ロボット掃除機の賢さを手に入れたスティック掃除機、その実力と課題
Narwal S20 Pro実機レビュー:89,800円の革新機は、私たちの掃除スタイルを変えられるのか
最新のロボット掃除機は、驚くほど進化している。
僕も自宅では最新モデルのNarwal Freo Z Ultraを使用しているが、吸引から水拭き、モップの自動洗浄まで、すべてを自動で完璧にこなす。まさに理想的な掃除機だと言っていい。
しかし、この「完全自動化」には見過ごせない課題がある。
実は掃除を始める前に、意外な手間が発生するのだ。椅子を上げ、床に散らばった小物を片付け、配線を整理する。この「準備」という工程は、掃除以前の作業として無視できない負担となっている。
さらに、AIの性能が向上したとはいえ、予期せぬ動作をする可能性は依然として存在する。そのため、深夜や外出時など、人の不在時に稼働させることが前提となる。
ここで1つの疑問が浮かぶ。
「事前準備と事後の確認が必要なら、最初から手動で掃除をした方が効率的ではないか」
だが、ロボット掃除機が持つ真の価値は、吸引と水拭きの完璧な両立、そしてモップの自動洗浄システムにある。この革新的な機能を、人の意思で自在にコントロールできるスティック型掃除機として実現できないだろうか——。
ついに登場、ロボット掃除機の”いいとこ取り”
「手動で掃除するなら、スマートな機能も欲しい」
そんな願いを叶えるかのように、Narwalが満を持して投入したのが新作コードレス掃除機「S20 Pro」だ。これまでロボット掃除機が得意としてきた機能を、なんとスティック型掃除機に詰め込んでしまった。
スティック型ならではの使いやすさ
最大の特徴は、スティック型掃除機ならではの自由さだろう。
「椅子を上げたり、コードを片付けたり」というロボット掃除機あるあるとはもうおさらば。180°フラット設計により、ソファの下など家具の隙間も思いのままに掃除できる。壁際1mmまで届く設計は、ロボット掃除機では難しかった細部の掃除も完璧にこなす。
清潔さと賢さを兼ね備えた次世代機
ロボット掃除機の最大の魅力だった自動メンテナンス機能ももちろん搭載。専用の洗浄ベースに置くだけで、ブラシの自動洗浄から65℃でのアイロン乾燥まで全自動。さらに40日間も洗浄液を自動補充してくれる優れものだ。
AIによる汚れ検知機能も搭載し、床の状態に応じて最適な吸引力で掃除を行う。まさに「人の手による掃除」と「ロボットの賢さ」を融合させた、新しい掃除機の形を見せてくれている。
790mlの大容量浄水タンクと670mlの汚水タンクを搭載し、広めの部屋でも給水なしでラクラク掃除が可能。価格は69,800円(税込)からと、プレミアムな価格帯ではあるものの、ロボット掃除機とスティック掃除機の2台分を考えれば、むしろコスパは良いと言えそうだ。
実機レビュー:日常使いで見えてきた真価
圧倒的な清掃力と使い勝手の良さ
まず驚かされるのは、その驚異的な吸引力だ。初めて使用した時は、その力強さに戸惑うほど。トリガー1つで吸引力を最大限まで引き上げられる機能は、特にペットの粗相など、徹底的な清掃が必要な場面で重宝する。
実際に掃除をしている様子を動画で収めた。汚れがみるみる綺麗になっていく様子が確認できるはずだ。
フローリングの仕上がりは想像以上の美しさ。Narwal Freo Z Ultraと同等の綺麗さで拭き上げてくれる。「あ、ここ汚れてる」と気づいた時に、すぐに掃除を始められるのもスティック型ならではの利点だ。
静音性も特筆もの。ロボット掃除機特有の「キーン」という乾燥音に悩まされることもなく、乾燥時間も短い。デザイン面でも、グレーを基調とした洗練された外観は、インテリアにこだわる目線からも高評価を得ている。
見過ごせない課題点も
一方で、気になる点もある。最大の懸念はカーペットや畳への非対応だ。モップを一時的に上げる機能がないため、カーペットの多い家庭では使い勝手が悪くなる。
本体重量も無視できない。水タンクを満タンにすると予想以上に重く、階段掃除には向かない。また、掃除しながら自分で歩くため、清掃したばかりの床を踏まざるを得ないのは少し心苦しい。
ゴミ捨てやメンテナンスの頻度は、ロボット掃除機と比べると明らかに高い。また、家具の下を掃除できる設計とはいえ、10cm未満の隙間には入らないため、家具の配置によっては恩恵を受けられない可能性もある。
革新的な一歩、しかし完璧とは言えない新世代掃除機
Narwal S20 Proは、確かに画期的な製品だ。ロボット掃除機の賢さとスティック掃除機の機動力を融合させようという試みは、掃除機の新たな可能性を示している。
現実的な選択として
特に、フローリングメインの家庭でスティック型掃除機1台で完結させたいというニーズには、かなり応えられる製品になっている。ロボット掃除機では「もう少しここを念入りに」と思う場面でも、トリガー1つで徹底的に掃除できる機動力は魅力的だ。
しかし、現状ではいくつかの課題が残る。
- カーペット非対応という大きな制限
- 本体の重量感
- 頻繁なメンテナンス要求
- 収納時のサイズ
これらを考えると、従来のスティック型掃除機とロボット掃除機の併用のほうが、実は理想的な選択かもしれない。
期待される進化の方向性
今後のアップデートに期待したい要素は明確だ。
- 本体の軽量化
- よりコンパクトな収納性
- 9cm台までのヘッド高の低減
- カーペット対応
これらが実現されれば、まさに次世代の定番掃除機として位置づけられる可能性を秘めている。現時点では「革新的だが発展途上」という評価が妥当だろう。
Narwal S20 Proは従来のロボット掃除機とは異なる新しい選択肢として、十分な実力を備えている。特に、即座に掃除を始められる手軽さと、確実な清掃力は魅力的だ。ただし、カーペットの有無や家具の配置など、自宅の環境との相性は事前に検討する必要がある。
確かな技術力と斬新な発想を持つNarwalだからこそ、次なる進化に期待したい。
家具下のホコリがとれないのは致命傷だけど、逆に課題は明確だから新verは期待できそう。iPad2リリースくらいで「mini」があればいいなーと思っていたのを思い出す。