーションLogi+ Optionsでポテンシャルを活かすべく調整してみたが、ポインタ速度は8,000どころか1,000で十分。米Gizmodoのレビューでは5,000DPIを”スイートスポット”としていたが、MacBook Proの内蔵ディスプレイと5K2Kディスプレイを行ったり来たりするため、高DPIはかえって使いづらい。

色々と試した結果、1,000DPIが最も操作しやすかった

従来の使い勝手ははそのまま。カスタマイズ性と操作性で自分仕様に

MX MASTER 3の強みは、MX MASTER 3Sにそのまま引き継がれている。

最強スクロールホイール

スクロールホイールは、MX MASTERシリーズの代表的な機能だ。Mag speed電磁気スクロールは、1秒に1,000行スクロールできるほど高速。長過ぎるエクセルやスクロールバーが小さいドキュメントでも、スクロールホイールをブンッと回せば超高速回転してくれる。

高速スクロールは使いたいときは便利だが、使用シーンが限られている。ボタンを設定して切り替える方法もあるが、普段は通常スクロール（ラチェットモード）、必要なときは高速スクロールを可能にする機能「SmartShift」を有効化していいとこ取りをしている。

精度はLogi+ Optionsで細かく調整でき、最適値がわかれば以後設定不要。快適なスクロール・ライフが待っている。このレビュー記事も随分と長くなってしまったので、精度調整に役立ててもらいたい。

カスタマイズ可能なボタン

MX MASTER 3Sには、6つのカスタマイズ可能なボタンがあり、Logi+ Optionsで通常時のほか、アプリごとに専用の機能を持たせられる。キーボードショートカットと併用することで作業効率アップが図れる。

親指を置く場所となっているジェスチャーボタンを使いこなせると、MX MASTER 3Sのポテンシャルをフルに引き出せる。

デバイス切り替え

MX MASTER 3Sは、デバイスの底面にあるボタンで最大3台までのデバイスに切り替えられる。MacでもiPadでもマウスを使いたいという人にとって、便利な機能だろう。

MX MASTER 3S レビュー：静音化で進化した最高峰マウス

MX MASTER 3Sは、本当に良いマウスだ。カスタマイズ好きな人が手に取れば、自分好みに仕上げるだけで半日は過ぎてしまうだろう。

最先端の機能も備わっているが、基本的な機能も抑えられている。Bluetooth接続以外にLogi Bolt USB（USB-A端子）を使ったペアリングも可能。バッテリーはフル充電で最大70日使い続けられ、わずか1分間の急速充電で3時間使用できる急速充電にも対応する。

手が小さい人はMX Anywhere 3のほうが操作しやすいと聞くが、僕はMX MASTER 3Sのフィット感が合っている。「持ちやすい」「操作しやすい」に「クリックが静か」が加わり、まさに鬼に金棒。

MX MASTER 3を持っている人は、クリック音と倍増したDPIに魅力を感じなければ見送っても良いが、作業効率を上げるために高性能マウスを検討している人にとってMX MASTER 3Sは”買い”だ。使えば分かる。これは本当に良いマウスだ。