15インチ/8コアのMacBook Pro(2019)、フォトショの書き出し時間で13インチ/4コアと変わらず
「Adobe Photoshop CC」を使った作業が多いのであれば4コアの13インチモデルでもパフォーマンスは変わらない
僕がMacで日常的に行う作業の中でも最もマシーン負荷が高いのは、「Adobe Photoshop CC」で現像した大量のRAWデータをまとめて出力する時。少ない時でも数十枚、多い時は100枚以上を一気に書き出している。
先日、「MacBook Proの13インチモデルを仕事で使うには限界が見えてきた」という記事で指摘したのは、まさにフォトショで書き出す時にあまりにも時間がかかりすぎるということ。
「早く買えば買うほど使った分だけ元が取れる」と自分に言い聞かせ、僕はすぐに15インチ型MacBook Pro(2019)のUltimateモデルを購入してきた。具体的なスペックは下記の通り:
- 第9世代の2.4GHz 8コアIntel Core i9プロセッサ(Turbo Boost使用時最大5.0GHz)
- 32GB 2,400MHz DDR4メモリ
- Radeon Pro Vega 20(4GB HBM2メモリ搭載)
- 1TB SSDストレージ
- バックライトキーボード – 英語(米国)
これほどのモンスタースペックがあれば、間違いなく4コアのプロセッサを搭載しているMacBook Pro(2018)を凌駕するようなパフォーマンスを発揮してくれるに違いないと確信していた。
なんと言っても、8コアと4コアだ。しかもプロセッサの世代も2019年モデルの方が新しい。圧倒的な結果が出ることを1ミリも疑わなかった。
ところがどっこい。
15インチ/8コアのMacBook Pro(2019)は、「Adobe Photoshop CC」の書き出し時間で13インチ/4コアのMacBook Pro(2018)に負けてしまった。書き出し枚数を変えても、条件を変えても、数秒差という僅差ではあるが勝てない。
フォトショをゴリゴリ使うからと言って、無闇に15インチモデルに手を出さない方が良い。むしろその分の費用を13インチモデルのスペックを上げる方に使った方が良いかもしれない。
その検証結果を本記事では紹介する。
RAWにプリセットを適用し、JPGとして書き出し
今回測定したのは、僕が13インチモデルで時間がかかりすぎて高速化の余地があると考えていた、「Adobe Photoshop CC」で現像したいRAWファイルを開き、予め準備してあるプリセットを適用し、それらをJPGとして書き出す、というもの。
1つのRAWのファイルはおおよそ30MB。100枚でざっくり3GB以上。
今回、30枚、50枚、100枚の写真の現像・編集・書き出し作業をテストしてみることに。どちらもWi-Fiをオフにした状態で、電源に接続しない状態で計測した。
52枚のRAWファイルをJPGに出力
まずはレビューを書く際に編集するであろう平均的な枚数であろう52枚(本当は50枚にするつもりだったのだが、2枚多かった)で作業をテストしてみることに。
するとなんと13インチ型MacBook Pro(2018)の方が先に3分28秒で書き出し完了。15インチ型MacBook Pro(2019)は8秒遅れて3分36秒で完了した。
なお、アプリの立ち上げ、プリセットの適用などに関しては15インチモデルも13インチモデルもほとんど差はなかった。
この時点で僕の全身がガクガク震えていた。最新のCPUにもなって、8コアにもなって、なぜだ……お前はなぜ遅いんだ……!
100枚のRAWファイルをJPGに出力
50枚程度では負荷が足りなかったのかもしれない。そこで、僕は100枚のRAWファイルを書き出ししてみることに。
その結果、13インチ型MacBook Pro(2018)がまたしても勝利。6分56秒で完了し、15インチ型MacBook Pro(2019)は11秒後の7分6秒で完了した。
なぜだ。
MacBook Pro(2019)はファンがなかなか動作しない
これまでのテストを行っていて、MacBook Pro(2019)のファンがなかなか回らないのに対し、MacBook Pro(2018)は凄まじい音を立ててすぐにファンが回転することに気がついた。
MacBook Pro(2019)は排熱問題を克服していることが判明しているが、CPUを100%近く使っている中、確かに「iStat Menus」の数値を見比べているとファンの回転数が上がっていない。
実際に海外YouTuberの検証では、ファンの動作音を静かにすることを何よりも優先したのではないかと見られる動作が確認され、ファンをより早い段階で動作するようにカスタマイズしたところ、パフォーマンスを引き上げることの成功したと報告している。
そこで、Macのファン回転数を制御するアプリ「Macs Fan Control」をインストールし、13インチ型MacBook Pro(2018)の回転数にあわせて15インチ型MacBook Pro(2019)の回転数も上げてみることに。
30枚のRAWファイルをJPGに出力(ファンの回転数を制御)
今回は30枚でテストしてみることに。結果としては、やはり15インチ型MacBook Pro(2019)が勝てない。
13インチモデルは1分54秒で完了したのに対し、15インチモデルは6秒遅れて2分0秒で完了。ファンを制御してもだめだ。
31枚のRAWファイルをJPGに出力(ファンをフル回転)
あまりにも結果が不服だったので、31枚のRAWファイル(本当は30枚にしたかったのに31枚になっていた)をファンフル回転の状態で出力してみることに。
その結果、掛かった時間は2分7秒。むしろ期待していたよりも遅くなってしまい、結果とともに僕の心は崩壊した。何のために買い替えたんだ……。
「Adobe Photoshop CC」はCPUのシングルコア性能を重視
調べていると、どうやら「Adobe Photoshop CC」はシングルコア性能を重視を重視し、マルチコアでも4コア程度が処理の限界だと指摘する検証記事を見つけた。
- Photoshopは多くても4コア程度でパフォーマンスの頭打ち
- Photoshopのほとんどの処理は4コアが限界で、一部の処理は8コアまで
- 使えるコア数が限られるなら、1コアあたりの性能を重視したほうが良い
この理論でいうと、「Geekbench 4」のシングルコアスコアでは15インチ型MacBook Pro(2019)は13インチ型MacBook Pro(2018)を上回っているが、その差は6%程度。実質同じぐらいと言っても過言ではない。
さらに、マルチコアによる恩恵はほとんど受けられないことが上記検証記事から分かっていることから、実質的にフォトショップの性能を向上させるために13インチ型MacBook Pro(2018)から15インチ型MacBook Pro(2019)に買い替えたのは無駄だった。
え?泣いてなんかいないよ?
「Adobe Photoshop CC」での作業が多く、高いパフォーマンスを追求したいが携帯性も大事にしたい、という人は15インチモデルなんて買わず、13インチモデルを買いましょう。
とんでもない結果になりましたね。。。
おっしゃるとおりです……いくらMacがパワーアップしてもAdobe側が4コア以上のマルチコアをサポートしてくれない限り、恩恵は受けられないということみたいです……残念すぎる……
これは要するに Adobe Photoshop 側に問題があるということですね。処理速度向上のための抜本的なソフトの作り直しを Adobe がしてくれるのを期待するしかなさそうです。