Tim Cookの”自然体”が見られる貴重映像。Apple 50周年インタビューでiPod・iPhone秘話を語る
本人も知らなかったプロトタイプ、iPodの初曲「Hey Jude」、次の10年のヒット商品──普段とは違うクック氏がそこにいた
Apple創設50周年を記念し、Tim Cook氏がiPodやiPhoneの貴重なプロトタイプを手に取りながら、Appleの歴史を振り返るインタビュー動画が公開された。The Wall Street Journalが公開した動画で、WSJコラムニストのBen Cohen氏がCook氏とともにAppleのアーカイブを巡っている。
Cook氏自身、これらの資料の多くを今回初めて目にしたという。「50周年の準備をする中で、初めて見たものがたくさんある」と語り、すべてを展示する場所がなかったことを反省していると明かした。
このインタビューを通じて感じたのは、Cook氏が本来の性格のまま回答しているということだ。世界トップ企業のトップである以上、普段のインタビューでは会社の看板を背負い、発言の一つひとつに慎重さが求められる。しかし今回は、Cook氏自身も見たことがない資料が次々と登場し、「まあそう聞かれたらそう答えるよね」という型通りの受け答えが少ない。Tim Cookという人間の素の部分が溢れ出ているような、自然体に近いCook氏が見られる貴重なインタビューだと感じた。
iPodがもたらした「革命」
動画ではApple IIの特許から始まり、初代iPodのプロトタイプが登場。Cook氏はiPodへの思い入れを熱く語った。「当時は車の中で5枚入りのCDチェンジャーがクールだと思っていた時代。1,000曲をポケットに入れて持ち運べるなんて、革命的だった」と振り返る。
iPodで初めて聴いた曲について聞かれると、Cook氏は「ビートルズだったと思う。おそらく『Hey Jude』だね」と答えた。
サプライチェーンの構築も大きな挑戦だった。Cook氏によれば、当初の出荷は小規模だったが、2000年代に入ると3カ月で1,400万〜1,500万台という規模に膨れ上がった。「精度と品質を保ちながら運営しなければならず、ミスは許されなかった」という。
iPhoneは「全員を驚かせた」
Appleでの長年のキャリアの中で最も好きな瞬間として、Cook氏はiPhoneの発表を挙げた。「当時のスマートフォンは毎日使っていたが、体験はひどいものだった。そこに突然、自分の頭で考えるように機能するタッチインターフェースが登場した。それが大好きなんだ」と語っている。

では、初めてiPhoneのプロトタイプを見たとき「何十億台も売れる」と思ったのか。Cook氏の答えは「いいえ」だった。「iPhoneは、僕を含めておそらく全員を驚かせたと思う」と率直に認めた。
初期のiPhoneをポケットに入れていると、鍵や小銭で画面が傷つく問題にCook氏自身も直面していたという。スティーブ・ジョブズ氏はそれに対し「ガラスを載せよう」と決断。発売まで半年を切った1月から6月の間にそれを変更するのは「月への有人飛行のようなプロジェクト」だったが、「信じられないほどの成果だった」とCook氏は振り返った。
Apple Watchは「一夜にして成功したわけではない」
初期のApple Watchプロトタイプを前に、Cook氏は「信じられないようなことの始まりが見える」と語った。発表のステージで自ら身につけていたものと全く同じWatchだという。当初は想像もしていなかった「健康の守護者」や「フィットネスのパートナー」へと進化を遂げた。
Apple Watchが最初から大ヒットしたわけではない点について、Cook氏は興味深い見解を示した。「製品が”一夜にして成功した”ように見えるのは、後から振り返ったときだけだ。iPodもiPhoneもWatchもそうだった」と語り、ECG(心電図)などの機能を継続的に追加した結果、多くの人にとって手放せない存在になったと説明した。
次の10年と後継者問題
10年後にテーブルに並ぶ次のヒット商品について聞かれると、Cook氏は「ハードウェア、ソフトウェア、サービスの交差点にある何かだろう」と答えた。素晴らしい製品を作るだけでなく、包括的なユーザー体験を提供し、人々の生活を豊かにしたいという思いを語っている。
スマートグラスの可能性についても質問が飛んだが、Cook氏は「それは言えない。トップから情報が漏れるような船であってはならないから」とにこやかにかわした。
Appleの50年間で最も重要な「失敗」についても触れられた。Cook氏は「たくさんある」としつつも、「すべての失敗は、上手くいかなかったことを学ぶチャンスだ。成功しなかった製品を出荷したこともあったが、翌日には立ち上がり、次へ向けてひたすら取り組んできた」と語った。
後継者を選ぶタイミングについては「定期的に聞かれる質問だが、”その日が来れば分かるだろう”というのが僕の答えだ」と述べるにとどめた。別のインタビューでも退任説を「噂に過ぎない」と一蹴しているが、最新の噂ではJohn Ternus氏が最有力とされている。
最後に、1978年のWSJ紙に掲載されたAppleに関する最初の記事を手に取り、「正直、考えると背筋がゾクゾクする。50周年を迎えて感じる感謝は、特定の何かではなく、この旅路を共にしてくれたすべての人に対するものだ」と締めくくった。
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