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【潜入】iPhoneの耐久性ってどうやって検証しているの?Appleの秘密ラボで見た驚愕の検証プロセス

塩水噴霧、合成耳垢、リアリティロボット。1万台のテストを経て出荷される理由

Durability tests in action

Appleの製品がなぜこれほど長持ちするのか、その秘密を知りたいと思ったことはないだろうか。今回、Appleが実際に利用している製品の耐久性を検証するラボに潜入し、iPhoneの信頼性を支える驚くべき検証プロセスを詳しく見せてもらった。

Appleが製品の長寿命化にかける想い

Appleは製品の信頼性、品質、安全性を最優先に考えており、環境への配慮から製品の長寿命化を重視している。この取り組みは信頼性、ソフトウェアアップデート、そして修理のしやすさの3つの柱で支えられており、何億台ものiPhoneが5年以上使用されている実績がある。

驚くべきことに、Appleは1つのiPhoneを出荷する前に約1万台のiPhoneでテストを行い、開発期間の約90%を信頼性テストに費やしている。この徹底したテストにより、iPhoneは下取りや売却時にも競合他社製品と比較して40%高い価値を維持しているのだ。

「最悪のケース」を想定した過酷な環境テスト

Appleの信頼性テストで最も印象的だったのは、「世界の平均」ではなく、「最悪のケース」を想定してテストが行われていることだ。以下に実際に見させてもらった例を紹介する。

塩水噴霧テスト

海辺や船上での使用を想定した塩水噴霧テストでは、塩分を含んだ霧を製品に何百時間にもわたって噴霧する。これは電子部品の腐食を防ぐためのもので、気象観測データや販売地域の情報も活用し、顧客がその環境にどれだけ頻繁にさらされるかを確率的に評価している。

自然光・紫外線テスト

ディスプレイの退色や本体の外観の劣化を防ぐため、実際の太陽光よりもはるかに強い光を当ててテストを行う。興味深いのは、ユーザーがAppleにデータ送信を許可した場合に送られてくる環境光センサーのデータを分析し、屋外での使用頻度などを考慮してテスト期間を決定していることだ。

ダストテスト

見えないチャンバーで、アリゾナ砂漠の粉塵を化学的に分析し、粒子サイズまで完全に再現した合成ダストを用いてテストを行う。さらに驚くべきことに、AirPodsなどの製品では合成の耳垢を作成し、手に持つ製品のために合成の汗など、人体から排出されるあらゆる物質の合成バージョンを開発してテストしている。

温度・湿度テスト

地球上で最も暑い場所の一つである40°C、相対湿度90%という過酷な環境を再現するチャンバーでテストを行う。温度湿度の検証を行う施設に入らせてもらったが、参加者全員が「これ完全に日本」「東京でしかない」「そうか、地球上で最も暑い場所の1つだったのか」などと盛り上がった。

蒸し暑い日本の夏でもiPhoneが動作するのは、このような施設があるお陰だと思うと感慨深い。この環境での約1000時間のテストは、実環境での約5年間に相当する。

日常生活の化学物質との戦い

市場に出回る様々な化学物質への耐久性テストも徹底している。シャンプー、特定の日焼け止め、揮発性の高い香水、酸性の液体(コカ・コーラ、オレンジジュース)、化粧品などが製品に与える影響を厳密にテストする。

最悪のケースとして、これらの物質の混合物を加熱し、製品に飽和させてテストすることもある。Apple Care Plusのデータからは、製品が長期間使用される中でどのような故障が起きるかの貴重な情報が得られ、故障解析ラボが残存物質を特定し、その情報をテストにフィードバックしている。

物理的耐久性への革新的アプローチ

耐水性テスト

IPX1(小雨)からIPX8(水深6mに耐える)まで、様々なレベルの耐水性テストを実施している。iPhone 7/8の時代にIPXレーティングを向上させた際、シール強化により修理がわずかに困難になったが、水損による修理件数は70%以上減少した。

Durability Lab testing facility 09
耐水テストの様子

この事例から、Appleは「最高の修理とは、決して必要とされない修理である」という信念に基づき、修理のしやすさよりも信頼性向上を優先することがある。

革新的な落下テスト

従来の鋼鉄の床にランダムに落とすタンブラーテストに代わり、「リアリティロボット」と呼ばれる信頼性ロボットを独自開発した。このロボットは、あらゆる高さから、あらゆる角度での落下を再現でき、特定の角度でのみ発生する故障モードを特定するのに非常に重要だ。

テストは、一般的な木製のフローリングを代表するパーティクルボード、御影石、アスファルトなど、実際の生活で遭遇する可能性のある表面で行われる。高速ビデオカメラを用いて、落下時の1度目の衝撃だけでなく、跳ね返りによる2度目の衝撃も詳細に分析し、設計改善に役立てている。

曲げテストと振動テスト

4点曲げテストに加え、「シッター(Sitter)」テストでは、「骨が硬い痩せた人」がポケットに入れた製品に座った場合が最悪のケースであるという知見に基づき、その状況を再現してテストしている。ところで「iPhoneをお尻ポケットに入れた際の耐久性」をテストする施設もある。

重くて恰幅の良い人のほうがiPhoneが割れそうなイメージがあるが、実際は痩せ細った人のほうが折れやすいという。言われてみれば確かに……!

振動テストでは、自動車、電車、飛行機、そして特定のエンジン音を持つオートバイなど、様々な乗り物で発生する振動を再現し、全周波数帯域でテストを行う。

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バッテリーの革新的な進化

バッテリーは消耗品であるという認識のもと、長寿命化と修理のしやすさの両面で取り組みが進められている。iPhoneのバッテリーは、1000サイクル充電を繰り返した後でも、元の容量の80%以上を維持するよう設計されている。

特に注目すべきは、iPhone 16および16eモデルで導入された電子的に取り外し可能な新しいバッテリーだ。わずかなタブにワニ口クリップと9Vバッテリーを接続するだけで、接着剤に電流が流れ、電気的に剥がれる仕組みになっている。

電子的に取り外し可能なバッテリーは想像以上に感動した。僕自身、iPhoneのバッテリーを自ら交換した経験はないが、iFixitなどの動画を見る限りでは非常に難しいというイメージがあったが、簡単に剥がれた。今回はあえて9Vバッテリーを使用したデモだったが、実際の修理現場では、より高い電流を流すため専用の電源が使用される

この技術により、使用時にはバッテリーが動かないように強力に接着され、修理時には接着力がゼロになるという画期的な修理体験が実現されている。このプロセスでは残留物が一切残らないため、清掃の必要がなく、新しいバッテリーをすぐに取り付けることができる。

Appleの耐久性ラボで見た検証プロセスは、単なる品質管理を超えた、製品への深い愛情と環境への責任感に基づいたものだった。1つのiPhoneが出荷されるまでに、これほど徹底したテストが行われていることを知ると、iPhoneの価値と信頼性の高さを改めて実感できる。

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更新日2025年06月12日
執筆者g.O.R.i
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