未だにiPhone XのFace IDは「Touch IDより優秀」と言い切れない自分がいる
「スマホの未来」として登場した「iPhone X」は、iPhoneのシンボル的存在でもあるホームボタンを廃止した。
指紋認証から顔認証へと変わり、iPhoneからまた1つ物理的な要素が削ぎ落とされた。数年後には電源ボタンのみ、いや、電源ボタンさえもなくなっているかもしれない。
「iPhone X」とともに過ごしてきたこの半年間、毎日のように顔認証システムである「Face ID」を使ってきた。僕の周りには「便利すぎてもうTouch IDには戻れない」と言い、非常に満足している人もいるが、僕自身は「Face ID」の便利さは実感しつつも、「Touch IDより良い」「Touch IDより優秀」とは言い切れない自分がいる。
現時点の「Face ID」は「Touch ID」に劣っていると思う
僕は何も「Face ID」が嫌いと言いたい訳ではないし、「Touch ID」に戻すべきと言いたい訳でもない。「iPhone X」の裏に「Touch ID」を付けるべきだ、という人もたまに見かけるが、そんなダサいことをしたらアメリカにまで行ってクック船長をビンタせずにはいられない!
「Touch ID」が第2世代で劇的に認証精度が向上したように、「Face ID」の精度もこれから改良されるに違いない。ただ、それを踏まえた上で、今現状の「Face ID」はまだ「Touch ID」に劣っていると僕は感じる。
その理由は、「Face ID」は「Touch ID」よりも使用するための条件が多い、という一言に集約されるという結論に至った。
「Face ID」は「Touch ID」よりも使用するための条件が多い
「Touch ID」であれば利用できた環境でも、「Face ID」では利用できないことがある。「Face ID」は意識的に使わなければ正常に動作しない。
その条件は以下の通り:
- iPhoneを手に持っている、もしくはiPhoneの画面が自分の方に向いている
- iPhoneが一定の距離の範囲内にある
- 鼻を含む顔の大部分が露出している
1. 目の前にあるのにロック解除できないストレス
日頃最も不満に感じるのは「iPhone X」を机の上に置いたまま認証できないこと。そして、寝起きにすぐにホーム画面を開くことができないこと。他にもポケットからひょこっと出して認証できないのも、地味に不便だ。
まさに、これまで当たり前のように「Touch ID」で認証できていた状況でもiPhoneをしっかりと自分の方に向ける必要があり、ものすごく使い勝手が悪い。「Touch ID」は机の上にあろうと、ポケットの中にあろうと、寝起きだろうと認証してくれた。
2. 近すぎてもダメ、遠すぎてもダメ、縦向きじゃないとダメ
「Touch ID」は、指が濡れていない限り、手が届く範囲であれば認証することができた。「Face ID」は近すぎてもダメ、遠すぎてもダメ。さらには本体が縦向きでなければ認証してくれない。
これは直感的ではないと感じる。なぜなら最適な位置がよくわからないから。
「iPhoneを操作する際に持つであろう距離」にさえあれば「Face ID」は正常に認証するが、その距離が人によって異なることはもちろん、状況によっても異なる。
例えば、以前パンパンの満員電車に乗って「iPhone X」を見ようとした時、画面が近すぎて認証を失敗するということがあった。「Touch ID」であれば間違いなく認証できていたこの状況に対し、「Face ID」は認証できていなかった。
縦でなければ認証してくれないのは、またまた不便である。机の上に置いた「iPhone X」を上から覗き込んだとしても、縦に向いていなければ認証してくれない。iPhoneの向きに合わせて自分の向きを変えるか、iPhoneの向きを変えるか、どちらかをしなければならない。
「Touch ID」は指を置けば認証してくれたのに……。
3. マスクとの相性は最悪!マスク or iPhoneという究極の選択
「Face ID」と言う以上、顔を認証するためには顔が見えていなければならないが、マスクを着用しているとまるで使えない。花粉症の季節は控えめに言って最悪だった。
以前、YouTuberのヒカキンさんが「iPhone X」からiPhone 8に戻したという内容の動画をアップしていたが、その気持がよく分かった。
ハッキリ言ってマスクをしているときは「iPhone X」からiPhone 8 Plusに戻すことも真剣に悩んだ。それほど不便で、使い勝手が悪く、ストレスフルだった。
おまけ:認証に時間が掛かるという小さなストレス
「Face ID」の条件とは関係ないが、不満ついでに触れておくと「Face ID」の認証スピードは思っていたよりも早くない。当初からその思いはあり、今でもその印象は変わっていない。
「Touch ID」は第2世代になってからは「ロック画面の通知が確認できない」という不満の声が上がるほど早かったが、「Face ID」はワンテンポ遅い。
だからこそ、僕は「Face ID」でロック解除するまで通知内容は非表示にする機能は使わなくなった。隠すような通知がないのも事実だが、瞬時に通知内容をできないことの不満の方が大きい。
「Apple Pay」も同じく認証に時間が掛かるという理由で「Touch ID」の方が便利だった、と感じることが多くなってきた。iPhoneを差し出すような向きで認証することが多いため、一度自分の方に向けなければならないのが手間だ。
「Face ID」の進化に期待!もっと便利になる……はず!
何かと不満のある「Face ID」だが、条件さえ揃っていればものすごく便利だ。
僕は、両手が塞がっている時、「Hey Siri!(アプリ名)を開いて」と言うと顔認証が完了し、アプリ画面を表示できることが最も感動した。これは「Touch ID」だと実現できなかった便利さだ。いや、ニッチなのは分かっているが、それでもこれができたときにはものすごく感動した。
もちろん、「Touch ID」のようにいちいち指をホームボタンに置かなくても良いことは、間違いなくメリット。それに伴いiPhoneの筐体サイズを大きくせずに画面サイズを大きくできていることを考えると、素晴らしい選択肢だ。
いわば、ホームボタンが「ノッチ(切り欠き)」に進化したのだ。本当にすごいことだ。さすがスマホの未来。
僕の周りでは「Touch ID」ではなかなか指紋を認証してくれなかったが、「Face ID」になってから認証してくれるようになり、快適になった、という人もいる。確かに「Touch ID」は指紋によって相性はあるが、「Face ID」は使用する度に学習してくれるので精度が向上するため、失敗する確率も下がるはず。
条件さえ揃っていれば、だが。
「Touch ID」よりもセキュリティ精度は高いと謳っているが、これもまた諸条件があり、双子芸人ザ・たっちをはじめとした顔がそっくりな双子は「Face ID」がセキュリティとして役に立たない。10歳の息子の顔で母親の「iPhone X」で顔認証に成功したという事例もある。
「Face ID」にはメリットもあるが、現状、「Touch ID」の方が完成度は高いと感じる。ただ、「Face ID」はまだ1世代目。2世代目はこれらの欠点が、すべてではないにせよ、解消されていることを期待している。
バージョンアップが求められている理由として、次期iPad Proはベゼルレスディスプレイを搭載し、「Face ID」を採用すると見られている。仮に実現した場合、「Smart Keyboard」を繋げた状態でも使えるようにならないといけないため、横向きでも認証できる必要がある。
「スマホの未来」はまだ始まったばかり。「Face ID」は「Touch ID」を超えるポテンシャルはあると思っているので、今後の進化に期待したい!