NFC対応SIMカードの標準化にドコモが参加しない理由
通信業界団体 GSM Association(GSMA)に参加する世界のキャリア45社が、NFC対応SIMカードの標準化について支持したことを発表した。
ところが、日本国内のメーカーで参加しているのはなぜかソフトバンク一社のみ。スマートフォン対応を筆頭に何かとハードウェアの変化に遅いKDDIは一旦置いといて、国内最大手のドコモが参加しない理由について考えてみた。
NFC対応のSIMカードって何?
NFCチップはGalaxy S2やGalaxy Nexusのように端末のハードウェアに直接チップを組み込む場合やシールに貼る場合など、色んな形で端末に載せる方法が試されてきた。今回の話題になっている「NFC対応のSIMカード」とは、端末に入れるSIMカードに直接NFCのチップを載せる、ということ。それを世界標準規格にすることをGSMAに参加している世界中のキャリアのうち45社が支持しているということだ。
NFC対応SIMカードはキャリアにメリットあるの?
GSMA いわく、NFC を SIM ベースにする強みは、標準化された SIM の規格 / API を利用することにより、端末や通信事業者を越えた NFC サービスができるという点。当然ながらその背景には、モバイル決済をはじめとする多様な NFC サービスを、キャリア主体で進めていきたいという意図が見えます。
今後スマートフォンが主流になる中、キャリアとしてコンテンツから収益を上げるのは以前程容易ではない。NFCサービスをキャリア主導で進めることによってモバイル決済ビジネスの中心に立つことが目的なのだろう。
なんでドコモは参加しないの?
では、なぜモバイル決済を世界的に見ても早い段階から進めていた日本のキャリア最大手ドコモはNFC対応SIMカードに参加していないのだろうか。恐らくおサイフケータイが利用できなくなるからなのではないかと思う。
前提としてFelicaはNFCチップでは使えない。よって、SIMに直接NFCチップが組み込まれたところでドコモとしては役に立たないどころか、NFC対応チップになってSIMカードそのものの値段が上がる可能性もある。実はドコモにとってメリットがないのだ。
FelicaとNFCの話については以下のポストをどうぞ。
Felicaの終わりも近い?NFCについて調べてみた | gori.me
Felicaチップを開発したのはSONYであり、Felicaチップを使ったサービスである「おサイフケータイ」を開発したのはドコモである。いくら世界的がNFCに向けて動き出していても、既に数多くのサービスで利用されているおサイフケータイを急にNFC対応に切り替えることは難しい。よって、まずはFelicaとNFCが共存できるように進めている。既に先週、SONYがモバイルFelica対応NFCチップを発表している。
ソニー、モバイル FeliCa 対応 NFC チップを商品化 — Engadget Japanese
2012年のスマートフォンはおサイフケータイにもNFCにも対応するかもね!
ドコモはNFC対応SIMカードに興味がない!
i-modeのスマートフォン版「d-mode」という、見るからに残念な取り組みから分かる通り、過去の資産をベースにビジネスを展開するドコモとしては、既におサイフケータイで実権を握っている中、わざわざNFCのみに切り替える必要性が無い。そもそも興味がないのだろう。 ドコモにとって大事なのはいかにfelicaとNFCを共存させ、最終的にスムーズにNFCに移行させるか、という点なのである。
逆に、SONYが開発したモバイルFelica対応NFCチップをドコモのSIMに組み込む可能性もある。日本経済新聞に以下の記事が掲載されていた(現在はリンク切れ)。
NTTドコモは携帯電話の機種変更の際、電子マネー「おサイフケータイ」の残額などのデータも新しい端末に移し替えやすくする。2013年をめどにSIMカードと呼ばれる端末内の契約者認識用カードにデータを記録する方式に変える。利用者はカードを差し替えるだけでデータの移管ができるため、機種変更がより手軽になる。
上記が本当だとすれば、標準化を目指すNFC対応SIMカードとは別の規格で進める可能性もあるので、尚更ドコモとしては参加しない方が良いのだろう。
この業界はとにかく大人の事情が多すぎる!!やれやれ。
(via Engadget Japan)