ワイヤレス時代の今、あえての有線イヤホンという選択肢

Final E5000

iPhoneからヘッドホン端子が廃止された瞬間から、「ワイヤレスで音楽を楽しむのが当たり前」という時代に向かっているように感じた。

最新のiPhoneはワイヤレス充電も標準搭載に。将来的にiPhoneの外部ポートやボタンを廃止することを目指している噂されていることから、Appleはありとあらゆるケーブルから解放される世界を目指しているのかもしれない。

僕はヘッドホン端子が廃止される前からすでに有線ヘッドホンよりもワイヤレスヘッドホン派だった。

理由は、ケーブルが煩わしいから。そして、音質が悪いと言われているワイヤレスも、年々音質が改良されている。正直、有線の魅力が分かるのはオーディオマニアだけで、素人には今のワイヤレスヘッドホンであれば十分だと思っていた。

ところが、とあることがきっかけで僕の考えは変わった。ワイヤレスオーディオ全盛期の今の時代だからこそ、あえて有線ヘッドホン・有線イヤホンという選択肢を選び、音楽と向き合うための時間を作る必要があるのではないかと思うようになった。

BGMとしてではなく、音楽と向き合うための有線

きっかけは約40万円のヘッドホンを試聴させてもらった体験だった。これまでの人生で聴いてきた曲を聞き直したくなるほど聴く音楽すべてが異次元の解像度で、耳の中から全身が打ち砕かれたような衝撃を受けた。

僕はこれまでハイエンド機種と呼ばれてきたワイヤレスヘッドホンを多数試聴し、多数愛用してきた。それでもこの感動はこれまでに味わったことがなかった。

有線と無線の音質の違いを聞き分けられるのはオーディオマニアだけだと思っていた。ケーブルを変えると音が劇的に変わる、というのもオーディオマニアでなければ分からないと思っていた。

僕は間違っていた。

やっぱり有線は音が良かった。そして、ケーブルに変えるだけで音が劇的に変わることも身をもって体験した。自分でも分かる世界だということを、初めて知った。

Final E5000

ところで、最後に音楽と真剣に向き合ったのはいつだろうか。

曲の歌詞を聴いたり、その歌詞から様々な想像や妄想をしたり。または、アーティストの細かいフェイク、演奏の軽やかなドラム、欲しいところに厚みを出してくれるベース、バックコーラスの絶妙な和音を聴いたり。

歳を重ねるにつれて、「音楽」が「楽しむもの」から「流すもの」に変わってきている気がした。だから僕は音楽と真剣に向き合うことが減ってしまったように思う。

高校時代は必死にMDを焼いては聴いていたのに。大学時代はマニアックなドラムのリズムや存在感のあるベースラインを探し続けていたのに。

通勤中に流す音楽は電車の音をかき消すためのものであり、TwitterやInstagramの投稿を眺めるためのBGMでしかなくなっていた。歩いている時に流す音楽は街の騒音をかき消すためのものであり、やはり単なるBGMでしかなくなっていた。

気付いたら僕は音楽を「流すもの」になっていた。音楽を「楽しんでいた」頃の自分が、気付いたらいなくなっていた。

Final E5000 2 06

だからこそ、音楽に向き合うための時間が必要だと思うようになった。それも、ワイヤレスヘッドホンではなく高音質な有線イヤホンを使い、お気に入りの音楽を高い解像度で堪能する時間を作る、というものだ。

僕が今使っているのは、finalの「E5000」。単純な価格で言えば僕が愛用してきた「MDR-1000X」や「Bose QuietComfort 35」、「Beats Studio3 Wireless」よりも安いが、音質は透明感のあるバランスの取れたクリアな音で、ポップスだろうとクラシックだろうと心地良く聴くことができる。

音楽はiPhoneに「Lightning – 3.5 mmヘッドフォンジャックアダプタ」を挿し、流している。もっとこだわればさらに質を上げることができるかもしれないが、有線イヤホン初心者としてはこれでも十分。

Final E5000 2 03

疲れてきたらイヤホンを装着し、目を閉じ、その時聴きたい音楽を数曲流す。十分に堪能したらイヤホンを外し、また作業に戻る。決して長い時間ではないが、それでも今までの生活にはなかった、これまでの生活には不足していた何かが満たされているような気がしている。


僕らは日々、何かに追われて生きている。ゆっくりする時間ができても無意味にSNSを見てしまい、気になる動画を漁ってしまい、何かと目を酷使して情報の海に自ら溺れようとする

有線イヤホンで解像度の高いサウンドでお気に入りの音楽を数曲流し、ただひたすら「聴く」ことだけに没頭する時間はとても心地が良い。視覚的な情報はすべて遮断し、音だけを楽しむ時間はとても優雅だ。

ワイヤレス時代だからこそ、あえての有線イヤホン。時代を逆行しているのではなく、時代が進むに連れて失ってしまった大事なものを取り戻しているだけなのかもしれない。

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